「よし! 早速連れてくぜ!」
反対する理由なんか何ひとつない。こんな場所とはとっととおさらばだ。

俺はレイラとふたりで泰明を担ぎ上げ、診療所の外に出ると、すぐに119番してやつを病院に運んでもらった。自分も同じ病気なのを隠して他人を病院送りにするってのは何となく妙な気分ではあったが、しょうがない。
もちろん、同時に警察に連絡することも忘れなかった。証拠が不充分なので動いてくれるかどうか半信半疑だったが、この奇病騒ぎに関して少しでも多くの情報が欲しいためなのか、すぐに来てくれた。
あとは、香先生が本当に事件の黒幕であることと、彼女のもとから治療法のデータが発見されることを祈るばかりだ……。

 

 

……その願いはふたつとも届いた。
泰明が眠らされていた診療所から、秘密の研究室へと続く地下通路が発見された。
その研究室には、香先生が例の病気を研究し、「実験台」を選んで感染させ、拉致してきて実験に使っていた証拠がいろいろと発見された。
治療法も確立されていた。泰明はもちろん、俺も病気に感染していたことを白状し、治療を受けた。

だが……。
万事ハッピーエンド、とはいかなかった。
警察に追い詰められた香先生は、観念して青酸カリで自殺を遂げた。
そして、研究所からは今までに行方不明になっていた人間たちが発見されたが、弥生さんが無事に救出された以外は、東屋隆二先生を含めて全員がすでに死んでいた……。

俺もレイラも、事件の黒幕を憎んでいたはずだった。
が――事件が終わって、俺たちの胸に残ったものは、やるせなさと脱力感だけだった。
当たり前だ。香先生も含めてこれだけ死人が出ては、喜べるはずもない……。

それに、単独犯だった香先生が死んで、謎もいくつか残ってしまった。
なぜ彼女は、こんな恐ろしい事件を起こしたのか。
そして――何よりも、なぜ彼女は、実の父親である東屋先生までも「実験材料」にしたのか……。

 

 

病気は治り、有馬への騎乗も問題なくなった。
だが、事件は納得のいかない形で幕を閉じた――。

 

 

(エンディング No.65)

キーワード……し


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