「あなたの妹さんは悲しんでるわ!」
私が叫ぶと、私の頭上でサングラスは鋭く反応した。
「貴様……妹と話をしたのか?」
サングラスがナイフを下ろす。
僚は銃を構えたままだが、全身の震えはいつしか止まり、目はしっかり私たちを見ている……。
「したわ。私の仲間で英語が堪能な女の子が彼女に話しかけて、すべてを聞いたの。……泣いていたわ。あなたたちのことを思うと胸が痛むって」
「何だと……」
サングラスの口調から、敵意が消える……。
「私は日本人だから、あなたたちの気持ちはわからない。同情するようなことは失礼だからしたくない。でも……少なくとも妹さんは、こんな形での復讐や解決は望んでいなかったのよ。あなたは、どうしてそれをわかってあげなかったの?」
言いながら、私は泣きそうになっていた。
兄弟姉妹のいない私には兄弟愛はわからない。さらに言えば家族愛さえ知らない。同情しないというのは言葉にした通りだ。でも、それでも……なぜか私は泣きたくてたまらなかった……。
「……もう、遅い……」
サングラスは、不意に悲しげな声をもらした。
「優しいお嬢ちゃん、その言葉には感謝する。だが……過去は変えられない。それに気付けなかった俺だからこそ、こんな騒ぎを起こしちまった。そして俺には、かわいい妹や弟に合わせる顔も、降伏するだけのプライドも勇気も何もない……」
……?
心のどこかが、警報のブザーを鳴らしていた。だが、私にはそれがどこから来るものなのかわからなかった。
――そして。
「あばよ」
……!
突然、私は僚の方へ突き飛ばされた。
僚は構えていた銃を投げ捨て、私を抱き止めてくれた。
が――。
「よせ! やめろ――っ!!」
僚の叫びとともに、私の背中に何かが大量に降りかかった――。
まさか……まさか!
「真奈! 振り返るな!」
僚が私の頭を抱え、動かないように押さえつける。
……鉄に似た匂いが、鼻についた。
同時に、今さらながら玄関から警官隊が飛び込んでくる。
「なんてこった……」
なぜ……。
なぜ、こんな方法しか選べなかったの?
残された妹さんや弟さんたちがどんな気持ちになるか、どうして考えてあげられなかったの……?
――私は僚の服に顔を押し当て、涙が枯れるほどに泣いた――。
兄弟愛
(エンディング No.40)
キーワード……う