●●●●● 7月のトピックス(続) ●●●●●

   ++++「人生で2番目に高い買い物の本」を勧めない訳+++++++++++

今回は、誹謗中傷にならないように、書籍「人生で2番目に高い買い物の本」(マネーライフ編集部 編、主婦の友社 刊)について、感想を述べてみます。
タイトル的には、なかなかいいなあと思い買ったわけですが、端的に言えば、「著者名の明記されていないマネー本は信用しないこと」とこれまでも言われてきたように、まるで明治生命の宣伝かと思うような内容で、これで1,480円もとるとは、正直ふざけるなという内容でした。
あくまで内容からですが、明治生命の人が覆面で執筆しているか、それとも明治生命からお金をもらったFPが書いたか、まるで「明治生命の御用達本」です(明治生命でなければ、アカウント型商品を販売している、住友生命、朝日生命と置き換えても同じですが)。
きっと、明治と住友、朝日のセールス・レディー(いわゆる「おばちゃん」)が、「こういう本にも、アカウント型がいいって書いているわよ」といって配って歩く(とくに、ご近所の主婦相手に)のでしょうが、それで主婦の友社も売り上げが伸び、場合によっては明治と住友、朝日の研修資料としても使われるかもしれませんし、良い迷惑なのはお金を払って買った読者と言うことでしょうか。
で、何が問題かというと、ここに書いてあることは「セカンド・オピニオンの振りをした意見の押しつけ」である点が、生命保険を知らない方(とくにこの本では主婦がターゲットのようですが)には、見分けを付けにくいと言う点です。
では、具体的には次をご覧ください。

■ 保険が変わった?
第1章のタイトルが「保険が変わった」で、さらにアカウント型は「21世紀の4番打者」といってみたり、「アカウント型はカフェテリア」、「日本のジョーシキが変わってきた」、「自己責任の時代に即したアカウント型保険」と、アカウント型のアピールのオンパレードとなっています。
でも、これは売らんがための説明で、鵜呑みにしてはいけません。
いちいち反論するのも面倒なので、これまでの「今月のトピックス」をご覧ください。
一言付け加えるなら、生命保険は「商品」ではなく、その組み合わせである「設計」こそが重要であるということが、この本を読んでもきちんと読者が把握できない点は致命的です。

■ 手のひら返しの「定期付き終身バッシング」
「あなたは大丈夫?生命保険 大きな3つの落とし穴」という項目では、これまで皆さんが生命保険といわれて加入してきた「定期付き終身」プランのデメリットが列挙されています。
流れとしては、定期付き終身は×なので、アカウント型へ乗り換えを、ということなのでしょうが、実はここであげられている定期付き終身のデメリットは、アカウント型のデメリットでもあるのです。
つまり、「同じ穴のムジナ」と分からないように、一方的に定期付き終身を悪者していますが、実際に皆さんのところへやってくるアカウント型商品の設計書は定期付き終身の3つの落とし穴としてあげられている「突然なくなる高額(死亡)保障」「更新するたびに高くなる保険料」「転換という名の甘い罠」のすべてが分からないように盛り込まれています。
それは巻末のケーススタディーの設計例でも分かります。
保険料負担が軽く見えるのは、3つの落とし穴をすべて潜ませているからなのですが、ケーススタディーでいえば、それぞれの特約の満期が明記されていない点が非常に不明朗で、おそらくこれによって生命保険の質が「保険期間」であることを十分に認識されていない方は、簡単に誤魔化されてしまいます。
突然「更新」なんて言葉がでてきて、「2年前に更新を迎えて」なんて条件変更がひっそりと記載されていたりします。
介護特約が簡単に途中で付加できるようなことを設計で盛り込んでいますが、これも何歳まで有効な特約なのか明記しなければ、介護の保障として有効なのかどうか判断できません。

■ 生命保険の内容は保険料なり
この本は、まるでアカウント型にするとで生命保険料が安くなるような、あるいは保険料を合理的に使えるようなイメージで記述されていますが、それはあまりにも脳天気な意見です。
生命保険は設計次第であるということに加え、払った保険料なりの内容になる(にしかならない)、ということをきちんと認識されていないと、この手のおいしそうな話にはまってしまいます。
実際に、私は、定期付き終身を「転換」して、アカウント型の生命保険に乗り換えてしまった方を何人もコンサルティングしました。
いずれも、セールスの方が内容の説明きちんとできない上に、アカウント型に「転換」することのデメリットの説明も十分でなく、挙げ句の果てにFPを連れてきてメリットだけを説明するといった、保険業法300条に抵触するようないい加減なセールスだったようです。
で、私が拝見した限りでは、「定期付き終身のままの方がよかった」ということの方がはるかに多いのです。
しかし、こんな「御用達本」を売る出版社も、いい加減な生保のコマーシャルを流すTV局も、さらにメリットしかアピールしない広告を掲載する新聞社も、もう少し良識のある対応をしましょう。
そして、消費者は、その裏にあるデメリットをきちんと見分けられる目を養いましょう。

以上、まあ今回はこんなところで。