「・・・・迷うナァ・・・」
「・・・・」
「・・・・」
ポツリと突然フィンクスが呟いた言葉にアジトが静まり返った。
といってもいるのはほんの少し、シズクとお守りのフランクリン、シャルナークにクロロだけだ。
「だんちょー、フィンクスがおかしくなった」
「放っておけ」
「はーい」
「・・・誰かつっこめよ!!」
本から顔すらあげずに言い放ったクロロとはーいと良い子のお返事をしたシズクにフィンクスが自らつっこむものの、相当むなしい。
シャルナークはあいかわらずずっとパチパチと携帯で遊んでいるし、フランクリンはぼーっと座っているだけだ。
「シャル、フランクリン。覚えてねえか?」
「なにを?」
「さっきの、『迷うナァ』ってやつ。あー、歌だっけか?」
「オレは覚えてない、なんだ?街ででも聞いたのか?」
「あ、それ覚えてるよ、オレ。母さんが歌ってた歌でしょー」
そこでようやく携帯から顔をあげてシャルがプラプラと手を振った。
母さんという単語にクロロもいささか反応したらしくピクっと微妙にだけれども肩が動いた。
「ちっこい頃、おふくろのやつ時々歌ってただろこの歌」
「歌ってたね〜、えーと、『迷うナァ、セクシーなの?キュートなの?どっちが好きなの?』って感じだっけ」
「よく覚えてるな、シャル。オレはあまり覚えてないぞ」
シャルがしっかりと音程も合わせて歌うとフィンクスがそうそうそれそれとシャルに行儀悪く指を向けた。
その指先をフランクリンがパチンと弾きおとすと、その隣でシズクが「変な歌ぁ」と呟いた。