キルアがビスケの名前をどこで聞いたか思い出したのは、修行中の食事の時間だった。
その日、パンといっしょにだされたのが何故か目玉焼きで半熟が良かったなァと黄身の部分をフォークでつついてる時にあれ?と思い出したのだ。
「そっか、ビスケって名前、ばあちゃんが言ってたんだ」
「キルアのおばあちゃんって、ムクロさん?」
「ムクロさんじゃないから。本名はっていうんだぜ、ばあちゃん」
パクっと綺麗にえぐりとった黄身を口に放り込むとキルアはフォークでぐるぐると何か思い出すように円を描き始める。
「ハンター試験受ける前にさぁ、ばあちゃんに匿ってもらってたんだけどそのときになんかすっげぇばあちゃんの事ボロクソにけなした落書きが書いてある大きい卵持ってきてさぁ。そのときのばあちゃんってば本当バケモノかってくらい怖かったんだけど。それでそのときだっけか、ビスケがどうのこうのー・・・って、まさか」
「・・・・・にょほほほほ」
変な笑い声をあげながらキルアから顔をそむけるビスケに、ゴンは訳がわからず首をかしげる。
キルアはキルアでまさかあのビスケがこのビスケだとは思わなかったようで、唖然とした様子でビスケのほうに顔を向けている。
「ねーねー、二人してどうしたの?俺、ぜんぜんわかんないよー」
「・・・・ゴンが前に言ってただろ、俺とビスケに共通の知り合いがいるんじゃないかって」
「うん、言ったねー」
「いたんだよ、共通の知り合い。ズバリ、俺のばあちゃんだ!!」
ズビシっとキルアがビスケに向かって指をさすと、ビスケもビスケで嫌そうな顔をしながらキルアのほうに振り返った。
「えー?ビスケもムクロさんの知り合いなの?」
「ムクロさんじゃなくてちゃんだっつの、ゴン!」
「まさか、あの平凡女の孫があんただとはねぇ・・・カーッ!すっかり忘れてたわ、孫が生まれたとか言って嬉しそうに写真を見せてきたのを」
キルアの顔を見ながら頭を抱え込んだビスケにゴンはどうして頭を抱え込むのかわからずポカンとしていたが、その傍らでキルアもキルアで、自分の祖母がいっていたゴリラとか体格詐欺女というのが目の前にいることに少しだけ現実逃避したくなったのだった。