俺には撃てない！
何がかかってたって、どんな最低な野郎が相手だって、人を撃つことなんてできるもんか！
俺は銃を下ろし、それをサングラスの足元に投げた。甲高いような鈍いような、金属の音が響く。
「僚！」
真奈が不安そうに脅える。
「いいんだ。……さあ、真奈を返してもらおうか」
「いいだろう」
サングラスは真奈の束縛を解き、そして俺の方へと突き飛ばした。
――俺は、返ってきた真奈をしっかり受け止めた。
気の毒に、震えている。
俺は、抱きしめることでその震えを取ってやろうとした。
ところが。
「思う存分いちゃついておけ。どうせ、お前らに未来はないんだ」
「何!?」
俺が顔を上げたときには――すでに、銃口が俺たちの方に向いていた。
「おい、何をする！」
「俺は、こいつを渡せば女を返すとは言ったが、お前らを無事ですますと言った覚えはない」
――なんてこった。
まんまと引っかかっちまった！
「この野郎……」
どれほどの効果があるかは疑問だったが、俺は真奈を背中にまわしてかばい、低い声でうめいた。
「負け犬の遠吠えは見苦しいものだな」
「遠吠えする気なんかない。撃てるもんなら撃ってみろ！」
俺は開き直って強気になった。
「言ったな。では、望みを叶えてやる」
気のせいか、銃口が一歩近づいてきたように感じた。
俺は、殺される。
もう、その運命はどうやっても変えられないようだ。
でも……。
もし神様だの天使様だのがいるなら、最後にひとつだけ叶えてほしい。
俺が死んでも、どうか真奈だけは無事に――。
――祈りは、最後まで続かなかった。
強烈な破裂音が、突如として周囲を包み込んだ――。
「僚――!!」
……ああ、真奈。
お前は、俺の名前を叫んでくれるのか。
サンキュー。
最期に聞けたのがお前の声で、俺は幸せだ――。
――俺は、床に崩れ落ちた。
所詮人間もマリオネットで、糸を切られればこうなんだと、虚しくなる一瞬だった。
……殺るか、殺られるか。
その選択を前にしたとき、前者を選べるやつがどれだけいるものか。
俺も、例外にはなりえなかった。
人間、身体的な苦痛より、良心の呵責の方がずっとずっと痛いものなんだから――。
――そんなことを考えながら、俺は長い眠りについた。
いつか、どこかの誰かとして生まれ変わるその日まで。
殺るか、殺られるか
（エンディング No.45）
キーワード……え