ベタ(下手)な“おばちゃんセールス”の事例研究

“コンプライアンス”の勉強をしなくて、本当に大丈夫?


生保の様々な不祥事件を受けて、金融庁の方針である、法令違反即処分はすっかり定着した感があります。
従来のおばちゃんセールスも、保険業法300条に違反した場合(保険料のおまけはもちろん違反です)、おばちゃんのみならず、生保会社まで処分を受ける、そんな時代がやってきました。
正確な告知の取り付け、契約概要の説明、注意喚起情報や重要事項の説明などが必須となり、会社の昼休みにきて、その場で申込書に自署と捺印をとりつけて“一丁上がり”といった、やっつけ仕事では自分(セールス自身)の身を守れなくなってきているのです。
にもかかわらず、先日受け付けた相談の内容は、あきれることに、まだそんなベタなセールスをやっているおばちゃんと、そのおばちゃんを守ろうとする生保があることを教えてくれました。


<経緯>
  1. 10年更新型の医療保険に加入中で、住所変更などの手続きのために、生保の担当者(おばちゃん)に連絡を取った。
  2. たまたま医療保険の更新時期にも当たっていたが、健康状態の不安があったことから、自動更新をするつもりで、「自動更新をしない旨の連絡」などは行わなかった。
  3. 自動更新となった直後におばちゃんが来訪し、住所変更などの手続などについてではなく、加入中の保険プランについてデメリットを列挙し、新たにプランに加入することを勧められた(担当のおばちゃんは、10年前に加入したときのおばちゃんではなかったことから、新しいプランに加入してもらわないと、現在の担当のおばちゃんの成績にならないため、新しいプランを勧めるために来訪したと考えられる)。
  4. すでに自動更新となっている旨を説明したところ、今からでも自動更新は取り下げられるということのみ一方的に説明され、その場で取り下げの書類に自署・捺印をさせられた。
    また、新しいプランについての提案書なども準備されており、健康状態の確認もないまま、新しいプランに乗り換えるスケジュールを決められてしまった(ただし、自動更新を取り下げてしまうと、次のプランに加入するまでの間、保障が途切れてしまうことすら、説明はなかった)。
  5. ところが、現在の健康状態をきちんと告知すると、新しいプランに加入できないか、あるいは特別条件が付く恐れがあることに気がついたため、生保の相談センターに連絡をし(おばちゃんでは、正確な情報提供が受けられないと考えたため)、今からでも自動更新の取り下げを止めることが出来ないか確認を行った。
  6. にもかかわらず、結局、担当者から回答すると言うことで、相談センターでは回答してもらえなかった。
  7. 担当者が来訪し、今となっては自動更新を元に戻すことは出来ないが、これまでのプランと同じ内容のプランになら加入できる旨の説明を行い、健康状態に不安があるならとりあえず告知のみ預けてほしいと言われ、告知書に記入した。
  8. が、その告知についても、記入上の注意や、虚偽の告知に対する不利益(告知義務違反による契約解除や、保険金が不支給)などについての説明は一切なく、むしろ「直近の通院が6ヶ月前であれば告知は不要」といったような、嘘の説明を行った挙げ句、すべての項目について「いいえ」に○を付けさせて、告知書を持ち帰った。
  9. その後で、そのような告知で本当に大丈夫なのか不安になったので、営業所へ確認の電話をしたところ、上司という人が電話口に出て、自動更新が出来ない理由と、告知も大丈夫という理由を説明しに、自宅へ来ることになった。
  10. 上司という人に告知について訂正をしたい旨を告げ、それでも加入は可能なのかどうか確認すると、告知はどうであれ、加入させるので安心してほしいとのこと。
    では、すぐに入院したら給付金は受け取れるのか確認すると、もう一度詳しく確認してみるとのことで、明確な答えが得られなかった。
  11. 次回来訪時には、回答を書面でお願いしたいと言うことと、その回答の内容について、約款や事務規定のどこに記載されているのか、記載箇所のコピーを添付するように依頼した。
  12. ところが、なぜか来訪の前に上司という人から電話があり、突然、自動更新は可能ということを口頭で告げられた。
    その代わり、書面での回答は届かなかった。
  13. したがって、なぜ自動更新が出来ないと言われたのか、なぜ結果として自動更新は可能となったのか、新規加入の告知の取扱いは妥当だったのかどうか、書面による回答もなく、うやむやにされた形となった。

<コンプライアンス(法令遵守)に抵触する行為>

上記セールスの問題点は次の通りで、セールス(募集人)および生命保険会社は保険業法等によって、処分される可能性が高い、非常に重大なコンプライアンス違反と考えられます。
  • [セールス担当者]正確な告知を妨げた(保険業法300条1項3号違反)
    → 1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金またはこれを併科

  • [セールス担当者]自動更新を取り上げることによるデメリットを説明しなかった(保険業法300条1項1号違反)
    → 1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金またはこれを併科

  • [セールス担当者]新しい契約に乗り換えるメリットしか説明しなかった(保険業法300条1項4号違反)
    → 登録の取り消しや業務停止または業務改善命令

  • [生命保険会社] 相談センターでの苦情処理態勢の不備
    → 業務停止または業務改善命令

  • [生命保険会社] コンプライアンス・プログラムの実効性の不備
    → 業務停止または業務改善命令

<セールスを受ける際のチェック・ポイント>

今年の4月以降、各生保でセールスの際の説明ルールが次のように、改定されています。

●募集時の名乗りルール(保険業法294条)
生命保険契約の募集を行おうとするときは、「所属保険会社の名称」および「保険募集人の氏名」を予め明らかにしなければいけない。

●「契約概要」の説明と交付(保険業法300条1項1号)

  • 商品の仕組み
  • 保障内容
  • 付加できる特約とその概要
  • 保険期間
  • 引受条件
  • 保険料に関する事項
  • 保険料払込期間に関する事項
  • 配当金に関する事項
  • 解約返戻金の有無およびそれらに関する事項

    上記の内容を記載した「契約概要」(書面)を使い、十分な時間を確保し説明し、理解を得た上で、設計書(お見積もり)とともに交付すること。

●「注意喚起情報」の説明と交付(保険業法施行規則53条)

  • 注意喚起情報であること
  • クーリングオフ
  • 告知義務等の内容
  • 責任開始期
  • 支払事由に該当しない場合のうち主なもの
  • 免責事由等の保険金を支払わない場合のうち主なもの
  • 保険料の払込猶予期間
  • 契約の失効・復活等
  • 解約返戻金の有無
  • セーフティネット
  • 特に法令等で注意喚起することとされている事項

    設計書と「契約概要」により保険商品のご理解を得た上で、さらに上記の内容を記載した「注意喚起情報」(書面)を説明し、理解を得た上で交付すること。

●「告知サポート資料(ツール)」の説明と交付(生命保険協会「正しい告知を受けるための対応に関するガイドライン」)

  • 告知の重要性
  • 乗換・転換時の告知義務
  • 告知受領権
  • 正しく告知されない場合のデメリット
  • 傷病歴がある場合でも、引受可能なケースがあること
  • 契約確認・保険金給付金確認
  • 無選択型・選択緩和型保険等の留意点

    上記の内容を記載した「告知サポート資料(ツール)」を使い、告知の重要性について正しい理解を得た上で、告知書に自署をいただく。

<金融庁の相談窓口>

セールス担当者(募集人)にコンプライアンス違反の恐れがある場合、生保の相談センター等に問い合わせることが基本です。
しかし、生保によっては、セールス担当者(募集人)の不祥事を有耶無耶にするために、きちんと取り合ってくれなかったり、内部調査などを行ってくれない可能性があります。
そのため、生保の相談センター等に問い合わせたにも関わらず、結果としてセールス担当者(募集人)がやってきて、でたらめな説明を聞かされた挙げ句、煙に巻かれてしまうことになりかねません。
そんなときは、金融庁に相談窓口が設置されていますので、相談してみてはいかがでしょうか。
もっとも、生保の相談センターやセールス担当者(募集人)に、「そのような対応でしたら、金融庁の相談窓口に相談してみようかな」と囁けば、きっと対応は良くなると思いますので、あくまでも金融庁に相談窓口は最後の手段ですが。

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