週刊ダイヤモンド「信頼できる保険会社」 (2006年2月18日号) |
前回(2004年7月9日号)の「勧めたくない保険会社」の際も、あれこれ?な箇所を指摘したのですが、週刊エコノミスト同様、全く記事に反映してもらえないようで(ある意味当たり前ですが)。
で、今回も毎度のように、内容についてあれこれ揚げ足取りをしてみようと思います。
ただ、前回と指摘の内容が重なる箇所が多くて、改めて指摘するのも面倒なので、前回の内容を流用している箇所があります。
予めご諒承ください。
さて、そのランキングですが、まず名前が、前回の「勧めたくない保険会社」から、「信頼できる保険会社」に若干変更されています。
それにより、ランキングの項目立ても、次のように変更されています。<今回> <前回>
●契約者評価 ← 契約者評価
●加入後の顧客対応 ← 加入後の顧客対応
●顧客の利便性 ← 利便性
●保険金の不払いへの対応 ← 会社としての取り組み
●ガバナンス体制(新規)
●財務の健全性 (新規)これも毎度のことですが、指標に継続性が、残念ながらありません。
ランキングの名称が変わったからという要素はありますが、ランキングは継続性を担保しないと、その時点だけランキング的に良かった生保が上位にきてしまう恐れがあります。
また、うがった見方をすれば、編集的に(記事の内容に沿ったランキングにするために)、上位に持ってきたい生保に有利な項目立てをすることで、ランキングをある程度操作することも可能ですし。
■契約者評価について
まず、疑問を感じる点ですが、「契約者評価」の配点が非常に高い点です。
「契約者の評価なんだから当たり前ではないか」と言われるかもしれませんが、ネットアンケートのみで行われたと言うことからすると、次のような点で、統計としての精度や正確性・客観性に疑問が生じるのではないでしょうか(アンケートが、単なる人気・不人気投票になってしまう恐れを排除できない)。
- ネットが使えない人(とくに高齢者など)の意見が反映されていない
- あえて積極的に評価(良い評価も悪評価も)をしようとする人の加入している生保に偏りはないのかどうか
- 各社52〜53人のサンプルをまんべんなく抽出するという方法で、正確性を担保しているようにも見えるが、契約数や契約高での補正を行っていない(あるいは契約者の年齢や性別などについても)
- 生命保険についての知識レベルにバラツキがあると考えられる(客観的な評価と、単なる思いこみの評価の区別がつかない)
とくに、顧客満足度は次のような区分(評価項目)で得点されていますが、いずれも契約者が「そう思いこんでいる」「そう思いこまされている」というレベルでの評価も紛れ込んでいる可能性を排除できないのではないでしょうか(その証拠に、ランキングの上記にきている生保の中には、自社の優位性の刷り込みが巧みな生保が見受けられます)。
- 加入までの商品説明や提案力(※)
- 商品の保障内容(※)
- 保険料の水準(※)
- 契約加入後の対応
- なにかあったときの対応(新規)
- 財務の健全性
- ロイヤルティ(新規)
なお、前回の項目立てにあった下記の項目は、今回は質問項目からはずされています。
- 乗り換え意向
- 事故・入院時などの対応
また、※印を付けた項目は、思いこみで評価が大きく分かれる項目で、「安くて良い保険」(=うまい話)に加入できたと思っていたとしても、それが結果として分かるのは通常、老後を迎えてからのことですから、保険料を払っている年齢(老後を迎える前の段階)で、そのプランの真価を客観的に判断できるかどうかは、非常に難しいと言うことになるでしょう。
財務の健全性にしても、一見客観的な項目のように感じますが、何を基準に健全と考えるかは人それぞれであるとすれば、この項目すら主観でしかないことになってしまいます(健全性が劣るけど、この生保が好きという人だって、いるはずですし)。
むしろ、財務の健全性などは、そもそも格付やソルベンシー・マージン比率といった客観的な数値がある訳ですから、わざわざ契約者の評価を問う必要はないように思いますし。
さらに、加入までの商品説明や提案力にしても、セールス手順のシナリオが完備していて、金太郎飴(みんなが相談者から同じことを聞き出して、同じ発想と基準で問題提起をして、同じ商品を活用して、同じ内容のプランを勧める)のようなトークで、生保の素人でもプロ並に売りつけるシステムが、きちんと用意されている生保もあるわけですし。
と言うことからすると、このランキングは、あくまでも生保に対して思いこみが激しい人の人気投票と呼ぶべきでしょう。
■利便性・会社としての取り組みについて
次に、契約者評価以外の項目立てに目を向けてみます。
この中では、
- 顧客の利便性
- 保険金の不払いへの対応
- ガバナンス体制
は、項目として必要でしょうか。
まず「顧客の利便性」ですが、「利便性」の評価対象となっている3つの項目については、次の理由から、わざわざ配点をしてまで評価をする必要性を感じません。
- 土日祝日のコンタクト窓口
- ネット上で保険料の試算ができる
- ネット上で質問や苦情が書き込める
ようは、土日祝日に、あるいは常日頃から契約者を担当する営業職員へ連絡(携帯電話や自宅電話の番号が分かれば済む話)が取れればいい話であって、その窓口の有無が利便性を大きく左右するものではないと考えられます。
にもかかわらず、窓口があればいい、ネット上で何かできればいい、と言うだけで配点されている訳で、この項目をわざわざランキングの配点に入れなければいけない必然性が感じられません。
ネット上にアプローチができない契約者の利便性については、もちろん無視をしている訳ですし。
あったら便利ではあっても、それがなければ不便という訳でもない、というものでわざわざ評価しようとすることには、何か意図を感じざるを得ません。
「保険金の不払いへの対応」と「ガバナンス体制」についても、この項目をわざわざ2つに分ける必要性があるでしょうか。
どう考えても、明治安田生命に対して、ランキング最下位のシナリオに合わせて、圧倒的に不利な項目をあえて2つ追加したようにしか見えません(外資系のランキングが総じて前回よりアップしたように見えるのも、実際は、この2項目を追加したことで、大手生保の得点がマイナスになったためで、この2項目は大手生保のランキングを落とすために、恣意的に追加したようにしか見えません)。
そんな項目を追加するくらいなら、最初から、保有契約高の増減などの項目を設定しておけば、それで十分、顧客支持の傾向が反映できると思うのですが。
といった、これまたあった方が会社の取り組みとしては評価できるとしても、それがなければ取り組み姿勢が悪いという訳でもない、非常に曖昧な項目での評価となっています。
■ 「顧客もニーズに合ったオーダーメードの保険を過不足なく設計」?
以下に上げる編集者の解説ですが、裏から見れば次のようにも深読が可能です(コンサルティングにいらっしゃった方の事例を基に深読みしてみました)。
「顧客もニーズに合ったオーダーメードの保険を過不足なく設計する同社のコンサルティング営業は、まず顧客の話に耳を傾けることから始まる。そんな姿勢が断トツの契約者評価の高さにつながった」顧客の不安を煽ることによって、ニーズは如何様にも変えることが可能です。
つまり、コンサルティング次第で、ニーズ自体をねじ曲げることが可能で、本来は「困らないレベル」で考えていた保障内容を、セールスが売りつけたい保障内容に変えられてしまう相談者はたくさんいます(逆に、相談者が考えている保障のレベルを、「困らないレベル」の保障内容まで引き下げようとするコンサルティングは、ほとんどいません)。
というわけで、耳を傾けた振りをしたセールスに、いらない物(保障)まで、あるいはいらない保障額まで売りつけられても、売りつけられた顧客自身は、「ニーズに合ったオーダーメードの保険を過不足なく設計」をしてもらえたと、良いイメージで思いこんでいるケースが、これまでのコンサルティングの経験から、結構見受けられます。
その際に活用されるのが、パソコンによる「ライフプランニング」です。
が、パソコンで試算された結果が絶対の前提となって、それに縛られてしまうケースも見受けられます。
必要保障額をアップさせるのも、いらないニーズを盛り込むのも、セールスのテクニック次第で、簡単に誘導できるのです(さらに、ソフトのプログラミングによっても誘導できますし)。
パソコンから出てきた結果も、あなたを誘導するためのツールと考えるくらいでちょうどいいのではないでしょうか。
また、ライフプランニングの際に、あなたの収入や支出、預貯金などの情報をあれこれと聞き出されますが、これも情報を提供すればするほど正確なライフプランニングになるというよりも、あなたがいくら保険料につぎ込めるか、それを自分で教えているようなことにもなりかねませんから、「生保のおばちゃんと違って丁寧」なんて勘違いしないように注意が必要です。
「加入後の顧客対応のよさを示す指標である解約失効率も、2.5%と23社中最も低かった」
まず、顧客対応のよさが解約失効率とイコールであるなら、そもそも契約者評価ランキングで「契約加入後の対応」「なにかあったときの対応」という2つの質問項目は不要なわけで、自らイコールではないことを明言しているように感じます。
と肝心な解約失効率についてですが。
これまでのコンサルティングの経験からすると、この解約失効率が低いと言うことも、次のような本末転倒なケースにつながっている場合もあり、解約失効率が低いことが必ずしも顧客のメリットとなっていないように感じます。
- 解約させてくれない
- 解約すると損であることを、予め強力に刷り込まれたせいで、解約できない
- 保険プランを守ることが家族愛の証であることを、予め強力に刷り込まれたせいで、解約できない
実際に、解約すると損だからと解約させてもらえず、収入が激減したにもかかわらず預貯金(それも住宅取得のための頭金)を取り崩して保険料を払い続けていたケースがありました。
また、ライフプラン自体が2〜3年で陳腐化するようなお粗末な内容で、保障内容にそぐわなくなるとその度にライフプランを繰り返し、場合によっては保険プランの手直しを、だましだまし繰り返すというケースも見受けられますが、これって「契約加入後の対応」として「いい対応」といっていいものなのでしょうか。
私に言わせれば、2〜3年で腐る程度のコンサルティングしかできていない、レベルの低いコンサルティングの犠牲者ということになるのですが。
失効解約率が低水準であると言うことは、生保にとって勲章であることは間違いありませんが、一部のセールスにはその意味を取り違えている方がいる、という側面も忘れてはいけないと思います。「対応が細やかだったのはA生命。請求後に『もう届きましたか』『説明にあがりましょうか』と、フォローの電話連絡を欠かさなかった」
週刊ダイヤモンドが独自に、保険会社の代表番号に電話をして、覆面で資料請求調査を実施した結果もランキングされています。
このランキングの項目立ても、とってつけたように感じます(ほとんど対応に差がないので、無理矢理に、「資料請求から到着までの期間」で差をつけたようにしか見えません)が、それ以上に、この編集者のコメントはちょっと?のように感じます。
というのは、契約者評価ランキングの解説では、“一方的な押し付け”といったセールスがマイナス評価につながり、大手生保がおしなべて「契約者評価ランキング」も下位に甘んじていると指摘しているにもかかわらず、1回資料を請求しただけなのにうるさく自宅まで何度も電話を繰り返すような一方的な生保A社には、なぜか“細やかな対応”と好意的に評価するのは、整合性に欠けるように感じるからです。
これは、生保のセールスが親切心で対応しても、反面では、「うっとうしい」「生保のおばちゃんと同じ」との反応もあるはずで、それを編集者が、特定の生保のみ対応が細やかと言うのはいかがなものでしょうか。
つまりは、顧客の評価というのはそのレベルのものであって、自分が加入したことのある生保のイメージに基づいた、単なる人気・不人気投票でしかない、ということを図らずも編集者自身が暴露してしまったと言えるのではないでしょうか。
おっと、肝心な「生損保信頼度ランキング」の詳細ですが、まだ間に合いますので、ぜひご購入またはお立ち読みください(定価570円です)。
<生保信頼度ランキング>
1(1).プルデンシャル生命
2(3).ソニー生命
3(2).東京海上日動あんしん生命
4(5).三井住友きらめき生命
5(6).アリコジャパン
6(4).富国生命
7(10).大同生命
8(14).AIGエジソン生命
9(7).アイエヌジー生命
10(9).アメリカンファミリー生命
11(8).日本生命
12(16).ジブラルタ生命
13(13).オリックス生命
14(11).太陽生命
15(15).アクサ生命
16(18).マニュライフ生命
17(21).AIGスター生命
18(12).損保ジャパンひまわり生命
19(17).第一生命
20(20).住友生命
21(19).朝日生命
22(22).三井生命
23(23).明治安田生命
※( )内の数字は、「契約者評価ランキング」の順位
最後に、ここで気が付いてほしいのは、ランキングの上位に顔を出している生保が良い会社かどうかと言うことではなく、評価の項目立てによって、ランキングは大きく変わるということです。
だからこそ、ランキングは客観的なものでもありませんし、そもそも生命保険は会社よりもセールスの担当者の選びこそが重要であるということからも、ランキングを鵜呑みにはしない、その態度が必要なのではないでしょうか。
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