簡易保険 “7つのバリュー”への疑問


TV−CMや新聞広告というと、つい某外資系生保が2社ほど思い浮かべてしまいがちですが、今回は、簡易保険の宣伝・広告で盛んに強調している“バリュー”について、本当に“バリュー”というほど差があるのか、検証してみます。

今回の検証は、実際に8月中に全国紙に掲載された簡易保険「ながいきくん(バランス型)」(簡保版の定期付終身保険)の全面広告を基にしてあります。
「終身保険に詳しくなるほど、この保険のよさに気づくはず」というコピーや、「保険のバリューは、生活の価値」という謳い文句が、いかにプランの内容を反映していないか、考えてみましょう。


バリュー1「フリー」
保険料を払い終える年齢を60歳、65歳、70歳から選べ、それ以降の払込はありません。

→ これって民間の生命保険でも当たり前のことですよね。
おそらく、入院特約の保険料も払込を終えることができることを強調したいのでしょうが、それすらも可能な民間生保はたくさんあります。
むしろ、払込年齢を3パターンからしか選べないとしたら、それは本当に“フリー”といえるのでしょうか。
民間生保なら、払込年齢を1歳刻み(例えば61歳でも、62歳でも)で設計できるところもありますが。


バリュー2「エンドレス」
特約の入院保障は、生涯そのまま。

→ “エンドレス”という言い回しは非常に問題があると思います。
嘘は言っていないけれど、契約者に対して、内容を誤解するように誘導しているからです。
その点では、“一生涯”といってやはり誤解を助長させている、外資系の終身医療保険よりも、さらに悪質だとも言えるでしょう。
というのは、厳密にいえば、簡保の入院保障は「エンドレスではない」からです(大辞泉では、“エンドレス”を「終わりのないさま。無限」としています)。
1入院の上限日数(120日)にも、通算日数(「特約保険金」の金額が『支払限度額』となるため、その限度額まで入院給付を受け取ると、それ以降、入院給付はなくなる)にも、民間生保と同様の制限があるからです(つまり、無限に給付金が受け取れるわけではありません)。
したがって、皆さんが“エンドレス”と聞いてイメージする「一度入院したら、死ぬまで入院し続けても、入院給付金が一生もらい続けられる」というイメージは、大間違いなのです。

では、何で“エンドレス”って、TV−CMや新聞で宣伝・広告しているのでしょうか。
おそらく、こんなやりとりで、“エンドレス”という表現になったと思うのですが、どうでしょう。
●入院特約が、「“終身(=“年齢による終わりがない”こと)」ってアピールしたいよね。
●だったら、“終身”を、“一生涯”って言い換えてみた方が、わかりやすいでしょう?
●それなら、“エンドレス”の方が、もっとインパクトがあるよ
でも、お分かりのように、“終身”と“エンドレス"は、少なくとも医療保険や入院特約においては、イコールではありませんから、本来であれば、終身の入院特約を“エンドレス”といってはいけないはずなのですが。


バリュー3「フィット」
老年期の保障を抑え、働き盛りの保障を大きくできます。

→ これって、民間生保で当たり前の、いわゆる「定期付終身保険」のことですよね。
つまり、“早死にしないと損”なプランを、言い換えると、上記のような“きれい事”になるわけです。
まず、保険プランは“長きして良かったと言える”プランにしないと、ほとんどの人は、「保険料を払ったなりに、老後に役に立つ」ことはないでしょう。


バリュー4「シンプル」
ご加入時に、医師による診査は必要ありません。

→ 簡保の死亡保障の上限は1000万円ですが、民間生保でも、1000万円程度の死亡保障であれば、医師による診査ではなく「告知書」で加入できます。
つまり、“簡保だからできること”では、決してありません。


バリュー5「オープン」
どんな職業の方でも、ご加入いただけます。

→ 一見するとメリットのような気がしますが、このメリットを享受できるのは、民間生保に加入できない、とび職、軽業師、格闘家といった、非常に危険な職業や趣味をお持ちの方に限られます。
というのは、本来は保険料に差を付けなければいけない、非常に危険な職業や趣味をお持ちの方の割増保険料を、一般の方が負担しなければいけないからです。
したがって、条件を同じにして比較すれば、簡保の保険料の方が、割高となってしまいます(割高の理由には、それ以外の要素も含まれますが)。


バリュー6「スピード」
保険金は、全国の郵便局で、原則すぐお支払いします。

→ 「原則」がくせ者です。
なぜかというと、ご近所の小さな郵便局の場合、急な保険金支払いに足りるだけの現金を常時準備していることが、少ないからです。
郵便局強盗の被害額が、銀行強盗の被害額より、一桁少ないのには、そのような訳があるのです。

また、すぐに支払うということで、保険金詐欺などに対する対応が甘くなる可能性もある(つまり、顧客の保険料が、本来は支払うべきでない給付金に使われてしまう恐れが高くなる)ため、すぐに払うことがメリットとまでは、いえないでしょう。


バリュー7「アシスト」
入院保障は、1日最高15,000円。

→ まず、入院の保障を日額15,000円にするには、死亡保険金額を1,000万円にしなければいけません。
なぜなら、死亡保障の金額によって、入院保障の日額に制限があるからなのです。
したがって、100万円の終身保険の場合、入院の保障は日額1,500円でしかありません。
でも、終身保険のみで1,000万円にするためには、保険料の負担がとても重くなってしまいます。。
そこで、「バランス型」の登場となったわけです。
100万円の終身保険に、掛け捨ての死亡保障(保険期間は、保険料の払込期間まで)を900万円プラスして、死亡保障の総額を1,000万円にすることで、入院の保障を日額15,000円にできるわけです。
でも、これって民間生保の「定期付終身保険」でしかありません。
それも、1,000万円が上限という、非常に死亡保障額が中途半端な。

そのうえ、比較すれば分かることですが、簡保の入院特約は非常に割高です。
という意味でも、とても簡保にしかないメリットとは言えないでしょう。



さあ、いかがだったでしょうか。
簡保の宣伝・広告がいう“バリュー”をお感じになれましたでしょうか。
7つあるバリューのうち民間生保でできないことで、一般の方が享受できるメリットはいくつありましたか。

ところで、何でこんな宣伝・広告がまかり通るのでしょうか。
それは、一言でいえば、簡易保険は保険業法の対象外であり、金融庁の認可も監督も受けていないから、ということにつきると思います。

また、セールスに関していえば、おそらく現時点で一番、きついノルマに追われ、いらない保障を売っているのが、簡保のセールスだと思います(あくまで、私見ですが)。
もっとも、国家公務員並の待遇の上に、歩合給も加算あれるわけですから、ノルマがきついのは、生保のおばちゃんにいわせれば当たり前のことでしょうが。

簡保だから、簡保にしかできない、と思いこまされる前に、同じ条件設定で、民間生保のプランともきちんと比較してみましょう(もっとも、生保のおばちゃんに相談すると、それはそれで、また面倒なことになるでしょうが)。

 


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