■ 第三巻
キーナス国は、フィシュメル国に向かって大軍を差し向けた。
しかし偽王は、王都の軍に守られたままそこにいる。
偽王の正体を暴くことなく、この戦争を止めることは難しいと判断したシオは、王都への奇襲を計画する。
まず、自身はフィシュメル国に赴き、ウルリク妃の手紙を武器に、この争いをぎりぎりまで引き伸ばす作戦を取る。
その間に、隣接するもう一つの国、オルモントールとの国境を守る兵を、アルフリート王に率いてもらう。
しかしこの軍は、王都を守る兵士達をおびき寄せるための陽動であった。
奇襲はユーリ達に任されることとなった。
ユーリ達はシオの指示に従い、奇襲作戦を成功させるため、雪山に住むスルフィーオ族を訪ねることとなった。
別名、ブルードラゴンと呼ばれるその一族の力があれば、空から攻めることが可能となるのだ。
しかしその途中、ユーリ達は雪崩に遭い、不思議な洞窟へと迷い込む。
そして、そこで……。
水晶のような岩の中に、一人の少女の姿があった。
ユーリが触れると同時に、岩が砕ける。
光の欠片の中で、少女がゆっくりと目を開ける。
風がそよぎ、髪が流れ、そして先の方だけ、ほんの少し尖った耳が……。
少女はエルフィンであった。
しかし彼女の意識は散漫で、何かを問い質せる状態ではなかった。
仕方なく、ユーリ達は彼女をスルフィーオ族の村に残し、まずはガーダの陰謀を阻止すべく、王都に向かった。
王都への奇襲は成功した。
王城への潜入。
そして、ガーダとの対決。
魔力を駆使するガーダに苦戦するが、スルフィーオ族の持つ特別な力の助けもあって、ユーリ達は見事、敵を倒した。
しかし……。
その時、王都とは別の場所で、悲劇が起っていた。
スルフィーオ族の村が、全滅したのだ。
悪しき心を持ったガーダは、他にもいた。
そのガーダが、村を滅ぼした。
エルフィンの娘を狙って。
その昔、エルフィンが封印したと言われる、破壊神を復活させるために。
息絶える寸前、そう告げたガーダに、ユーリ達は愕然とした。
哀しみを伴う、敗北を伴う、勝利を噛み締める。
そして決断する。
何としても、破壊神の復活を阻止する。
そのために、西に逃れたという、もう一人の悪しき者を追う。
ユーリ達の新たな旅が、また始まった。