★財産形成の基本は減らさないこと 第3回
しばらくお休みしていましたが、思い出したように第3回をお送りいたします。
■リスク分散−「外貨預金」の考え方
外貨預金というと、高金利、リスク分散の2つのメリットで、マネー雑誌などにも盛んに取り上げられています。
銀行でも、金利選好のお客には外貨預金か投資信託をお勧めする世の中になりました。
でも、本当に高金利なのでしょうか。
そして、外貨の運用によるリスク分散は必要なのでしょうか。
じっくりと考えてみたいと思います。
1.外貨といえども商品と同じ
皆さんは、外貨というと、同じお金なんだから、円でもドルでも変わりないと思っていませんか。
たしかに貨幣である点は同じですが、日本という国に住んでいる場合、円は貨幣ですが、ドルは商品(物)なのです。
それは、日本国内でドルを使って買い物をしようとしても、円に両替しない限り使用できないからで(ドルを使えるお店があるとしても、それは物々交換と同じで、お金を使った買い物ではありません)、さらにその両替の際に手数料がかかってしまうことが重要ポイントです。
例えば、米ドルの外貨預金をする場合
預けるときは 円→米ドルにするための両替手数料(TTS)が
引き出すときは 米ドル→円にするための両替手数料(TTB)が
それぞれに必要となります。
金融機関によってその手数料は異なりますが、通常は1米ドル当たり1円の両替手数料が必要となります(TTSはTTBよりも2円高く設定されています)。
TTS(預金する際に銀行が外貨を売る相場) 101円
>1円
仲値(いわゆる為替相場とTVなどで言っている相場) 100円
>1円
TTB(預金を払い出す際に銀行が外貨を買い取る相場) 99円
つまり、1ドル=100円と仮定した場合で、1000ドルの外貨預金をする場合には単純に10万円あれば預金できるわけではなく、そのほかに両替手数料として1000円も必要となります(この例の場合なら、手数料は1%と考えることができます)。
ただし、この手数料は、為替手数料に含まれた形で表示されるため、なかなかお客には分かりません。
そのため、(この例で言えば)お客は1000ドル=10万1000円だと思いこんで、外貨預金を行うわけです。
ここでお気づきいただきたいことは、この両替手数料が高い安いと言うことではありません。
外貨は商品だから、交換(両替)するのに手数料が必要であると言うことに気づいていただきたいのです。
そして商品ですから、商品の相場によって商品自体の取引価格が変動します。
これが為替相場のリスクと言うことになります(商品だと思った方が、価格の変動という現象、およびリスクあることを理解しやすいのではないでしょうか)。
2.為替リスクとそのヘッジ
さて、外貨預金のリスクの大部分は、今言った為替相場(レート)の変動リスクです。
為替相場の変動要因は、細かく分ければいろいろあるのでしょうが、それを知っていても為替変動のリスクはなくなりませんから、それについては触れません。
むしろ、理屈を知らなくても為替相場の変動リスクを回避(ヘッジ)する方法さえ分かれば言い訳ですから、そのとっておきの方法をお教えしましょう(外貨預金を満期になっても円にしなければ為替リスクは関係なくなりますが・・・)。
といっても、何もものすごい方法があるわけではありません。
皆さんのご存じの「為替の先物」を使うだけです。
「為替予約」とも言いますが、外貨預金を預け入れたときに、満期日の為替相場を予約するだけで、為替相場の変動リスクを回避することが簡単にできます。
でも、この予約を使うと、なんとあんなに高金利だったはずの外貨預金が、予約によって満期時点の元利合計額を円で確定してしまうと、あらあら不思議、何と驚いたことに、円で預金したのとほとんど(全く)同じ元利合計額(利回り:%)になってしまうのです。
これも、説明は難しいのですが、要するに、そんなうまい話はないと言うことです(予約をするのもただではありません。手数料が発生します)。
リスクをとりたくなければ、最初から外貨預金にしないと言うことです(預入時に為替予約をせず、満期までの途中で予約を入れる方法も当然考えられますが、これだって為替のリスクがなくなるわけではありません)。
あるいは、米ドルのまま使う目的で外貨預金すれば、為替リスクの心配はなくなります。
外貨預金の為替変動リスクは次のようにまとめることができます。
円安:為替差益→元利ともに当初より増える(為替手数料2円分までの円安については除きます:以下の説明を参照)
円高:為替差損→元利ともに当初より減る(金利がついても、円での元本を下回ってしまうことも)
では、預け入れと同じ為替相場(為替相場がまったく変動しなかったとして)なら損をしないかというと、なんとこれが損をするのです。
それは、最初に説明した外貨預金を預けるときも払い出すときも、それぞれに両替手数料がかかるということに関連しています。
先ほどの例で考えますと、為替相場は次のようになります。
預入時:1ドル=101円だったとすると、
払出時:1ドル= 99円の為替相場の適用となってしまいます。
したがって、一般的な金融機関の両替手数料の場合、預入時より払出時の為替相場が1ドル=2円円安(つまり、1ドル=101円)になっていないと、とんとんにできないと言うことになるわけです(とんとんというのは、思った通りの高金利を享受できる場合をいいます)。
3.円安、円高はなぜ起こる?
これも非常に難しいのですが、今回は最も簡単に割り切ってみます。
要は、円高とは世界の人が円をほしがっている状態ですから、日本に資金がどんどん流入している状態と考えられます。
なぜ資金が流入してくるかと言えば、日本の景気がよくて金利も高く、株式相場も堅調であることが理由となります。
一昔前の日本を思い出します。そして、ちょっと前のアメリカの状況みたいなものです。
円安はその逆です。日本からどんどん資金が流出し、流出するには円を米ドルに両替しなければいけないため、ドル高=円安になるわけです。
なぜ、日本から円が流出してしまうのかと言えば、日本よりもアメリカの方が景気がよくて金利が高く、株式相場も堅調だからです(つまり、アメリカでは景気がよくてその分、物価も上昇しているため、預金金利もそれに連動して高いわけです。米ドルの外貨預金の金利が高いのは当たり前なのです)。
で、今後の為替相場を考えてみる場合、次のように考えてみてください。
なぜなら、「外貨預金は円高の時に始めて、満期時に円安になる」ようにタイミングを見るのがベストだからです。
日本の景気がよくなると思えば、今後円高が予想されるため、外貨預金は×。
日本の景気は一段と悪く、アメリカの景気は何とか持ち直すと思えば、今後は円安が予想されるため、外貨預金は○。
まあ、為替相場は細かい要素が複雑に入り組んで変動していますから、これだけではどっちとも断定できませんが。
4.外貨預金の有用性
最後に、では外貨預金はどのようなニーズの方に最適なのでしょうか。
・将来外国で住む人で、その資金を貯めるため。
・将来発生するであろう大災害時に備えるために、資産を海外に避難させるため(これこそリスク分散の本来の姿です)。
このようなニーズのある方には、外貨預金でもそもそも、最終的に米ドルを円に両替しないわけですから為替リスクの心配もないわけで、外貨預金を選択する意味があるといえます。
でないなら、目先の高金利に踊らされて、為替リスクを心配する必要はないような気がします。
でも、一度やってみたいのなら、余裕資金でどうぞ。
あくまでも、預金と言いながら、元本割れのリスクがあるものであると言うことをお忘れなく(予め、為替相場がどの水準になったら元本割れになってしまうのか調べておくのも、良いかと思います)。
以上、非常に単純に割り切って「外貨預金」を解説してみました。
説明不足の点、舌っ足らずの点があるかもしれませんが、ご質問はお気軽にどうぞ。
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