小説に出る競馬用語講座

※馬の年齢は満年齢で書いています。
2000年までは数え年(生まれた年を1歳とする)で計算されていたため、
『あの日の忘れ物』『記念日』では数え年になっています。
この2作品を読む場合は、文中の年齢から1を引いてください。


[あ行]

有馬記念(ありまきねん)
年の一番最後に行われるG1レース。舞台は中山競馬場の芝2500m。(『ふたり』では芝2000mという設定になっている)
「グランプリ」と呼ばれ、出走させたい馬をファンが投票する制度がある(もちろん、厩舎側の都合で、選出されても出走しないことも多いが)。
G1の中でも、かなり名誉あるレースとされている。

エリザベス女王杯(じょおうはい)
秋(だいたい11月頃)に京都競馬場で行われる、3歳以上の牝馬によるG1レース。芝2200m。
以前はこれが3歳牝馬三冠の最後のレースとして位置づけられていたが、4歳以上にも牝馬限定G1をとの声に応えて改定された。

桜花賞(おうかしょう)
4月上旬〜中旬に阪神競馬場で行われる、3歳牝馬三冠の最初の関門。芝1600m。

オークス
5月下旬〜6月上旬に東京競馬場で行われる、3歳牝馬三冠の2番めのレース。芝2400m。正式名称は『優駿牝馬』。
牝馬には過酷な距離と言われ、このレースを制した馬が、事実上その年の3歳牝馬最強と呼ばれることが多い。

お手馬(おてうま)
競走馬Aにはいつも騎手Bが乗る、という関係を、「AはBのお手馬である」と言う。
つまり、騎手から見た「いつも乗っている馬」のこと。
同じ関係を馬の方から見たときは、「BはAの主戦騎手(しゅせんきしゅ)である」と言う。


[か行]

菊花賞(きっかしょう)
10月下旬に行われる、3歳牡馬三冠レース(牝馬も出走はできる)の最後の関門。舞台は京都競馬場の芝3000m。
3000mという距離は競馬界ではかなり長い方に入り、適性がなく出走しない馬も多い。

厩舎(きゅうしゃ)
馬を入れておく馬房(ばぼう)、馬を洗う洗い場、台所兼ミーティングルームの大仲部屋(おおなかべや)などを備えた場所。
2階があり、調教師や所属騎手が寝泊まりしている場合もある。
ひとりの調教師につき、ひとつの厩舎を与えられている。(注:調教師試験に合格してから1年間は、研修期間として厩舎を持てないことが多い)
長である調教師の名前をつけて「東屋雄一厩舎」といった言い方をする。
美浦と栗東の両トレセンには、それぞれ100余りの厩舎がある。ひとつの厩舎に所属する競走馬は、平均30頭ほど。
また、場所ではなく、調教師以下スタッフをまとめた集まりの意味で「厩舎」という言葉を使うこともある。
騎手などのスタッフの「○○厩舎所属」という肩書きはこのパターン。

厩務員(きゅうむいん)
厩舎に所属し、馬の世話や馬房の掃除などを行う係の人。
ひとりの厩務員が2頭の馬を担当していることが多い。
生き物が相手の仕事なので、トレセン全休日の月曜日にもゆっくり休めないとか。

競馬学校(けいばがっこう)
千葉県白井市にある、騎手・厩務員の養成所。全寮制。騎手課程は3年、厩務員課程は半年。
入学資格・入試の内容・授業内容などは各課程で異なるが、入学するまでもしてからも、かなり厳しい世界らしい。
騎手課程についてだけ書くと、中学を卒業すると同時に入学してくる人が多いが、中には高校を中退したり卒業したりしてから入学する人もいる。
女性にも男性と同様に門戸が開かれている(特別扱いはしてくれないので、実際はかなりつらいらしいが)。
2000年頃には栃木県の方に移転するという説があったが、諸事情により中止になった。

減量(げんりょう)
レースをする際は、それぞれの馬が、規定で決められた重さを背負って走る。
これは「負担重量(ふたんじゅうりょう)」あるいは「斤量(きんりょう)」と呼ばれ、53キロから57キロ程度が一般的で、騎手の体重に馬具や重りを加えて調整する(だから、騎手の体重が負担重量より重いと、その人はその馬には乗れない)。
ただし、「騎手免許を取得してから3年未満」かつ「通算勝利数が100以下」の騎手は、技量の未熟さを補うため、特別レース(「○○賞」「○○特別」「○○ステークス」などの名前がついた、格の高いレース)以外のレースでは、勝利数に応じて負担重量を軽くしてもらえる制度がある。
これを「減量制度」あるいは「減量」といい、その騎手を「減量騎手」という。
通算勝利数が0〜20の騎手は3キロ減(▲印)、21〜30の騎手は2キロ減(△印)、31〜100の騎手は1キロ減(☆印)となる。
当然、馬は負担重量が軽い方が楽に走れるので、この制度は新人騎手の成長の大きな助けとなっている。
免許取得から3年経過するか、通算勝利数が101以上になった場合は、この制度の適用がなくなり、これを「減量が取れる」と表現する。
また、これとは全然別の意味で、負担重量の軽い馬に乗るために騎手が無理に体重を落とそうと努力することも「減量」と呼ぶ。


[さ行]

皐月賞(さつきしょう)
4月上旬(桜花賞の次の週)に中山競馬場で行われる、3歳牡馬三冠の最初のレース。芝2000m。

G1(じーわん)レース
重賞(下参照)の中でも最も格の高いレース。Gは「グレード」の略で、正しく言えば「グレード・ワン競走」。
(本当は数字はローマ数字なんですが、文字化けするので……)
明確な区別はされていないが、G1の中でも特に名誉あるレースというのが存在する。
ダービーや有馬記念などは、すべての競馬関係者が是非手中にしたいレースと言える。

秋華賞(しゅうかしょう)
秋(時期は年によって流動的で、はっきり決まってはいない)に京都競馬場で行われる、3歳牝馬三冠最後のレース。芝2000m。
4歳以上牝馬との混合戦になったエリザベス女王杯に代わって新設された、比較的歴史の新しいレース。
桜花賞・オークス・秋華賞の3つのレースを制して「牝馬三冠馬」となった馬はまだ出ていないが、エリザベス女王杯が三冠の最後とされていた時代には、メジロラモーヌという馬がその偉業を達成している。

重賞(じゅうしょう)レース
特別レース(レースそのものに「○○特別」「○○賞」「○○ステークス」などの名前がついているもの)の中でも格の高いものを、重賞と呼ぶ。
3段階の格付けがあり、G3→G2→G1と格が高くなる。
若手の騎手は、まず重賞を勝つことを目標にすることが多い。

障害(しょうがい)レース
単に走るだけでなく、コースの途中に置かれた生け垣や水濠などの障害物を飛び越えながらゴールを目指すというレース。
1日に1レースあるかないかのマイナーなレースだが、スリリングなので結構ファンは多い。
「ジャンプレース」という言い方もあるが、あまり普及していない。
残念ながら騎手の方では「落馬の危険がつきまとうから乗りたくない」という意識が強いらしく、平地(障害でない普通のレース)での騎乗数が少ないからとか、体重が重いから仕方なく(障害の負担重量は、平地のそれよりも重い)といった消極的な理由で障害に騎乗している例が目立つ。


[た行]

ダービー
3歳牡馬三冠の2番めにして、日本の競馬界で最も名誉あるレース。オークスの翌週に東京競馬場の芝2400mで争われる。
正式名称は『東京優駿』。また、「ダービー」だけではなく『日本ダービー』と呼ぶのが正しい。

調教助手(ちょうきょうじょしゅ)
厩舎に所属し、馬に乗って調教をつける係の人。単に「助手」とだけ呼ぶこともある。
厩務員と同じく、担当馬が決まっている。ひとりで2〜7頭ほどの調教を担当するらしい。

調整(ちょうせい)ルーム
レース前日の夕方から当日の朝まで、レースに騎乗する騎手全員に入室が義務づけられている、寮のような建物。レースで騎手が八百長などの不正を働かないように、外部との関わりを一切断ち切る目的で設置されている。
各競馬場の他、美浦・栗東の両トレセンにもある。
中でしなければならないことは特になく、本や競馬新聞を読んだり、仲間を集めて卓球をしたり、体重を落とすために備えつけのサウナに入ったりと、各騎手が好きなように過ごしている。

当歳馬(とうさいば)
その年に生まれたばかりの馬。
馬の年齢は満年齢で表すが、誕生日が来ると年を取るのではなく、1月1日が来るたびに年齢が1加算される形式を取っている。
それで、生まれてから一度も1月1日を迎えていない馬を「当歳馬」と称するのだ。
わかりやすく言えば「0歳馬」のこと。
「馬」を省いて「当歳」とだけ呼ぶ場合も多い。
以前(2000年まで)は馬の年齢は満年齢ではなく数え年で、生まれた年を1歳として計算されており、その中で1歳の馬だけは、「1歳馬」とは言わず「当歳馬」と呼んでいた。

トラックマン
トレセンをまわって取材するのを職業としている人の総称。
関係者から話を聞いたり、調教を見て予想に役立てたりする。


[な行]

中山競馬場(なかやまけいばじょう)
千葉県船橋市にある競馬場。
有馬記念や皐月賞が行われる競馬場として有名。


[は行]

馬運車(ばうんしゃ)
トレセン・競馬場・牧場間で、馬を輸送するための巨大なトラック。
また、ケガをして歩けない馬を輸送するのにも使われる。
1台の馬運車で3頭ほどしか運べない(らしい)ので、競馬開催日にはよく競馬場周辺で渋滞が起きる。
事故に巻き込まれたりすると、レースに間に合わず出走取消……なんてことも。
運転するには大型免許が必要になる。

パドック
競馬場で、次のレースに出走する馬たちを客に見せるための下見所。
楕円形か円形をしていて、そこを人(その馬の厩務員であることが多い)に引かれた馬が周回している。
発走時刻の20分ほど前になると停止命令がかかり、騎手が騎乗してもう1周だけして、それから本馬場(下参照)へと出ていく。

牝馬(ひんば)
メスの馬のこと。オスの馬は「牡馬(ぼば)」という。

牡馬(ぼば)
オスの馬のこと。メスの馬は「牝馬(ひんば)」という。

本馬場(ほんばば)
競馬場で、実際にレースを行うコースを特にこう呼ぶ。


[ま行]

美浦(みほ)トレーニングセンター
茨城県美浦村にある、競走馬の調教・管理をするための施設。また、調教師や騎手などの関係者が暮らしている場所でもある。
月曜日は全休日となっている。
敷地はとにかく広大。詳しい数字は手元に資料がないのでわからないが、「東京ドーム何十個分」という規模であることは間違いない。
小説の中で「トレセン」と書かれている場合は、文中に注釈がない限り、この美浦トレーニングセンターのこと。
なお、正しくは「JRA美浦トレーニングセンター」という。JRAとは「日本中央競馬会(Japan Racing Association)」のこと。
ただし、このページの物語はすべてフィクションであるため、JRAのつかないただの美浦トレセンである。
しいてつけるなら「YRA(Yumi Racing Association)」……誰もこんなことは言わないか。(^^;)
美浦は関東地区のトレセンで、関西地区には、滋賀県栗東市に「栗東(りっとう)トレーニングセンター」がある。
また、関東に所属する騎手を「美浦所属」と言ったりする場合もある。


[や行・ら行・わ行]

予後不良(よごふりょう)
馬が故障し、治る見込みがないと診断されたときに下される判断。
「安楽死の処置」が施される。

落馬(らくば)
馬から騎手が落ちること。特にレース中のものをそう呼ぶ。
競馬では、騎手が落ちたら、その後に馬だけがどれだけ必死に走っても「競走中止」とされる。
どれだけ速く走って先頭でゴールしようと、その時点で騎手が乗っていなければ競走中止なのだ。

 

 

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