★個人年金のお勧めにご注意を
今回は、4月の保険料アップ(正確には予定利率の引き下げ)を見越して盛んにセールスされると思われる「個人年金」について、今加入することにはメリットが少ない理由を上げてみます。
とくに、
「年金額90万円を10年間受け取り」=「900万円の価値がある」
とセールスに思いこまされて、個人年金は預貯金より得と勘違いされていらっしゃる方頭を冷やしてみましょう。
何よりも、個人年金を考える場合は、「年金現価」という視点からご検討ください。
■個人年金の利回りの算出は?
個人年金の損得を考える際に一番重要なのは「年金現価」(年金の持つ価値)がいくらなのか、きちんと把握することです。
例えば、90万円の基本年金額の個人年金で、受取期間は10年確定の商品に加入した場合を考えてみます。
一般的には、
90万円×10年=900万円
の価値があると思い、利回り(年利回り)を算出する際にも、
(900万円−保険料の総額)÷保険料の総額÷保険料の払込期間
で計算しているのではないでしょうか?
ところが、これが大きな間違いです。
簡単に言うと、「90万円の年金を10年間支払い続けるために必要な資金は900万円より少ない」ということです。
つまり、「最初の年金支払いの時点に900万円なくても、あとの9年間に残りの資金を運用していくことで資金を増やすことができる」ということで、現在の条件(予定利率2.00%として)でいうと「最初の年金支払いの時点で約808万円があれば、90万円の年金を10年間支払える」ことになります。
つまり、皆さんが預貯金で808万円を貯めることができ、その(貯め終わった)時点の預貯金利率が2.00%であれば、毎年90万円ずつを取り崩しても10年間は大丈夫と言うことです(2.00%というとものすごく高いように感じますが、いまの預貯金金利が異常に低いだけなので、取り崩しを始める時点が10年以上先ならば無理ではない預貯金金利だと思います)。
808万円は年金現価係数表を見ないと計算できませんが、808万円が分かれば、利回りを算出することは簡単です。
(8,084,700円−保険料の総額)÷保険料の総額÷保険料の払込期間
となりますから、簡易保険の個人年金を例(50歳・女性、10年間払込、60歳から年金支給・10年受け取り)に算出してみますと、次のようになります(簡易保険の場合、チラシが簡単にもらえると言うことで取り上げただけです。他意はありません)。
(8,084,700円−7,948,800円)÷7,948,800円÷10年=0.17%
つまり、年利回りは0.17%ということで、これなら預貯金と変わらないのに、10年間は資金移動に不自由を来すのでは、皆さんが選択のポイントとしている点では、決してお得とは言えないことがご理解いただけるでしょう。
ところが、私が参考にしている簡易保険のチラシでは、当然、年金現価(総受取額900万円しか記載がありません)については全く触れられていません。
したがって、このチラシだけ見て年金現価を900万円と誤解して計算してしまうと、なんと年利回りは1.32%にもなってしまいます。
つまり、皆さんが老後資金は利回りのものすごく有利な個人年金へと思っていたとしても、それは大いなる幻想なわけです(上記の計算はあくまでも簡易的なものです。この要素だけで個人年金の保険料などが設計されているわけではありません。あくまでも個人年金のメリットを誤解をしないための目安としてお考えください)。
■配当金の働きとは?
それでも配当金が付くのでは?と思われるかもしれませんが、これは「配当が付くときは、ものの値段が上がるとき」と、正しい配当金の認識をしていただいていれば、配当が付くことで受取額がアップしても、使える価値が増えたわけではないと言うことがご理解いただけると思います(配当金が増えたとしても、現在の価値で年90万円の価値は変わらないと言うことです)。
したがって、配当金によって年金額がアップしても、使える価値が増えるわけではないと思っていた方が、老後になってから後悔しません。
■老後の生活資金は終身保険でもできる
このように個人年金に魅力がないのは、現在の予定利率が低いという側面もあります。
であるなら、個人年金より予定利率が高い保険商品を活用し、その解約返戻金を年金的に受け取ることで、個人年金に加入するより有利な老後の生活プランを作れるのではないでしょうか。
この場合、現時点でのお勧めは、終身保険(配当付き)です。
これでしたら予定利率2.50%の会社もあり、「長割りタイプ」を活用すれば、さらに保険料負担を軽くできます。
具体的には、上記の例と同じ条件(50歳・女性、10年間払込、60歳から年金支給・10年受け取り)で考えてみますと、次のようになります。
保険料: 月65,343円
保険料の総額:7,841,160円
年金額: 約90万円
年利回り: 0.356%
保険金額: 1,380万円
終身保険の場合、個人年金と違い途中で死亡した場合、保険金(この場合は1,380万円)が受け取れます。
ただし、年金として受け取る場合には、この死亡保障はなくなります(ただし、一部を年金に、一部を死亡保障として、というように分割して活用することができます)。
具体的な設計のご希望がありましたら、設計いたします。勧められている商品との比較にお役に立つと思います。
■とにかく慌てて加入しない
「3月までに加入しないと保険料がアップして損」という話はまったくウソというわけではありませんが、「個人年金がお得」という話は、かなりウソです(簡易保険を例に取ってありますが、簡易保険以外の年金も同様です)。
十分にご検討して決定すべきでしょう。
2月は「生保月」といって、生保のセールスが一段と激しくなる月でもありますし(いろいろなノルマが増えるらしいです)。
お勧めされるほどお得でない証拠は、次の表
http://www4.plala.or.jp/anshin/topics.01.02.html
をご覧ください。
簡易保険のチラシから抜粋してありますが、とくに老後を間近にした50歳代の方はとくに注意が必要です。
チラシはお得に見えるようにできていますので、冷静に分析してください。
最後に、説明に飛躍のある部分もあるかと思いますが、具体的なご質問や設計などはお気軽にお問い合わせください。
お待ちしています。
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