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―家族サービス―
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突然だが、皆さんは「家族(家庭)サービス」をどういう意味に解釈しておられるだろうか。 私は、「家計を支える立場の者(大概は亭主)が、日頃、家庭に気を配ることが難しい場合などに、その埋め合わせとして家族にする奉仕的行為」のことを言うのだと思っていたのだが、百目妻に言わせると、どうやらこれは誤りらしい。
それは、盆休みも間近となった、ある晩の出来事。 「ねぇ、お盆休みはどうする。普段は帰りが遅くて休みも死んでばかりだから、お盆休みぐらいは家族サービスしないとね。どっか連れてってあげるよ。どこがいい?」 「別に。行きたくないわけじゃないけど、お金もないし」「なんだよぉ、つれない返事だなぁ。せっかくどっか連れてってあげるって言ってるのに」 「あのねぇ、その、連れてってあげるって何。家族サービスって、どういうことよ!」「へ?、どういうことって、どういうこと?」 「サービスって何よ、ヒドイ人ね。別にさぁ、サービスだなどと思ってするぐらいなら、しなくて結構ですから」「わかんないなぁ、言ってる意味が。家族サービスの一体どこが不満なワケ?」 「本当に家族のことを大切に思っているなら、サービスなんて言葉が出るはずないでしょ。して当たり前のことをするだけで、いちいちサービスなどと恩着せられたって、こっちはちぃ〜っとも嬉しくなんかない。寧ろ、腹立つわ」「え〜、それってなんか違わない?。家族サービスって、そんなに悪い言葉じゃないでしょう。普通に使う言葉だと思うんだけどなぁ」 「なんだか、家族への愛情を仕事として処理するみたいで、私は嫌なのよ!」 「それはママがそう思っているだけのことでしょぉ。帰省前後のニュースを見てご覧よ。仕事カバンを旅行カバンに持ち代えたお父さんたちが、新幹線からヘロヘロになって出てくる映像を流しながら、ニュースキャスターが『お父さんも家族サービスで大変ですねぇ』ってな感じに使ってるじゃない。そんなに引っかかるような取り扱いの難しい言葉だったら、ニュースで使わないでしょう」 「男は仕事で大変なんだから、家庭のことは二の次になってもいいって言う認識がマスコミにもあるから、そういう言葉が出てしまうのよ。マスコミが間違ってるんじゃない」 「確かに、今の世の中そういう認識が全くないかと言ったら、そんなことはないとは思うよ。でもねぇ、家族に対して済まないと思う気持ちがあるから、サービスしなくちゃって気になるわけなんだから、それだって十分愛情なんじゃないの。俺だって、そういつもいつも、ママが言うような家族に対する深い愛情の発露としてばかりはできないよ」 「もういい。何を言っても平行線ね」 「何でよ。引かないのはそっちの方じゃないの」 「どうして。分からず屋はアンタの方じゃないの。愛情の押し売りはもうたくさん。アタシ一人で子供の思い出作りをしに行ってきますから、アンタはのんびり家で寝てたら!」 「なんでそうなるのよぉ〜!」そういう百目妻は、「贈与でもいいからもっと愛して」とか、「愛を要求することだって、時には思いやりだったりするのよ」とか、言うことがその日の気分によってコロコロ変わるので、とぉ〜っても辛い。これではいつになっても、私の亭主株は下げ止まらない。とほほ
全国の恐妻家諸兄に一言。亭主の株を下げたくなかったら、軽々しく「家族サービス」などとは口走らぬように。努々ご注意召され!。
2001.1.1 Clark Mint
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