共済の基本的な考え方
(2003.04.11 補足)


雑誌などのQ&Aコーナーに「保障は掛け捨ての共済で十分」という紋切り型のアドバイスをよく見かけますが、鵜呑みにしてはいけません(FPだからといって、生命保険に詳しいと言うことはありません。社会保険労務士の方が年金について以外と知らないのと同じです)。
ここでは、共済(都民・県民共済、こくみん共済、コープ共済のことです。JA共済や、こくみん共済を除く全労済は、金融庁の監督下にはありませんが、商品性はいわゆる民間の生保と同じですから、ここで触れている共済とは異なるものとお考えください)の前提を理解していない読者の方が誤解をしがちなポイントを上げてみました。
決して誹謗中傷をしているわけではありません(私も加入しているのですから)。
ただし、共済を勧める方の意見や共済の広告・チラシなどを見ても、十分にデメリットが分かるような内容には残念ながらつくられていません。
その不足を補うために、共済のポイントについて、私なりの考え方をまとめてみました。


1 助け合う仲間の違い

生命保険も共済も「助け合い」(万人は一人のために)であることに違いはありません。
ただし、生命保険が性別、年齢や健康状態によって仲間分けされ、その仲間で保険料が違うのに対して、共済は一律の掛け金となっています。
したがって、生命保険は同じ仲間同士の助け合いであるのに対して、共済はリスクの低い人がリスクの高い人を助ける形となっており、簡単に言えば若い人が老人を助けている形となっていると考えられます。

冷静に考えると、人間は毎年1歳ずつ年を取りますから、共済の加入者の平均年齢も高くなります(実際は、加入年齢の上限がありますが)。
そのため、その分だけ若い人の加入を促進しないと、全体のリスクが高くなってしまうことが予想できます。
言い方を替えると、リスクの高い人のためにリスクの低い人をどんどん加入させないと、共済という制度は成り立たなくなってしまいます。したがって、高齢者の保障については、さすがに一律掛け金では若い人が加入しませんから、別立てにしているわけです。

このような概念の違いは、生命保険が「保険料」と言うのに対して、共済が「掛け金」(頼母子講が原点です)という点からも分かります。
また、共済の申し込みが「口数」(性別、年齢などで掛け金額に差をつけないため、口数で保障額を調節する)であるのも、掛け金だからで、あくまでも世代間の助け合いであることを表しています。

もう一つ共済と生保の大きな違いなのですが、死亡保険金の保険金受取人を、共済は指定できないという点があげられます。
つまり、共済金の受取順位はあらかじめ決まっているのです(参考:都民共済)。
第1位 加入者の配偶者
第2位 加入者と同一世帯に属する加入者の子
第3位 同孫
第4位 同父母
第5位 同祖父母
第6位 同兄弟姉妹
第7位 前記に該当しない加入者の子
第8位 同孫
第9位 同父母
第10位 同祖父母
第11位 同兄弟姉妹
したがって、死亡保険金を順位に低い人へ渡したいと思っている場合、あるいは特定の子へ渡したいと思っている場合など、共済が役に立たないか、非常に使い勝手が悪いことになってしまいます。

2 広告の揚げ足をとってみました

全労済の「新こくみん共済」の新聞広告(一面もの)をベースに、その謳い文句に文句を言ってみます(保険だろうが共済だろうが、「メリットとデメリットは背中合わせ」というのは共通しています。それを具体的に解説したわけです)。

● 小さな掛け金、大きな安心
これはウソではありませんが、言葉が足りません(また、厳密に言うと、この二つはイコールにはなりえません。どちらかが必ず欠けるからこそ、イコールのように見えるのです)。
大きな安心と言うからには、何に対しての大きな安心なのかを明言しなければいけないはずです。
保障額がたとえ掛け金に対して大きいとしても、もう一つの指標である「保険期間」についてはきちんと記載がされていません(人間が死んだり入院したりするのは60歳に以降が圧倒的です)。
通常、共済の場合、65歳までが保険期間となりますから、平均寿命が男性でも77歳になった現在、保険期間は絶対的に不足しています(他のコースはありますが、保障内容は減額されてしまいます)。
この点を考えると「大きな安心」と記載するのは、言い過ぎでしょう。

● ムダなく、かしこく
まず、保険商品では、みんながみんな「ムダ」をなくすことはできません。
これは、当たり前のことで、誰かのために自分の掛け金(保険料)が役に立ち、その確率が低いから「小さな掛け金」で済むわけです。
したがって、この文言は家計の無駄を指しているのでしょうが、実は共済にも無駄があります。
以前から指摘されている点ですが、生命共済と言いながら、傷害保険に該当する保障がセットにされているため、例えば他で傷害保険に加入している人や障害の保障がいらない人にとっては、これに充てられている掛け金は「ムダ」になってしまいます。
さらに、この文言では生命保険は無駄な保険料が多くて、その生命保険を選んだ人は賢くない、というすり込みのニュアンスが盛り込まれています。
誘導尋問の一種とでも言いましょうか。
それこそ賢い人は、この程度のキャッチ・フレーズは見破れるはずですが。

● 交通事故や入院保障もばっちり
共済の場合、交通事故死→事故死→病死の順で、保険金額が少なくなります(交通事故死の保険金額が一番大きい)が、広告では必ず交通事故死が先頭に記載されているため、うっかりすると交通事故死より確率が高い病死の保険金額と同じと勘違いする恐れがあります。
入院についても同様です。
記載については、本当に顧客本位なら、病死を大きく書き、交通事故死・事故死は小さく、入院についても病気での入院を大きく記載すべきでしょう。
通院についても紛らわしいし。

● 家計の圧迫なし
不必要な保険料を払う必要はありませんが、必要なものに適切なコストを払うことは必要で、それは家計の圧迫とは言いません。
もちろん、今の生活を犠牲にして保険に加入する必要はありませんが、保険料(掛け金)が少なければ少ない方がいいとは言えません。
将来にかけて払うコストを考えたうえで、払うべきものは払っておくべきです。抽象的な話になってしまいましたが、要するに「利益を追求をしないから掛け金が安い」と「家計の圧迫なし」をリンクさせるのには無理があるのです。
「利益を追求しない」と言う文言は、公的なイメージを抱かせ、ある安心感を消費者に与えるようですが、公的なものが必ずしも合理的に運営されているとは限らないわけで、特殊法人問題などを見ても、むしろ公的なイメージを持たせたり利益を追求しないなどと謳う気持ちが分かりません(もちろん共済が合理的でないと言っているのではありませんが)。
また、言葉尻をとらえるなら、利益を追求しないと言うのも、利益を出さなくてもいいと言う風にも取られますから、これはコストを考えないで経営できると言っているようなものではないですか?(まあ杞憂なのでしょうが)

● 事業内容の情報公開、非営利団体だからこその共済商品だ
上記にも関わりがありますが、まず共済は厚生省の管轄となります。
金融の専門家である金融庁が管轄していても破綻する生保が出るというのに、厚生省が管轄していて大丈夫なのでしょうか(物事はこのように考えましょう)。
要は、本当に信頼のできる数値をきちんと公開できていれば問題ないのですが、情報公開していることが健全な経営内容であるとは限らない、と言うように考えるべきでしょう(生保会社は全社情報公開をしています)。
もう一つ、厚生省の管轄下にありますから、厚生省からの天下りなどはないのでしょうか。
そのような情報公開こそが価値があるような気がしますが(KSDにはならないでね)。

● 生命保険の中味をチェック
共済は、保険料に対する入院の保障が厚く、加入しやすいというメリットがあります(ただし、保険期間については厚いとは言えませんが)。
逆に言うと、モラル・ハザードの面では危険が大きいのではないでしょうか。
つまり、健康状態についても告知だけですし、悪意のある方なら加入してすぐにもとを取ろうと考えても不可能ではありません(きちんと、そういう悪意のある人を選別しようとすると、コストがかかり、共済掛け金のアップにつながるでしょう)。
今現在はこのような問題は発生していないのかもしれませんが、将来的には共済制度を揺るがすことにならないとも限りません。

最後にたとえを一つ(あくまでもイメージですが)
共済を自動車保険にたとえれば「自賠責」です。
「自賠責」だけで任意保険に加入しない人もいますが、より確かな安心のために「任意保険」に加入する人もたくさんいます。
したがって、共済だけでいい人もいれば、任意保険代わりに生命保険に加入する人がいるのは、当たり前のことです。




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