あんしん配達通信マガジン(月刊)


★週刊ダイヤモンド(7/10号)「勧めたくない保険会社」について

前回も、週刊朝日(7/9号)「入院日額1万円 医療保険コンペ」の記事について、比較表の作成時に、項目立ての仕方如何で、読者を特定の生保や商品に誘導してしまう可能性について考えてみましたが、今回取り上げます週刊ダイヤモンド(7/10号)特集「勧めたくない保険会社」の「生損保顧客満足度ランキング」(今週月曜に発売されました)でも、下記のような、重要度が?が付く項目で、無理矢理順番を付けたランキングといった感じが無きにしもあらずです。
さて、そのランキングですが、
●契約者評価
●加入後の顧客対応
●利便性
●会社としての取り組み
に分けて、その合計得点で順位付けを行っています。

■契約者評価について

まず、疑問を感じる点ですが、「契約者評価」の配点が非常に高い点です。
「顧客満足度なんだから当たり前ではないか」と言われるかもしれませんが、ネットアンケートのみで行われたと言うことからすると、次のような点で、統計としての精度や正確性・客観性に疑問が生じるのではないでしょうか。

・ネットが使えない人の意見が反映されていない
・あえて積極的に評価をしようとする人の加入している生保に偏りはないのかどうか
・各社43〜44人のサンプルをまんべんなく抽出ということで、正確性を担保しているようにも見えるが、契約数や契約高での補正を行っていない(あるいは契約者の年齢や性別などについても)
・生命保険についての知識レベルにバラツキがあると考えられる(客観的な評価と、単なる思いこみの評価の区別がつかない)

とくに、顧客満足度は次のような区分(評価項目)で得点されていますが、いずれも契約者が「そう思いこんでいる」「そう思いこまされている」というレベルでの評価も紛れ込んでいる可能性を排除できないのではないでしょうか。

・加入までの商品説明や提案力
・商品の保障内容(※)
・保険料の水準(※)
・契約加入後の対応
・財務の健全性
・乗り換え意向(※)
・事故・入院時などの対応

さらに、※印を付けた項目は、思いこみで評価が大きく分かれる項目で、「安くて良い保険」(=うまい話)に加入できたと思っていたとしても、それが結果として分かるのは通常、老後を迎えてからのことですから、保険料を払っている年齢(老後を迎える前の段階)で、そのプランの真価を客観的に判断できるかどうかは、非常に難しいと言うことになるでしょう。
と言うことからすると、このランキングは、あくまでも生保の人気投票と呼ぶべきでしょう。
そうすれば、思いこんでいようと、思いこまされていようと、1票は1票で、その1票の意味は関係なくなる訳ですから。

ところで、財務の健全性などは、そもそも格付やソルベンシー・マージン比率といった客観的な数値がある訳ですから、わざわざ契約者の評価を問う必要はないように思いますし。

■利便性・会社としての取り組みについて

次に、契約者評価以外の項目立てに目を向けてみます。
この中では、
・利便性
・会社としての取り組み
は、項目として必要でしょうか。
まず「利便性」ですが、「利便性」の評価対象となっている3つの項目については、次の理由から、わざわざ配点をしてまで評価をする必要性を感じません。

・土日祝日のコンタクト窓口
・ネット上での契約確認
・ネット上での契約内容の変更

ようは、土曜祝日に、あるいは常日頃から契約者を担当する営業職員へ連絡が取れればいい話であって、その窓口の有無が利便性を大きく左右するものではないと考えられます。
また、どのような対応を行っているのかは、まったく評価の対象になっていないようです(100点か0点で評価されている)。
つまり、窓口があればいい、ネット上で何かできればいい、と言うだけで配点されている訳で、この項目をわざわざランキングの配点に入れなければいけない必然性が感じられません。
ネット上にアプローチができない契約者の利便性については、もちろん無視をしている訳ですし。
あったら便利ではあっても、それがなければ不便という訳でもない、というものでわざわざ評価しようとすることには、何か意図を感じざるを得ません。

「会社としての取り組み」についても、
・顧客満足度調査の実施
・顧客の声を共有できる仕組み
といった、これまたあった方が会社の取り組みとしては評価できるとしても、それがなければ取り組み姿勢が悪いという訳でもない、非常に曖昧な項目での評価となっています。

■ 「歩合制の生保の営業職員にサービスを期待するな」?

同じ、週刊ダイヤモンド(7/10号)特集「勧めたくない保険会社」に、経済ジャーナリストO氏の談話が、掲載されていました。
タイトルは、「歩合制の生保の営業職員にサービスを期待するな」というものです(ちなみに、歩合制は給与体系ではなく、報酬体系だと思うのですが)。
O氏は、どうやら、歩合制である生保の営業職員は、自分の成績を上げることしか頭になく、その営業職員にサービスを期待するには自体に無理がある、ということを言いたいらしいのです。
でも考えてみてください。
歩合という名目でないにしても、独立系のFPが相談者へ生命保険を紹介しても、コミッション(手数料)が保険会社から支払われます(これも実質は歩合です。O氏の事務所は、このような業務を行っていないのでしょうか?)。
だから、あなたのニーズを伺った(つまり、あなたを丸裸にした)うえで、いろいろな生保(例えば14社とか8社とか)からベストの商品を選んで、あなたにとってベストのプランを作ります、といいながら、一番コミッションの良い商品だけを組み合わせて、その商品に皆さんがニーズを無理矢理合わさせられているではありませんか(最近、そういった相談が多いのです)。
銀行員が窓口で生命保険を売れるようになっても、やはりその成果に応じてボーナスなどで格差が生じるなら、これだって歩合といえなくもありません(だから「高利率」などといった甘言を弄して、無理矢理に預金を、変額個人年金や投資信託、外貨預金といった投資商品にさせようとするのはないでしょうか)。
簡易保険ですら、待遇は国家公務員並みにもかかわらず、保険を販売すれば歩合が支払われます(だから、子連れで郵便局に行けば、元本割れ必至の「学資保険」を勧めてくれるのです)。
しかも、郵便局員には、貯金という財布の中まで知られていますから、非常にえげつのないセールが、まるで親切心からであるように、行われるケースが散見されるのです。
それなら、私は、まだ生保のおばちゃんの方がましだと思えるような、そんなFP、銀行員、郵便局員をセールス手法を知っています。

であるなら、歩合制だから生保の営業職員が役に立たない訳ではないのです。
むしろ、歩合制であるからこそ、一人の顧客を一人の営業職員が、加入時のプラン設計からずっと生涯を通じてフォローすることができるのです(銀行員のように転勤が2〜3年毎にあったら、本当にあなたの人生を任せることができるでしょうか)。
もっとも、加入して2年経てば解約されてもペナルティがなくなるから、といったレベルでの営業が横行していることは否めません。
だからこそ、生命保険は、商品性はもちろん重要ですが、営業職員の質こそが重要なのです(マンションは管理を買えというのと同じかもしれません)。

ともう一つ、O氏は顧客ニーズにに叶った商品としてA社の終身医療保険を取り上げているのですが、これだけで、この方が経済ジャーナリストではあるかもしれませんが、生命保険のことは素人であることがよく分かります。
保険は新しい商品になれば「良くなって安くなっている」のではなく、「よくなったように見えるようになって、安くなったように見えるようになっている」のでしかありません。
A社の終身医療保険について、ここで詳しく解説するつもりはありませんが、ようは顧客の欲張りなニーズをすべて満たしたかのように勘違いをさせて、デメリットについてはきちんと顧客に表示していないからこそ、よく見えているのです。
にも関わらず、ここでこのレベルの商品を顧客ニーズの叶った商品として取り上げるとは、いやはや何をか言わんです。

おっと、肝心な「生損保顧客満足度ランキング」の詳細ですが、まだ間に合いますので、ぜひご購入またはお立ち読みください(比較のために、週刊エコノミスト6/15号「生保安心度ランキング」を併記してみました)。

<顧客満足度ランキング>  <安心度ランキング>
1.ソニー生命         アメリカンファミリー生命
2.プルデンシャル生命     ソニー生命
3.アリコジャパン       損保ジャパンひまわり生命
4.東京海上日動あんしん生命  日本生命
5.大同生命          大同生命
6.アメリカンファミリー生命  第一生命・アイエヌジー生命
7.アクサ生命          ー
8.損保ジャパンひまわり生命  明治安田生命
9.アクサグループライフ生命  アリコジャパン
10.日本生命          三井住友きらめき生命
11.明治安田生命        富国生命
12.第一生命          プルデンシャル生命
13.AIGエジソン生命     東京海上日動あんしん生命
14.住友生命          アクサ生命
15.太陽生命          太陽生命
16.三井生命          住友生命
17.アイエヌジー生命      オリックス生命
18.オリックス生命       三井生命
19.朝日生命          朝日生命
20.富国生命          マスミューチュアル生命
21.三井住友きらめき生命
22.マニュライフ生命
23.ジブラルタ生命
24.AIGスター生命

最後に、ここで気が付いてほしいのは、両方のランキングの上位に顔を出している生保が良い会社かどうか
と言うことではなく、評価の項目立てによって、ランキングは大きく変わるということです。
だからこそ、ランキングは鵜呑みにできない、といえるのではないでしょうか。





★日本格付研究所 格上げ情報

日本格付研究所(JCR)は、7月6日付けで、朝日生命の保険金支払能力を1段階格上げしました。

●BBー[新] ← B+[旧](1段階のアップ)

「BB」:債務履行に当面問題はないが、将来まで確実であるとは言えない
「B」 :債務履行の確実性に乏しく、懸念される要素がある





★S&P 格上げ情報

S&Pは、7月26日付けで、損保ジャパンひまわり生命の保険財務力格付を1段階格上げしました。

●AAー[新] ← A+[旧](1段階のアップ)

「AA」:保険財務力が非常に強い。AAAとの差は小さい
「A」 :強い保険財務力を有するが、上位に比べ、環境が悪化した場合、その影響をいくぶん受けやすい


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