終身保険の貯蓄としてのお役立ち度

ー生保本「生命保険はこうして選びなさい 必要な保険・いらない保険」の?ー


更新:2011/04/10 

今回は、最近出版された生保本「生命保険はこうして選びなさい 必要な保険・いらない保険」(ダイヤモンド社刊)の、私が気になった箇所について。
特に、P.67に掲載されている、「終身保険の貯蓄としてのお役立ち度」の試算の表の試算が、どう見ても非常にゲリマンダー(都合のいい結論になるように、条件を恣意的に設定すること)的な内容になっているとしか、私には思えないのです。
そこで、条件設定を実際的な内容に置き直して、再度試算をやり直してみたものが、下記の内容です。

まず、一番に上げられる?の点は、終身保険と一口で言っても、会社や商品によって、内容が大きく異なるという点です。
したがって、保険料の払込が終了した後の解約返戻金を重視した商品を選ぶことで、終身保険のお役立ち度が大きく変化してくると考えられるわけです。
それなのに(大手生保の終身保険からピックアップしたようですが)、わざわざ貯蓄として魅力のない役に立たない終身保険を選んだようにも見えかねません。
そのくせ、定期保険の方は、おそらく最も保険料の負担が軽い商品をピックアップしている点も、終身保険が良く見えないようにしようとする意図を感じざるを得ません。
であるなら、やはり解約返戻金が確定していて、おそらく最もキャッシュバリュー(解約返戻率=解約返戻金/払込保険料の累計額)が高いであろうと考えられる終身保険を選択して比較しなければ、わざと終身保険に魅力がないように見せるために、商品を選択したと誤解されるでしょう。
そもそも、払込保険料の累計額よりも、保険料の払込終了時の解約返戻金が少ない商品を終身保険の例として取り上げると言うことは、一方的な決めつけにすぎません。
きちんと商品を選択すれば、払込保険料の累計額(1)よりも、保険料の払込終了時の解約返戻金(2)が確定で(確定していないものもありますので注意が必要です)多い商品も、終身保険にはあるのです(ただし、それが終身保険の善し悪しをの決め手ということではありませんが)。

次に、条件設定としておかしい点に、預貯金の積み立て利率を、終身保険の予定利率と同じに設定している点です。
これは、この本のP.66の下段にも記載のあるとおり、「保険料がすべて運用に回るわけでない終身保険は」というとおり、生命保険の予定利率は、預貯金の金利とは全く違ったもので、生命保険の予定利率は、保険料の中から会社の経費などが差し引かれ後の金額が予定利率で運用されることになるわけですから、この予定利率と預貯金金利を同じに設定するのは、条件設定として、終身保険の方が著しく不利になるように設定をしているといわれても致し方ないと思います。
したがって、予定利率が1.65%である現時点での預貯金金利で運用するという設定にすべきでしょう(私は0.5%に設定して、試算しました)。
現に、30年間にわたって、年利率1.65%を保障する超長期の預貯金はありません。
そういうと、でも今後預貯金金利がアップすることも考えられるわけだから、それをあらかじめ加味しておくべきでは?という声が聞こえてきそうです。
であるとすれば、終身保険についても(この1.65%という予定利率は、5年ごと利差配当付の終身保険の予定利率であると推定できます)、預貯金金利がアップする金融環境の時には、終身保険にも配当金が付く(予定利率より一般勘定の運用が上回った場合、契約者に配当金として還元される)ということになるわけで、結果として、将来アップするであろう預貯金金利を織り込む場合には、終身保険にも配当金が付くであろうと推定して、その金額を上乗せしなければいけないことになるはずです。
つまり、下記表の(4)(7)(8)の金額が、30年のうちに、金融環境に基づいてアップする可能性があるということであるなら、下記表の(2)(3)の金額も同じようにアップしていくと考えられるはずです。

ということで、将来のことを織り込むのではなく、まず現時点で確定している数字で比較することが、最も偏らない比較になると考えられます(「配当はないものとして」といった条件設定をよく見かけますが、その場合、配当の機能を十分に認識していないことを意味しており、非常に終身保険に不利な比較となり、偏った比較といえます)。


30歳・男性
保険期間:終身
60歳払込終了
死亡保険金1000万円
終身保険の月払保険料
:17,560円
(アップなし)

終身保険の
払込保険料の累計額
(1)
終身保険の
生きて使えるお金
(解約返戻金)
(2)
終身保険の
死亡時に残せるお金
(3)

※途中で解約しない場合

貯蓄の元利金合計
(4)
((1)を年利率0.5%で運用した場合)

※非課税で1年複利
年齢
35歳

1,053,600

650,000

10,000,000

1,067,071

40歳

2,107,200

1,462,000

10,000,000

2,161,087

45歳

3,160,800

2,281,000

10,000,000

3,282,729

50歳

4,214,400

3,158,000

10,000,000

4,432,692

55歳

5,268,000

4,099,000

10,000,000

5,611,695

60歳

6,321,600

7,324,000

10,000,000

6,820,467

65歳

6,321,600

7,743,000

10,000,000

6,992,692

70歳

6,321,600

8,159,000

10,000,000

7,169,266

75歳

6,321,600

8,554,000

10,000,000

7,350,300

80歳

6,321,600

8,917,000

10,000,000

7,535,905


30歳・男性
60歳払込
保険期間:60歳
更新なし
死亡保険金1000万円
定期保険の月払保険料
:3,800円

定期保険の
払込保険料の累計額
(5)
終身保険の保険料(1)との差額
(6)
差額を貯蓄した場合
の元利金合計
(定期保険の生きて使えるお金)
(7)


※非課税で1年複利
定期保険の
死亡時に残せるお金
(8)
=1,000万円+(7)
年齢
35歳

228,000

825,600

836,092

10,836,092

40歳

456,000

1,651,200

1,692,824

11,692,824

45歳

684,200

2,476,800

2,570,196

12,570,196

50歳

912,400

3,302,400

3,468,208

13,468,208

55歳

1,140,400

4,128,000

4,386,860

14,386,860

60歳

1,368,400

4,953,600

5,326,152

5,326,152

65歳

1,368,400

4,953,600

5,460,644

5,460,644

70歳

1,368,400

4,953,600

5,598,532

5,598,532

75歳

1,368,400

4,953,600

5,739,903

5,739,903

80歳

1,368,400

4,953,600

5,884,843

5,884,843


この2つの表は、実際は生保本「生命保険はこうして選びなさい 必要な保険・いらない保険」(ダイヤモンド社刊)のP.67の表と比較しないと、どのように試算結果が異なっているかが分からないと思います。
ただし、生保本の方の結論は、「老後のためなら保険より貯蓄が有利」となっており、上記の2つの表と大きく結論が異なっている点に注目してください。

というのは、上記の2つの表から導き出される結論は、60歳の保険料払込が終了するまで(定期保険は保険期間が終了するまで)と限定した場合なら、定期保険を選択して、終身保険との差額を貯金していた方が、死亡時に残せるお金(8)も、生きて使えるお金(7)も、終身保険を選択した場合より有利であるといえます。
ところが、60歳になって、保険料の払込が終了してしまうと(定期保険は保険期間が終了し、保険料は掛け捨てになってします)、終身保険を選択した方が、死亡時に残せるお金(3)も、生きて使えるお金(2)も大きくなっていることが分かります。
つまり、定期保険を選択した場合、60歳までに死亡しないと損である(=早死にしないと損)、ということが分かると言うことです(一般的に皆さんが思っているとおりの結果といえます)。

また、終身保険と定期保険の保険料の差額を、設定のように預貯金することができればいいのですが、一般的に定期保険(掛け捨ての保険)を選ばれる場合の傾向として、保険料をとにかく安くあげて、浮いたお金は、その場のその場の生活費などに充当しようとするケースの方が多いように感じます。
であると、定期保険を選択した場合、60歳以降は(7)の預貯金が残っていないわけですから、保険料を安くした分だけ、老後の生活が非常に不安になるということがいえるのではないでしょうか。

さらに蛇足ではありますが、終身保険の60歳時の解約返戻金7,324,000円を、現在の預貯金利率である0.5%で、30年間かけて毎月貯金するとしたら(そもそも、この預貯金利率や非課税という設定自体、非常に預貯金に有利な条件設定なのですが)月の積立金額がいくら必要かと言うことを試算してみますと、18,896円(終身保険の月払保険料は17,560円で、しかも預貯金には積立金の元利金しか死亡保障になりませんが、終身保険の方は加入時から1000万円の死亡保障が確定しているといった大きな違いがあります)と試算できます。
結果として終身保険の保険料として払った方が、30年後に同じ金額を確保する場合(60歳までに早死にしない場合)、少ない資金で済むと言うことも分かるのです。




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