「ヤなこと、思い出したよ」
ぺっと血反吐を吐き出しながらフェイタンが呟いた。
「あん?なに言ってんのさ、よそ見してるとまたさっきみたいにぶっ飛ばすよ!」
「うるさいよ、お前ちょと黙ってるといいね。あの女のこと思い出して少しハラがたってきたよ・・・」
自称女王、もとはアリ、もしくは爬虫類なヤツと戦いだしてフェイタンは久しぶりの血湧き肉踊る感覚に興奮していた。
生身の状態で腹に一発オーラの塊をくらってからそれはますます顕著になっていた。
「あーあー、フェイタン楽しそう」
「馬鹿!次はオレだからな、ボノレノフずりぃぞ!」
「いいじゃねえか、順番くらい。たまには譲れ」
「あ、フェイタン顎にもろにはいった」
顎に一発食らうまでは。
ガツンと入ったその拳にフェイタンは自分が小さかった時のことを何故か今、一瞬だが思い出した。
昔から体が小さかったのは認めるがそういわれるのを大層嫌っていた。
そんなことを言ってきたやつは小さい頃から殺してきた、にもかかわらずそんなフェイタンにいくらでもすき放題「可愛い」を連呼しあまつさえそのフェイタンの体を抱きしめる女がいた。
両手をわきにさしこみひょいと軽々と抱き上げられたあの屈辱。
それ以前に額に油性ペンで落書きされたのだが、あれは腹が立つことに3日も消えることはなかった。
あの3日間、仲間達は人の顔を見るたびにゲラゲラと笑いそして何故かキレるムクロにボコボコにされていた。
元凶は言うまでもなくフェイタンの前には勿論、仲間達の前にすら1週間ほど姿を見せる事はなかった。