契約維持力ランキング

日経金融新聞 2007年5月31日付


5月31日付の「日経金融新聞」に、“主要生保18社の2007年3月期「契約維持力」ランキング”が掲載されましたので、そのご紹介です(ちなみに、バックナンバーは、日経で買えます。郵送もしてくれます)。

毎回、ランキングでは、様々なバイアスについてご説明していますので、今回は省略します(東洋経済「知らないと危ない保険の落とし穴」4月21日号についても、そもそも「その記事自体が危ない」訳で、余りにもお粗末な内容に、未だページアップが出来ていません)。
ただ、今回、項目の一つとなっている「解約・失効率」という基準も、生保の立場からすれば、それを良く見せることは難しくはありません。
単に、解約や失効がしにくい商品や商品の組み合わせを考えればいいからです。

解約・失効率でトップのプルデンシャルですが、ここのプランを見ると、基本的に入院は「特約」で付加されています。
そうすれば、保険料の払込が滞っても、自動振替という形で、主契約の解約返戻金の一部から、勝手に保険料が充当され、失効しにくいのです(充当された保険料は、契約者に対しての貸付となります)。

ところが、医療保険やがん(ガン)保険単品の場合ですと、商品自体が「保険料払込期間中の解約返戻金は0(ゼロ)」や「全期間が低解約返戻金で、解約返戻金が少ない」といった形で、保険料を安くするために自動振替が出来ない設計となっているものがほとんであるため、2ヶ月間保険料の引落ができないだけで、すぐに失効してしまいます。
医療保険やがん(ガン)保険が契約の中心である、アリコ、アフラック(アメリカンファミリー)は、「解約・失効率」では、それぞれ13位と14位であることが、いみじくもそれを物語っています。
したがって、解約・失効率を良く見せたいのなら、入院は「特約」を勧めた方が、圧倒的に有利となります。
ちなみに、ソニーや富国も、同様に、解約・失効率がよく見えるように、もちろん戦略的に商品を考えています。
その意味では、代理店(もともとは損保代理店)の「つきあい加入」(数ヶ月だけ加入してといったお願いセールス)や、医療保険やがん保険の単品の販売といった、解約・失効率ではマイナス要因の多い東京海上日動あんしんが、4位であることは、ある意味、不思議なくらいです。

もっとも、主契約の保険料が余分にかかるわけですから、アリコやアフラックを通販で選ぶ契約者には、プルデンシャルの勧めるプランの保険料は非常に高額に見えるでしょう。
そこがプルデンシャルの営業社員の腕です。
「愛の伝道師」と、業界で言われる由縁は、そこにあります。
家族愛を訴え(ようは生保のおばちゃんがやっていた義理・人情のアメリカ版です)、いらないもの(保障、保障額)まで、必要と思わせ(パソコンが小道具です)、保険料をたくさん払うことが家族への責任と勘違いさせるテクニックは、流石です。
そのマジックが解けない限りは、高い顧客満足度が維持できるわけです(保険料の払いがきつくなったときの「愛の伝道師」の説得トークには、私は同意できませんが)。

したがって、「解約・失効率が低い=顧客満足度が高い」とする方程式も、実際は、その通りではありません。
正しくは、「解約・失効率が低い=解約・失効を防ぐ戦略を持っている」です。

話が脱線してしまいましたが、このように、あるランキングをよく見せることは、その気になれば可能です。
それを知ってか知らずか、太鼓持ちのように、その営業社員を持ち上げる日経金融新聞の記者は、相変わらず生保の勉強をしていないようです。
「外資・新参組が上位」といったサブタイトルも、いかがなものでしょう。
すでに損保系生保も開業して10年以上、その規模も大手・中堅の中堅くらいには並ぶ現状を把握できていないのではないでしょうか(外資系といわれながら、すでに外資ではない生保もありますし)。

さて、前置きはこのくらいにして、お待ちかねの「契約維持力」ランキングです。
2007年3月期決算も、ご参考にどうぞ。
http://www4.plala.or.jp/anshin/2007_03_kessan.html
http://www4.plala.or.jp/anshin/soru_2007_03.html



総合順位
生保名
総合点
順位
保有契約年換算保険料の増減額
順位
保有契約数の増減率
順位
解約・失効率

東京海上日動あんしん

50

447

9.7

6.16

プルデンシャル

48

350

6.1

4.74

ソニー

47

304

7.8

5.79

アリコ

39

809

4.9

13
7.43

富国

36
12

▲26

0.9

5.93

アフラック

35

407

2.9

14
7.99

住友

33

367

▲0.5

12
7.33

朝日

32
14

▲106

0.9

6.21

ジブラルタ

32

246

12

▲1.3

6.26
10

第一

27
11

▲25

▲0.7

10
7.17
11

アクサ

25
13

▲31

12

▲1.3

6.45
12

三井

20
15

▲219

14

▲2.2

6.56
12

AIGエジソン

20

119

10

▲1.0

18
9.51
14

大同

19
10

75

11

▲1.2

17
9.04
15

日本

18
16

▲234

14

▲2.2

6.81
16

AIGスター

17

130

17

▲3.4

15
8.53
17

明治安田

12
18

▲549

16

▲2.8

11
7.23
18

太陽

17

▲323

18

▲5.5

16
8.55

日経金融新聞 2007年5月31日付の1面より(2006年3月期比、単位億円、%)
※内容については、最終的にご自分でご確認ください。表記ミスには責任を負えません。





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