Maintenance Note No.5
99年5月8日 ブレーキの“鳴き”を止める方法
ブレーキが鳴くのはメンテナンス不足の証拠
作業はカンタンなのに効果絶大だ

 前回は前置きが長かったので,今回はいきなり本題に入ります。最近になって,フロントブレーキの“鳴き”が気になるようになってきた。古い自転車のようにキーキーと鳴くのはみっともないし,性能面でも良いことはない。そこで,簡単なブレーキのメンテナンスをしてやることにした。
 メンテナンスと言っても,やることはカンタンだ。ブレーキパッドを外して面取りをしてから,裏面にグリスを塗る。たったこれだけで,ブレーキの鳴きは止まるのだ。
 R6のブレーキキャリパーは一体鋳造の特殊な構造になっている。一般的なキャリパーは左右に分割したボディーをボルトで締結しているが,一体にすることで剛性が高くなり,いわゆるキャリパーの開きがなくなるのだ。一体型キャリパーの分解は難しい。特殊なアルミのキャップを外さないとピストンを取り出せないからだ。
 しかし,今回の作業ではキャリパーを分解するどころか,フォークから外す必要すらない。単に,パッドを取り出せばよいのだ。話はちょっとずれるが,ブレーキをいじっていて,キャリパーをフロントフォークに固定しているボルトに,肉抜き頭のステンレスボルトが使われていることに気付いた。う〜む,何気なくすごいパーツを使っているなあ。
 パッドの外し方はキャリパーによって少しずつ違う。R6の場合はスライドピンを固定しているβピンをラジオペンチかプライヤーで抜き取る。すると,スライドピンが抜けるようになるので,やはりラジオペンチなどで引き抜く。パッド押さえを取れば,パッドは完全にフリーになるので,あとは手で取り外せばよい。
 キャリパーによってはスライドピンが2本あったり,スライドピンが圧入されているためドライバーなどで叩かないと外れないものもあるが(ブレンボ鋳造など),どれでも難しい作業ではない。
一体鋳造なのでボルトがない。フォークへの取り付けボルトは肉抜き去れている



スライドピンは1本だけで,2つのβピンで抜け止めしてある
パッドは面取りして,裏側に薄くグリスを塗っておく

使うグリスの種類には注意
 外したパッドは左右のキャリパー別に,さらにディスクのどちら側に取り付けられていたのものかを間違えないように置いておく。パッドはどれも同じだから,左右を替えて取り付けても使えないわけではないが,そうするとディスクとの“当たり”を付け直す必要が出てくる。しばらくはブレーキがききにくい状態になってしまうので,これは避けたい。
 パッドは汚れているから,パーツクリーナーなどできれいにする。それから,当たり面の角をヤスリで軽く削ってやる。
 さらに,パッドの裏面に薄くグリスを塗る。グリスはできればシリコーン系がよいが,流動性の低いものならほかの種類でも大丈夫だ。ボクは耐熱耐圧性の高いモリブデングリスを使っている。ただし,このグリスはキャリパーピストンのシールのようなゴム部品を痛める可能性があるので,塗る時はごく少量を薄く塗るように注意する。一番いけないのは流れ落ちてしまうような流動性の高いグリスで,これはディスクに付着したりするとブレーキがきかないという恐怖を味わうことになる。
 スライドピンにも薄くグリスを塗っておく。こうして,先ほどとは逆の手順でパッドとピンを組みつければOK。これで,もうブレーキの鳴きとはおさらばだ。