Maintenance Note No.23
2000年5月14日 赤いサソリはレース直系の証し R6はアクラで決まり!
ついにR6のマフラーを交換した。ワークスも採用するアクラポヴィッチだ
スリップオンだからポン付けかと思いきや思わぬ落とし穴が

 いきなりだが,ボクはバイクに関して極めてミーハーだ。バイクは何よりカッコイイことが一番大事だし,パーツはブランド品,素材はカーボンやチタンが大好き。自分の見た目は無頓着なのに,バイクの見た目はすごく気にする。そんなボクがYZF-R6のマフラーを買ってしまった。ミーハーなR6のオーナーが買うマフラーと言えばひとつしかない。そう,スロベニアのスコーピオンことAKRAPOVIC(アクラポヴィッチ)である。
 ゴールデンウィーク直前のある日,NAP'S練馬店のチラシを見ると,「アクラポヴィッチ在庫のみ限定 モニター価格25%オフ」という赤い文字が目に飛び込んできた。しかも,その中に「YZF-R6 S/O 8万8000円→6万6000円」とある。チャ〜ンス!
 アクラポヴィッチと言えば,ヤマハのワークスチームが採用し,YZF-R7が装着しているマフラー。ボクはこういうイメージには,からっきし弱いのだ。だが,いきなり6万6000円と言われても,そう簡単には買えない。つい先日ジャケットを買ったばかりだし…。
 悩んでいるうちに連休に突入。旅行へ行ったり,ちょっとしたツーリングへ行ったりするうちに,長かった連休も最終日となった。その日,チェーンクリーナーを買いにNAP'S練馬店へ行くと,店の入り口近くに,チラシに載っていたアクラポヴィッチのチタンスリップオンが展示されていた。
 あっ,赤いサソリが呼んでいる…。在庫限りとあったから,とっくに売れているかと思ったら,まだボクのことを待っててくれたのだ。これは運命の出会いに違いない…,と思い込んだボクは,店員に「あのマフラーください」と口走っていた。
 このマフラーは,国内販売元のプロトがモニター価格で出していたものの在庫処分だった。だから25%引きで,しかもハンコをためると金券になるというカードで4000円分を使い,6万2000円+消費税で済んだ。アクラポのチタンスリップオンがこの値段と考えればかなり安い。と,自分に言い訳しつつ,マフラーを持って帰ってきた。

WSBやSS600で活躍するアクラポヴィッチ



向こうの景色が見えるストレート構造

溶接跡を滑らかに仕上げるのがアクラの特徴




有能な助手。ボルトや工具を隠すのが得意



 
ノーマルの10mmに代えて8mmの六角ボルトで固定
スプリングは固いので,スプリングフックを用意する
     時間がなかったので,マフラー装着はその翌週に持ち越した。それまで,マフラーをじっくり観察。エキパイ部はノーマルと同じステンレスだが,ノーマルは二重管に対してこちらは1mm厚のパイプ。サイレンサーは外皮にチタンを使い,中身は完全なストレート構造だ。エキパイもサイレンサーも,ノーマルより数cmずつ短い。性能に関係があるのだろうか? 溶接した部分はビードを削り落として仕上げるという凝った作り。バンドタイプのステーは,なんと本物のカーボン,つまりドライカーボンで極めて固い。
     一番驚いたのはその軽さ。持ってみると呆れるほど軽い。体重計で簡易的に計ったところ,アクラポは2kgちょっと,ノーマルは5kg弱(どちらもサイレンサーとジョイント用エキパイの合計)だから,マフラー交換だけで3kg近くも軽量化できるのだ。これはお得と言うほかあるまい。
     スリップオンだから,装着は楽々と思っていたら,実はそうでもなかった。まず,アンダーカウルを外してからノーマルのサイレンサーを取り外す。次にアクラポを仮組みしようとして愕然とした。付属のカーボンステーの穴が小さいため,ノーマル用の取り付けボルトが入らないのだ。ボルトは10mm径だが,穴は8mmなのだ。おいおい,そりゃないだろ!
     仕方なく作業を中断し,SRXに乗ってNAP'Sまでボルトを買いに行く。8mm×50mmのフランジボルトが欲しかったが適当な物がなく,代わりに同サイズの六角穴ボルトと8mm径のナットを買ってきた。途中で突然の雨に降られ,踏んだり蹴ったりである。
     さて,車体にあるタンデムステップ兼マフラーステーの穴は10mmなので,買ってきたボルトの根本にテープを巻いて約10mmにまで太くする。これならがたつくことはないはずだ。結果はご覧の通りできれいに収まった。六角穴ボルトは頭が小さいためワッシャーとの接触面が小さいのが気になるが,がっちり固定できているので大丈夫そうだ。
     ジョイント用エキパイとサイレンサー,ノーマルエキパイとの接続部には液状ガスケットを使う。ノーマルでは通常のガスケットを組み込んでいるが,アクラポヴィッチには不要だ。固定方法は,ノーマルがバンドであるのに対して,アクラポはスプリング。特にノーマルエキパイとの接続部はスプリングが1本しかなく,しかもたまたま残っているステーの空き穴に引っ掛けるだけなのでちょっと不安。パイプの嵌合部がかなり長いので大丈夫だろうとは思うが…。
 カウルを元に戻したら完成だ。チタンの鈍い輝きを放つサイレンサーは,ノーマルと違っていかにもレーシー。しかも,サイレンサーは楕円で,極端に内側へ追い込まれている。バンク角をより大きく取れるようにするためだが,もちろんボクはそんな恐ろしい角度までバンクできるはずはない。でも,やっぱり気分はいいね。写真を撮りながらニヤニヤしてしまった。
 エンジンをかけてみると,思ったより静かだった。ストレート排気だからもっとうるさいかと覚悟していたが,アイドリングではノーマルよりもボボボボという低音が少し響くという程度。もっとも,R6は逆輸入車なので,ノーマルでも普通の国産車に比べれば排気音は大きいのだ。
 走り出すと,ノーマルとのパワーの違いは感じない。家の周りを走っただけだが,特性も変わりないようだ。3速でスパーっと180まで加速する。排気音は,高回転になるとさすがにノーマルよりだいぶ大きくなる。ノーマルマフラーではエンジンの「ギャーン」というメカニカルノイズの方が耳につくが,アクラポヴィッチは4気筒らしい高い音も響かせる。かといって,眉をひそめたくなるような爆音ではないから気持ちいい。
 今回はほとんど発作的にアクラポヴィッチを買ってしまったが,あの値段でワークスイメージのブランド,チタンサイレンサー,約3kgの軽量化,気持ちいい音が手に入ったのだから,結果的にはよい買い物だったと思う。えっ,まだ言い訳してるかな?

楕円のサイレンサーは極端に内側へセットされる




レーシーな雰囲気がタマラナイ