Maintenance Note No.6
99年5月23日 最初のサスペンションセッティング
サスペンションに慣らしは必要だ
当たりが付いたら,プリロードを抜くことからセッティングを始めた

  今回は,サスペンションセッティングのお話その1。YZF-R6に初めて跨った時,あまりにもサスペンションが沈み込まないのに驚いた。シートにドンッと体重を掛けてみても,ほとんどストロークしている感じがしない。ボクの感覚で言えば,ガチガチのセッティングだ。
 もちろん,どんなバイクでもサスペンションも初期の当たりがつくまでは,フリクションが大きくて本来の動作はしない。だから,いくら固いなと思っても,いきなりセッティングを変えることはせず,1000km走るまでは標準設定のままにしておくことにした。
 具体的な話の前に,R6のサスペンションについて簡単に説明しておこう。フロントは,一般的なテレスコピックの正立タイプ。減衰力は伸び(リバウンド)は11段階,縮み(コンプレッション)は12段階で調整できる。スプリングのプリロード(イニシャル)は8段階に変更可能だ。リアサスペンションはピギーバックタイプのリバーバータンクを持つ一体型ユニット。ボトムリンク機構を備えている。こちらも伸びで25段階!,縮みも13段階,プリロードは9段階のアジャストができる。フロント,リア共にいわゆるフルアジャスタブルのサスペンションだ。

フロントはフォークトップで調整する



カム式のプリロード調整機構

取りあえずプリロードは全部抜く
 慣らし運転が終わって,最初に手を付けたのがリアのプリロードだ。これはもう,一も二もなく最弱,つまり最もプリロードを抜いた状態にする。リアのプリロード調整機構はカム式なので,車載工具のフックレンチに継ぎ手をして回せば,比較的簡単に変更できる。最弱までは4段階緩めるので,4〜5mm程度プリロードを抜くことになる。
 オーリンズやホワイトパワーのようなリプレイスサスペンションに多いダブルナット方式だと回すのに苦労するが,市販車で一般的なカム式なら誰にでも調整できるので,手を付けたことのない人は,一度試してみてはいかがだろうか。
 プリロードを抜いたのは,第1につま先立ちになるシート高を少しでも下げたかったから。プリロードを減らすと,同じ荷重がかかった状態でも沈み込む量が増す。つまり,それだけリア側の車高が下がるのだ(わずか数mmだが)。
 もう1つは,リバウンド側のストロークを確保したいから。初期荷重で沈み込む量が少ないということは,バネが伸びた時の伸びしろが少ないことになる。路面の段差などで突き上げられた時に,リバウンドストロークを使い切ってしまうと接地圧が減って不安定になる。リアタイヤがスライドしてスプリングが伸びる時も同じだ。
 一般的に,市販車は体重75kgくらいのライダーが高速で走っても安定していて,タンデムや荷物を積んで走った場合でも破綻しないようなセッティングにして出荷している。ということは,体重65kgの人がひとりで街中を乗るには,たいてい設定が固すぎるのだ。
 プリロードを抜くのはスプリングを柔らかくすることではないが(バネのレートはバネを変えない限り同じ),サスペンションのストロークが大きくなり(ピッチングも大きくなるが),乗り心地はたいてい良くなる。理想的にはスプリングをもっと低いレート(柔らかい)のものに交換すべきだが,プリロード調整だけでも十分に効果はあるはずだ。
 プリロードを抜くことでリア下がりになると,ハンドリングにも影響が出てくる。旋回性や立ち上がりでのトラクションの掛かり方が変わってしまうのだが,取りあえず今はそこまで考えないことにする。なぜって? それはリアが決まってからフロントのセッティングで変えるからだ(次回へつづく)。