あんしん配達通信マガジン(月刊)


★ムーディーズ 格下げ情報

ムーディーズは、4月1日付けで、アリコの保険財務格付けを、1段階引き下げたうえで、「更なる引き下げの方向」で見直すことを発表しました。

●アリコ Aa1[新] ← Aaa[旧](1段階ダウン)

「Aa」 :支払能力が優れている保険会社に対する格付け。
      Aaa格とAa格を合わせて、一般に優良保険会社と呼ばれる。
      Aaa格の保険会社と比較して長期的なリスクがやや高いとみられるため、格付けを低くしている
「Aaa」:支払能力がきわめて優れている保険会社に対する格付け。
      財務力は変化する可能性はあるが、予見できる変化によって基本的な財務力が損なわれるとはきわめて考えにくい





★「いちばん・・・・保険のはなし」を読んでみた

O原H子さんの新刊「いちばん・・・・保険のはなし」(日●経●新聞社刊)を書店で目に留め自腹で購入し、早速読んでみました。
「お宝保険」という重宝(玉虫色)な言葉を駆使し、マスコミで保険診断(やってたことは保険料をいかに安く見せるかといった、保険のコンサルティングとは似て非なるものでしたが)をしまくったO原H子さんの最新刊ともなれば、どんな切り口で生命保険をやさしく解説してくれているのか、皆さんも興味があるのではないでしょうか。

とはいえ、全てを解説する訳にはいきませんので、一番?だった箇所について考えてみたいと思います。
それは、54ページの「掛け捨てと貯蓄型どっちにする?」の、”今から保険に入るなら、絶対に掛け捨てを選ぶべき!”という「ゲリマンダー」的な結論(こじつけ的な三段論法)です。

●理由1.今は予定利率が低い
     「契約時の予定利率は満期時まで変更できない。今は予定利率が低い時期なので、もし景気が良
      くなっても利率が低いまま運用される」
●理由2.必ず経費が引かれる
     「保険料から、必ず経費と死亡保障の費用が差し引かれる。預けたお金が全額貯蓄される預貯金
      の方が確実」
●理由3.保険会社も破綻する
     「もし保険会社が破綻したら、受け取れる保険金が大幅減になることも。その時、貯蓄型の保険
      は大きなダメージを受けてしまう」
  ↓
■[結論]今から保険に入るなら、絶対に掛け捨てを選ぶべき!

以上、3つの理由を挙げ、そこから結論を導いている訳ですが、逆に考えると、この3つの理由が正しくなければ、結論も正しいとは言えなくなります。
そこで、3つの理由が正しいと言えるのかどうか、考えてみました。

まず、理由1について。
さすがに、「お宝保険」で一世を風靡しただけのことはあります。
でも、残念ながら、予定利率と預貯金の金利との違い、および配当の機能について、あれからもまったく勉強していなかったことが、この理由から分かってしまうのです。
確かに、予定利率は加入時のものがずっと適用されます。
これは間違いではありません。
でも、そのことを、O原H子さんは、予定利率を「固定」しているものと勘違いしているようです。
しかし、配当付(あるいは積立利率変動型)の保険商品であれば、景気が良くなって預貯金の金利がアップする金融環境になれば、当然、市場金利もアップし、予定利率を超える運用となりますから、その差額が配当金として契約者に還元される訳で、予定利率は「確定」(最低限は保証されている)とはいえても、決して「固定」していることにはならないのです。
したがって、予定利率が低いことは、マイナスの条件とはなりません(「予定利率が低いと損」という発想は、予定利率を単純に「預貯金金利」と同じものと勘違いしている結果としか思えません)。
なお、「無配当」の保険商品に関して言えば、予定利率は「固定」ですから、理由1の通りで、今(金融環境が底の局面)の時点で選択すべきではない、といえますが。

次に、理由2について。
例えば、死亡保障がまったくいらない人は別として、生命保険を選択する人は死亡保障を必要としている訳ですから、死亡保障の費用(適正な額)が保険料から差し引かれることに対しては、納得しているのではないでしょうか。
また、費用(経費)については、預貯金も経費はかかります(利息で調整している訳ですから)し、投資商品も手数料(為替手数料)などがかかります。
つまり、金融商品なら、必ず何らかの形で費用(経費)がかかっている訳です。
ということからしても、理由2は”今から保険に入るなら、絶対に掛け捨てを選ぶべき!”の根拠とはなりません。

あえてもう一つ付け加えます。
確か昔、O原H子さんは著書の中で、”掛け捨て”の死亡保障の経費率が大きいことを、数字をあげて実証されていらっしゃいましたが、あれはいったい何だったのでしょうか。
あのときは「定期付終身保険」を批判されていたようですが、今思えば「定期付終身保険」自体が、10年更新の掛け捨て保険プランのようなものですから、”今から保険に入るなら、絶対に掛け捨てを選ぶべき!”とどう整合性をとっていらっしゃるのでしょうか。
それとも、時流に賢い経済ジャーナリストとしては、今だけつじつまが合っているように見えればいい、とでもお考えなのでしょうか。

最後に、理由3について。
金融機関は、すべて破綻するリスクを背負っています。
だからこそ、金融機関は自社の財務状態を周知させ、契約者(預金者)に安心してもらうために、格付会社にお金を払って格付を取得しているのです。
で、生命保険会社と一口言っても、その財務状態はピンからキリまでありますし、銀行も、その財務状態はピンからキリまであります。
ただし、格付(例として、S&P)だけで言えば、都銀の上位行(A−)より生保の上位(AA+)の格付の方が、良い格付であることが分かります。
確かに、生命保険会社が破綻した場合、契約者に被害がないとは言えません。
だからこそ、格付が良い生命保険会社を選択する必要がある訳で、それを破綻する可能性が、どんな生命保険会社にも同じ確率で存在するかのような記述は、いかがなものでしょうか。

以上、”今から保険に入るなら、絶対に掛け捨てを選ぶべき!”の根拠である3つの理由すべてが、妥当性を欠いた、「結論ありき」の根拠であることがお分かりいただけると思います。

結びとして、プロと素人の違いについて。

●素人は、”単純”と”シンプル”を勘違いしている(単純とは、目先の善し悪しに左右されること)。
 あるいは、逆に仕組みを”複雑”にしたがる(保険を知らないFP資格の所持者に多いのですが)。
 → 短期間でプランの有効性がなくなる

●プロは、仕組みを”シンプル”に考える。
 その根拠には”深み”がある(目先のメリットではなく、将来のメリットを十分考慮すること)。
 → プランの有効性が長期間持続する

ついでに、もう一つ。
掛け捨てという言い方ですが、死亡保障と入院保障とで、きちんと区別しなければいけません。
●死亡=人間は、必ず死亡します。
●入院=人間は、死ぬまで必ず何日入院するとは決まっていません。

つまり、入院の保障は、そもそも保険料が「掛け捨て」になる可能性が高く、「終身」であっても、死ぬまでにたくさん(通常は200〜300日くらい)入院しない限り、保険料の元は取れません。
一方、死亡の保障は、何歳で死亡するかは分かりませんが、「終身」の死亡保障であれば、必ず保険金を受け取れ、通常は払った保険料より多い保険金額を、ご遺族が受け取ることができます(掛け捨てにはならない)。
この点からも、”今から保険に入るなら、絶対に掛け捨てを選ぶべき!”とはいえないことが、ご理解いただけるでしょう。

とりあえず、気になった項目から検討してみました。


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