病院送りにされてしまったパターンではないだろうか。
何しろ僚は病気だ。確かに髪は染めたが、それだけでどこまで隠し通せるものか――。

僚を探さなきゃ!

私は泰明くんの部屋を飛び出した。
ここから病院に搬送されたのなら、この建物の中の誰かが必ず彼の姿を見ているはずだ。

 

 

玄関ホールまで出てくると、レイラがいて、そのあたりの人に片っ端から声をかけていた。
……今の段階では、彼女に黒い気持ちを抱いていることを悟られたくはない。近づかない方がいいだろう。

しばらく階段のそばから見ていると、レイラは慌てて外へ飛び出していった。
今度は私がホールへ出ていき、僚の行方を聞く――。

しかし。
「見かけてないなあ」
「今、ここへ来たばかりだから」
「てっきり自分の部屋にいるとばかり思ってたよ」
どうやら、誰も見ていないらしい。そんなことがあるだろうか……?
中には「え? 僚、いないのか?」などと逆に私に聞き返してくる人も。

そんな中、ひとりだけ情報(というより意見)を聞かせてくれた人がいた。
「携帯を鳴らしてみたらどうですか? それでも出ないなら、実家か厩舎じゃないでしょうか」
そうだ。携帯を鳴らすという手を忘れていた。私はすぐさま自分の携帯を取り出し、僚にかけた。

……。
……。
……。

コールは鳴るのに、一向に僚が出る気配はない。
このパターン、どこかで……。

……そうだわ!
確か僚の話の中に、五十嵐先生が泰明くんの携帯をいくら鳴らしても出ない、というのがあったはず!
じゃあ……じゃあやっぱり、僚は今、泰明くんと同じ状態なんだわ!
病気がバレて病院にいるか、あるいは――。

私は寮を飛び出した。
入院したなら、伸おじさんや寺西先生が知らないはずはない。
彼と関係のある場所をとにかく当たってみよう!

 

 

――しかし。

その日以降……僚の姿を見かけることはなかった。
伸おじさんも、寺西先生も、彼の行方を知らなかった。
近所の病院を当たってみても、彼は来ていないとのことだった。
彼もまた、泰明くんと同じように、多数の行方不明者の中に紛れ込んでしまったのだ……。

僚……。
どうして、私に何も言わずにいなくなってしまったの?
どうして、何かおかしいことがあるとわかった時点で、私に連絡してくれなかったの?

――私の体には何の異常もないはずなのに、あの日から、自分の半分が欠け落ちてしまったような気持ちが拭えなかった。
ひとりで強く生きていたつもりの私にも、きっと、僚によって生かされていたような部分が多数あったのだろう。
優しさと力強さと、勇気と――私にはないものを埋める役目を担ってくれていた、僚。

大切な人を失い、さらにそれらも失った私には、もうまともな行く末はない。
あの日から、私の人生は闇に沈んでしまったのだ――。

 

 

あの日から……

(エンディング No.64)

キーワード……く


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