「医療保険」と「ガン保険」 選択の基準は? |
ここに来て、また医療保険、ガン保険の新商品が、いろいろ発売されています。
でも、このサイトで何度も繰り返しているように、「新商品だから、安くなって良くなっているはずだ」というのは、あくまでも思いこみ(幻想)でしかありません(そう思ってもらうため、TV−CMやパンフレットは、作られています)。
実際には、「安くなったように見えるように」「良くなったように見えるように」、それまでの商品にメリットとデメリットを付け加えただけです。
ただ、どの会社でも、わざわざパンフレットに「この商品のデメリット」なんてことを記載するわけがない、という常識をなぜか皆さんは、生命保険の選択の時にだけ、忘れてしまうようで。
また、「皆さんのニーズに合致した」といったフレーズもよく見かけますが、皆さんの欲張りなニーズに合致させるために、必ず犠牲にされたメリットがあるはずなのです。
でも、やはり、「今まであった、このメリットは犠牲にしました」なんてことは、もちろんパンフレットを見ても書いてありません。
で、「せっかく加入するのなら」と欲張りな気持ちになることは仕方ないと思いますが、医療保険、ガン保険に、今から加入する場合(すでに加入している場合は、この限りではありません)、「あれもこれも」ではない、このポイントだけ押さえておけば、十分と考えられる基準を考えてみました(ある意味、これ以上は欲張らなくても良い、ということになるでしょうか)。
もちろん、「あれもこれも付いて」、「お祝い金もでて」(お祝い金では、保険料の元は取れません)、「掛け捨てでは無い」(「掛け捨てでは無い」このフレーズも生保によって基準が全く違いますが、払った保険料の総額と同額以上が戻ってこない限りは、原則として掛け捨てです)、「健康なら保険料が安くなる」なんてことに、基準は置いていません。
仕組みが複雑になればなるほど、本来の「入院したときに差額ベッド代で困らないように」という医療保険の目的から外れかねませんし、「思い通りにいかない人生だから保険に加入する」としたら、加入した保険が「プラン通りに役に立つ」なんてことも簡単にいかないでしょう(人間とは不思議な生き物で、仕組みが複雑になればなるほど、一番うまくいった場合のみを想定して、「お得」と勘違いしてしまう生き物なのです。そして、うまくいかなかったときに、ようやく「うまい話ってないんだなあ」と気が付くのです。が、今度はその失敗分を取り返そうとして、またうまい話に飛びつく、そんな人もいますから、注意が必要です)。
であれば、まずはシンプルなプランで保障を確保した方が、外れが少ないといえるでしょう。
シンプルという点から言えば、これから加入しようとする医療保険やガン保険の場合、通常は「契約内容の一部変更権」(「給付金の支払いについて、被保険者の数が予定より著しく増加するなどで特に必要と認めた場合には、主務官庁の認可を得て、将来に向かって保険契約の保険料率を変更することがあります」といった内容です)を約款で謳っています。
保険契約を維持するために、保険料のアップや保障額の削減を行う場合があるというシステムを予め設定することはことは、必ずしもマイナスと言うことで無いと思います(むしろ良心的であるともいえます)が、仕組みが複雑であればあるほど(うまくいけば保険料の負担が軽くなるとか、保険料がb他社より著しく安く見えるように設定されているとか、入院の通算日数などが著しく長く設定されているとか)、その「契約内容の一部変更権」がリスクとして、給付内容に大きく影響してしまう可能性が高くなるように思われます。
この「契約内容の一部変更権」を使っての内容変更かどうかは分かりませんが、つい最近でも、発売してすぐに、保障内容を引き下げに直結するような変更を実施した医療保険の例が、実際に発生しています。
「契約したからこのままで保障内容は変わらない」といえないのであれば、やはり生保の財務内容(格付やソルベンシー・マージン比率)のチェックが非常に重要になってくるでしょうし、あまりうまい話に見えるプランや商品は、やはり鵜呑みにできないということになるのではないでしょうか。
もう一つ。
医療保険にガンや三大疾病の保障を上乗せしたり、ガン保険に病気やケガの入院保障を上乗せした商品がありますが、これは「1+1=2」なのに保険料は割安、なんてことではありません(ようは、1+1に見えるだけで、保険料の水準が1.5なら、保障も0.8+0.7でしかありません)。
医療保険にガンや三大疾病を上乗せした場合、ガンは上皮内がんを含まないと考えられますが、本当にガンが心配なら、医療保険と別に、上皮内がんに対応するガン保険に加入すべきでしょう。
保険でも、「二兎を追うもの一兎をも得ず」です。
せっかく加入するんだから、入院の保障もガンの保障もほしい、その気持ちは分かりますが、保険料負担の制約からどちらも半端な形になるくらいであれば、きちんとした医療保険と貯金で良いのではないでしょうか。
<医療保険>
- 貯金ができるような保険料負担で(貯金があってこそ、終身医療保険は、老後に役に立ちます)
- 貯金ができないから、保険料を払って保険ですべてを何とかしたい、これは無理です。
- あるいは、終身保険の解約返戻金を「老後に活用できる貯金」と考えることは可能でしょう(ただし、終身険も払った保険料以上の解約返戻金が確定していて、無配当でないものを選択すべきでしょう)
- 保険期間は、「終身」あるいは「平均寿命まで」
- というか、医療保険の場合、「終身」しかない、というのが現状でしょうが、欲張らなければ「平均寿命まで」でもいいかと思います(選択が可能な生保もあります)
- 差額ベッド代(健康保険でカバーできないもの)で困らないような日額(5000円〜1万円)で
- もちろん、給付金だけですべてを賄おうとするのではなく、保険と貯金で賄えるように
- 1入院の上限は120日で
- 通算日数は、700日でも可(老後に役立てたいなら、通算日数に拘るより、1入院の上限に拘るべき)。
- 通算日数が多くすることで安心感が増すようにも思えるが、それで保険料の負担が増えるなら700日以上で十分。
- 実際は、終身の医療保険でも保険料の総額以上に入院給付を受け取ることは簡単ではありません(保険会社が商品として販売している訳ですから、当たり前ですが)
- 「日帰り」か「1泊2日」の入院から対象となるものを
- ただし、短期入院の給付金請求の際、診断書が不要であること(給付金より、診断書代の方が高いことがあり)
- 保険料の払込は、できれば「60歳払」で、最悪でも「65歳払」ですべて払い終わるように
- 「終身払」は、保険料の負担を軽く見せるため妥協した形であって、いくら少額な負担でも、まずは「歳払」に拘るべき
- 平均余命まで生きたときの保険料の総額まで考える人は、なかなかいませんから
- 入院と手術の保障がきちんと確保できれば、医療保険としては十分
- 医療保険の死亡保険金や解約返戻金にはこだわらない
- 医療保険への加入は、生きているうちの入院に役に立つことです。
- したがって、わざわざ負担を重くしてまで、死亡保険金(終身保険や貯金で準備すべき)や解約返戻金(解約返戻金は生きているうちに活用できてこそ意味がありますが、医療保険の解約返戻金は死亡時か、生存中の解約時にしか受け取れませんので、「生きているうちに活用できるお金」とはいえません)にこだわる必要性はありません。
- むしろ、それにこだわる医療保険のトークは、「生きているうちに」ではなく、「死んでから」にポイントを置いたトークでしかありません
<ガン保険>
- 貯金ができるような保険料負担で(貯金があってこそ、ガン保険は、老後に役に立ちます)
- 貯金ができないから、保険料を払って保険ですべてを何とかしたい、これは無理です。
- 言葉を換えれば、ガン保険に入っていれば何とかなる、とは言えません。
- 上皮内がんでも同じように給付される(今から加入するなら「どんなガンでもOK」というガン保険を選ぶ)
- 「上皮内がん」に対応していたとしても、給付の額(診断給付金など)が同額でなく、減額されるものがあります
- 再発に対応できるように、「診断給付金」が1回限りでないもの(できれば「何度でも」)
- 診断給付金は、とくに記載がない場合は、1回のみしか給付されません
- 老後になっても保障が変わらないもの
- 例えば、65歳になると診断給付金が半額になるなど、老後になると保障額が減るものがあります
- 保険料の払込は、できれば「60歳払」で、最悪でも「65歳払」で
- 「終身払」は、保険料の負担を軽く見せるため妥協した形であって、いくら少額な負担でも、まずは「歳払」に拘るべき平均余命まで生きたときの保険料の総額まで考える人は、なかなかいませんから
- 必要な保障は、
- 入院給付日額 1万円(どんなガンでも、1日目から無制限で給付される)
- 診断給付金 100万円(どんなガンでも、しかも再発でも、何回でも同額給付される)
- 手術給付金 10,20,40万円(どんなガンでも、入院しない手術でも給付される)
これがあれば十分
死亡保険金は、ガン保険以外の保険プランで確保すべき(保険料をダブって払うことにもなりかねません)また、現在のガン治療から考えた場合でも、これまでのガン保険(皆さんがガン保険だと思いこんでいるもの)は、古いガン治療にそった内容のものであり、十分に対応できていないと考えられます。
- 早期発見
- 健康診断などの精度がアップしたことで、初期の段階でがんが発見されるケースが多くなった
- したがって、上皮内がんで給付が受けられなかったり、同額の保障を受けられないガン保険は、×
- 早期治療
- 軽度のがんで発見される可能性が高くなったことで、入院が長引かないケースが多くなった(もともと、がんの入院は、一般の成人病よりも入院が長引かないからこそ、ガン保険だけ入院給付が「1日目〜無制限」だった訳ですが)
- また、健康保険制度も、入院の短縮化の方向で、見直しが行われている
- つまり、入院給付金で治療費を賄うという発想は難しくなっている
- 抗ガン剤治療も入院ではなく、通院による治療が中心となってきている
- がん保険の役割が、入院給付金やガン死亡保険金から、診断給付金へ移行してきている
- 高齢化
- 高齢化により、死亡するまでに、何度も初期段階のがんを再発するケースが多くなることが考えられる
- したがって、何度でも診断給付金(上皮内がんでも同額給付)が、受け取れるがん保険が有効(ただし、「複数回」というのは回数が2回とか3回に限定されているため、「何度でもではないことに注意が必要)
- また、65歳以降で診断給付金が半額になるなどといったガン保険は、高齢化に逆行しているため×
●医療保険、ガン保険は、生命保険の土台ではない
最後に、肝心なことを。
そもそも医療保険やガン保険は、生命保険の土台にはなり得ません。
車にたとえるなら、車自体は「終身保険=生きているうちに現金として使える」であって、医療保険やガン保険は所詮、車体の色やオーディオ、カーナビ程度の役割でしかありません。
医療保険、ガン保険を一生懸命に検討される方に限って、「死ななくても使える保険=生きているうちに使える保険」という基準で医療保険、ガン保険を重要視しているように感じますが、「死ななくても使えることは嘘でない」にしても、「入院しなければ」「ガンにならなければ」使えないと言うことや、あるいは何日以上入院しないと払った保険料を回収できないといった掛け捨て保険料の発生、といったことを考えると、「病気になったから」「老後になったから」必ず使えるわけではない、この点をもっと十分検討した方がいいのではないでしょうか。
医療保険、ガン保険を充実させても、老後に病気になったとき、それだけですべてができるなんてことはありません(将来のインフレの影響による、保障額の陳腐化も考えられますし)。
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