蒼き騎士の伝説 第三巻 | ||||||||||
第二十四章 決戦(1) | ||||||||||
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思えば、あの瞬間に、自分の心は定まった。自分の進み行く道を、取るべき道を決めた。恩を義で返そうと、心に誓った。
「では、行くか」
騎士の一人が、そう声をかける。その友の姿に、ヴェッドウェルの脳裏はさらなる過去を映し出した。
まだ若く、功を立てるのに躍起となっていた頃。その焦りが判断を誤らせ、敵地に取り残されるという危機を招いた。その時、自らの命を顧みず、助けに来てくれたのが彼らだ。そしてそのことが、未来を大きく変えた。
戦いが終わり、ヴェッドウェル達はシュベルツ城に呼び出された。七人の勇者と一人の愚か者の話は、若き王の耳にまで入っていたのだ。王はみなを並べ、騎士として最高の栄誉である、蒼き鎧を与えた。
勇者は分かる。その功績は鎧に相応しい。しかし、愚か者にまで鎧を与えるのはいかがなものか? 誰に言われるまでもなく、何よりその愚か者自身がそう思った。
「仮に」
即位したばかりの王は、まだ少年の面影を残す細い顎に手を宛がいながら、淡い紅色の唇を動かした。
「私がこの身分を持たず、また、大した功も上げたことのない一兵卒の身であったとして。そなたと同じように、敵地に取り残された時、果たして何人の者が、私を助けにきてくれるであろうか。己の命も顧みず、生か死か、定かではない友を探しに、敵の真っ只中へ馳せ参じる者が」
蒼い瞳が、ヴェッドウェルを捉える。
「そなたには、そういう友がいる。そういう友を持つ器量が、そなたにはある」
少年王は微笑した。その姿が、滲んでヴェッドウェルの瞳に映る。
「ヴェッドウェル?」
問い掛けるような友の声に、ヴェッドウェルは過去から舞い戻った。
「うむ」
と返事をする。手綱を引き寄せ、馬にまたがる。
王に対する忠誠は、今も変わらない。あの時賜りし言葉は、なお、心の中で光り輝いている。いかなる理由があったのかは分からぬが、ロンバード殿は逃げた。レンツァ公もそうだ。その点、ドレファス将軍は賞賛に値するが、軍を率いて王都に攻め込むのは、多大な兵と民の命を犠牲にして己を保全するようで見苦しい。
ヴェッドウェルは、馬上の騎士達を見やった。言葉はもう、必要なかった。
軽く、馬の首筋を撫でる。それだけで愛馬は事の次第を察し、駆け出した。七頭の馬が、その後に続く。朝靄の中を、突っ切る。まっしぐらに、王都ブルクウェルを目指して。
誰かが止めなければならぬのなら、私が止める。失うことは、怖くない。たとえ、この命を捨てようとも、私は王に、あの清とした蒼い瞳の王に、最後の忠義を尽くす。
ヴェッドウェルの唇から、決意の声が漏れ出る。
「王よ、直ぐに参ります。このヴェッドウェル、今、アルフリート様をお救いに参ります」