「あの女ァ?ふん、人と戦ってる時に随分と余裕があるじゃないかい!?」
「お前もあの女ほどじゃないけどウルサイね。ただアイツと違ってお前弱そうで実験するには不十分ね」
繰り広げられる女王とフェイタンの戦いのあいまに交わされる会話に思わずシャルナークの口からヒュ〜と音が漏れた。
「でた!フェイの実験癖、ていうか解剖癖?」
「たいして変わらねぇよ、ていうかアイツまだ諦めてないのか・・・おふくろを実験するなんざまじで百年早いだろ・・・」
「でた!フィンクスの母さん語り!俺に語らせたら誰も横に並ぶヤツはいないぜって感じ?」
「ぶっ殺す、女王よりもなによりもお前を先に殺してやるぞシャルナーク!!」
クスクス笑うシャルナークに飛び掛っていくフィンクスを「なんだこいつら」とばかりに眺めていたカルトだったが、彼らの会話に「おふくろ」だの「母さん」だの言葉がでてきてかなり驚いた。
こんな破天荒ておかしな人間達にも母親はいたのかと。
人間は女から産まれるものでして母親とは必ず存在するものだが、こいつらをここまでこんな風に育てた母親という存在にカルトは思わず聞いた事を頭から追い出そうとした。
「母親がいたんだ・・・」
「つってもフィンクスとかフェイタンとかシャルとかマチとか初期メンバーのね。私やボノレノフのお母さんじゃないよ」
カルトの思わず口に出してしまった言葉にめざとくシズクが反応する。
隣ではシャルナークとフィンクスがギャーギャー言いながら走り回っている、明らかにフェイタンのことは無視もいいとこ、忘れられているような気さえする。
カルトは初期メンバー全員に会った事はない、団長とやらは旅団に入っても一度も会ったことがない。
会えない事情があると言っていたが詳しくはしらないし、自分にはそこまで旅団に深入りするつもりもなかった。
それでも旅団のメンバーがどれほど性格破綻していて(それはもう自分の家族以上だ)おかしいやつらかは(これまた自分の家族以上で)半年も付き合っていないのに充分に理解した。
そんなメンバーの中でも群を抜いている初期メンバーを育てた人間がいる、カルトはもうこれだけで頭がパンクしそうだった。