「最強の“保険力”徹底比較」(週刊東洋経済2006年4月22日号) −何でこの時期に独自ランキング?− |
ランキングというと、一般には、公正・中立・客観的というイメージがありますが・・・。
毎回、経済誌の独自ランキングについて、その公正性の維持の難しさに言及してきましたが、今回のランキングにも、残念ながら、いくつか理解に苦しむ点が見られました。
■時期
一つ目は、「時期」についてです。
あと1月もすれば17年度(18年3月末)の決算が出そろうというのに、なぜこの中途半端な時期に、それも中間決算(17年9月末)を元にランキングを発表しなければいけなかったのでしょうか。
非常に疑問を感じざるを得ません(企画が、なかったのか、それ以上に他の意図があるのか)。
■ランキングの項目建て
二つ目は、「ランキングの項目建て」です。
相変わらず、指標に継続性がないうえに、わざわざ成長力の指標に、一般的にはマイナーな保険料等収入伸び率を使うあたり、特別な意図を感じざるを得ません。
というのも、ランキングの順位が変なのです。
そこで、成長力の指標となっている「保険料等収入伸び率」ではなく、「年間算保険料の伸び率」に変えただけで、ランキングの上位が変わってくるのです(他の指標にも疑問はありますが、他の指標については、そのままで手を加えていません)。
<手直し後のランキング>
1.( 1)<A>[A+] ソニー
2.( 2)<A>[A+] 日本
3.( 6)<B>[AA−]アクサ
4.( 4)<A>[AA] アフラック
5.( 3)<A>[A−] 富国
6.(17)<D>[AA+]アリコ
7.(16)<D>[AA−]あんしん
8.( 9)<B>[A] 大同
9.( 8)<B>[A] 第一
10.(12)<C>[AA−]ひまわり
11.( 5)<A>[==] AIGスター
12.(11)<C>[AA+]マニュライフ
13.( 7)<B>[AA−]ジブラルタ
14.(13)<C>[AA−]アイエヌジー
15.(10)<B>[AA−]プルデンシャル
16.(15)<C>[A−] 明治安田
17.(22)<E>[AA+]AIGエジソン
18.(14)<C>[AA−]きらめき
19.(18)<D>[BBB]住友
20.(19)<D>[BB] 三井
21.(21)<E>[BB−]朝日
22.(25)<E>[A−] オリックス
23.(20)<D>[A] 太陽
24.(24)<E>[AA−]マスミューチュアル
25.(23)<E>[==] T&D
※( )内は、週刊東洋経済の独自ランキング順位
※< >内は、週刊東洋経済の独自格付け
※[ ]内は、S&Pの格付(AIGスターとT&Dは格付なし)
いかがでしょうか。
十番台の後半だった2社の順位が、10近くアップするのです。
何で、最初から「年間算保険料の伸び率」や「保有契約高の伸び率」を使わなかったのか、あるいは使いたくなかったのか、分かりませんが。
こうやって色分けしてみると、まるで意図的に、2社の「順位」と「本誌格付け」を悪くしたかったようにも見えますが。
話が脱線しました。
ようは、このように項目建てや指標が一つ違っただけで、順位や本誌格付けが大きく変動するということをご理解いただければ、徒にランキングをありがたがる必要がないことにお気づきいただけるのではないでしょうか。
■本誌格付け
それと、週刊東洋経済の独自格付け(本誌格付け)も、いかがなものでしょうか。
この格付けは、単に、上位5番までを「A」、10番までを「B」、15番までを「C」、20番までを「D」、25番までを「E」という、対象生保会社が25社でなければ困ってしまうような、お粗末な相対評価の格付けで、例えば、S&Pの格付のような絶対評価の格付けとは全く異なります。
あくまでお遊びとしてなら、笑って済ませられるでしょうが、この本誌格付けを、個別の商品の一覧表にも付記するのは、悪ふざけが過ぎるのではないでしょうか。
お勧め商品の一覧表に取り上げられても、この悪ふざけレベルの本誌格付けに目が行けば、DよりAの商品がよく見えるのは人情というものです。
逆に言えば、この本誌ランキングに「A」がつけば、他の商品よりも魅力的に見える訳ですから、せめて、本誌格付けとS&Pの格付けを併記すべきではなかったでしょうか(でないと、お手盛りな本誌格付けで、特定の生保を贔屓しているように誤解されかねません)。
■個別商品の5つの評価基準
四つ目は、個別商品の評価方法についてです。
医療保険、死亡保険、がん(ガン)保険、介護保険、個人年金、収入保障保険(この区分だけでも、編集者が生保を知らないことは十分に伝わってきますが)について、
1.コストパフォーマンス
2.保障内容
3.先進性
4.わかりやすさ
5.自在性
の5項目について、「保険に詳しいFP」3人が採点している訳ですが、この項目それぞれについて、本当に客観的な基準が存在すると思いますか。
私には、全く分かりません。
1.のコストパフォーマンスというのは、「ただ安ければいいという訳ではない」ということが言いたいのでしょうが、では安いうえに何がプラスされると、コストパフォーマンスが高いと言えるのでしょうか。
3.の先進性も、何を基準にしたらいいのか、新商品だから先進的というレベルではないのでしょうが、それにしても首を傾げざるを得ません。
かように、単に保険に詳しいらしい3人のFPが、その経験に基づく鋭い直感力で採点したのでしょうか。
むしろ、この5項目について客観的な基準がないことにも気がつかない、保険を売ることに詳しいFP3人が、いつも自分が取り扱っている(つまり、お勧めすることで自分たちにメリットがある)お気に入り商品を採点した結果に過ぎないのではなか、と勘ぐりたくないような、無意味な内容です。
■まとめ
さて、これも、経済誌の独自ランキングの度に書いていることですが、どのランキングも
●S&Pなど格付会社の格付
●ソルベンシー・マージン比率
を凌駕するものは見あたりません。
したがって、このレベルのランキングで、生保を選択するのは無意味です。
見方によっては、この種のランキングの上位に来るように決算を非常にうまく作っている生保もありますし。
それと、個別商品のお勧めについても、上位の商品に加入すれば「良いとこ取り」が出来ると思ったら、大間違いです。
単に、「うまい話に見える」商品(金融商品に「うまい話」はありません)をお勧めしているに過ぎません(下種の勘ぐりではありますが、そのうまいとこ取りを指南してくれる救世主であるかのように、いわゆる総合代理店の広告が、まるで記事一部のように、掲載されているのは、やはり一種の誘導なのでしょうね。そう考えると、個別商品のお勧めも、そういった代理店が売りやすくて、そのうえ手数料もたくさん入る商品に見えてきませんか)。
一例を挙げれば、がん保険です(突っ込みどころが多すぎて、いちいち指摘するのが面倒なもので)。
第一に、上皮内がんで給付されるかどうか、あるいは同額給付されるかどうか、十分な記載がありません。
これは、がん保険にとって、非常に重要な比較ポイントであるにもかかわらずです。
また、診断給付金の支払い回数について、1回または複数回としか区分されていませんが、これでは十分と言えません。
実際には、「複数回」と「何度でも」を分けなければいけないからです。
皆さんには、この違いが分かりますか?
複数回とは、2回とか3回とか、回数に制限がある場合を言います。
一方、何度でもの方は、回数に制限がない場合を言います。
にもかかわらず、生命保険について詳しくない編集者は、一緒くたにして「複数回」と表記してしまったわけです。
斯様に、生命保険のパンフレットを読みこなすことは難しいのです。
で、その読みこなしができないまま、いっぱしの分析をしてしまうとは、「知らぬは仏」とはよく言ったものです。
もっとも、このHPのネタになるわけですから、次回の「とんでもランキング」を皆さんとともに心待ちにしたいと思います。
ただ、これだけこのHPでランキングを批評しても、一向に編集姿勢が変わらないところを見ると、このHPの影響力の無さを痛感する次第です(でも、「生命保険」関連の用語ををネットで検索したら、このHPは結構ヒットすると思うのですが。想像以上に編集者は勉強したり下調べをしたりしないのでしょうね)。
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