俺はみどりの前に立ちはだかり、とにかく彼女を守ろうとした。

 

 

「うっ……」

……俺は、誰にも聞こえないうめき声を上げて、その場に倒れ込んだ。

視界が赤く染まる。
それは、俺の頭から流れ出す、誰にも見えない血のせいだ。
俺は、みどりの代わりに美樹本に殴られたのだ……。

よく動かない頭を動かして、様子をうかがう。

……美樹本は、殴ったはずのみどりを見て、どうして無事なんだといった表情をしている。
そして、みどりは……。

「助けて! 誰か……誰か来てえーっ!!」

大声で叫んだ。

「みどり!?」

階下で過去の俺が反応し、すぐに駆け上がってくる足音が聞こえた。
美樹本の方は、まだ放心状態から立ち直っていない。

よかった、これで彼女は助かった……。

……そう安心したところで、俺の視界はゆっくりと闇に沈んでいき、同時に何も聞こえなくなった……。

 

 

……体が、床から離れる。
天に昇っていくんだろう。

俺は、このまま死んでしまうのだろうか?

こんなわけのわからない次元の狭間で。

誰に見られることもなく。
誰に気付かれることもなく。
誰に涙を流してもらうこともなく……。

いや……。

これでいいのだろう。

みどりは殺されなかった。
それが歴史上の真実となった今では、あの悲しみを抱えた俺は、この世に存在していてはならない。

これから彼女のそばには、この俺の代わりに、あの悲しみを知らない俺がいる。
そして、時間は何事もなかったように流れていく。
すべてを知りながら消えていく、俺自身ただひとりを残して。

……それこそが、さだめだったのだ……。

 

 

永遠の孤独

(エンディング No.5)

 

 

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