「やめろ! 誰も撃つな!」
「……それはできない。私には、撃つのをやめる権限はない」
女は震えているようにも見えたが……それでも、そう言った。

「権限がなんだ! お前の行動はお前が決めるんだ! 人殺しになりたくなければ、撃つな!」
――俺には何だか、この女は本当はこんなことするのを望んでないんじゃないか、と感じられた。だから、説得を続けることも無意味じゃないはずだと考えたのだ。
「人間は、誰かに命令されて動くもんじゃない! 自分の意思で生きろ!」

「……あなたに、そんなこと言われたくない」

女は震えたまま、無機質につぶやいた。
やばい、何か神経逆撫でするようなことでも言ったか?

――と思った矢先に、その出来事は起こった。

 

 

俺の体の中で、何かが音を立ててはじけた――そんな感覚だった。
足の方から体の組織が崩れていく感じで、俺は地面に倒れ込む。
……肩から胸にかけて、焼けつくような激痛が走る……。

「……僚!!」

真奈の叫びが、遠く……。

仰向けになり、空を真っ正面に迎えたとき、視界の端に映ったもの。
それは、2階の窓から煙の立ち上る銃をこっちに向けている、リーゼントの姿だった。

油断したか――。

 

 

俺は、暗いざわめきに包まれていった。
すべてが遠のいていき、そして――。

――何を言い残すこともできずに、この世界に別れを告げた。

 

 

油断

(エンディング No.49)

キーワード……だ


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