Maintenance Note No.69
2003年3月22日 「ガトリングビーム」に隠された驚異の機構
ポジションランプをLEDに交換し、ライセンスライトにちょっとした細工を
その作業中に発見したヘッドライトの驚くべき新機構とは?

 今回は新型YZF-R6の細部についてレポートするつもりだったが、ヘッドライトに驚くべき発見があったため、急遽予定を変更してお届けする。
 初めに'03R6のヘッドライトシステムを紹介しておこう。「ガトリングビーム」という大仰な名前の付いたヘッドライトは、プロジェクタータイプのレンズユニットを4つ内蔵している。'03R6の個性的で迫力あるフロントマスクは、このガトリングビームによるところが大きい。車体左側の2個がロービームで、ハイビームにすると右の2つも点灯する。
 当然、4つのプロジェクターレンズがあるから“4灯式”だと思っていた。バイク誌でもそう書かれていたし、これを読んでいる読者も、ほぼ例外なく同じ認識だろう。ところが、実際は4灯式とは言えない構造だったのだ。
ポジションライトはLEDに
 '03R6は従来モデルと同じく、ヘッドライトユニットの端にポジションランプを内蔵している。以前はこのポジションランプをウインカーに改造した(メンテナンスノートNo.36参照)。しかし、新型はウインカーがずっとスマートになったので改造はせず、野暮ったい黄色い光の電球をLEDに交換することにした。
 LEDと言えば、少し前までは完全にDIY工作の世界だったが、今はウェッジタイプの電球と互換性のあるLEDランプがカー用品店などで簡単に入手できる。'03R6のポジションランプは5Wのウェッジ球だから、同じサイズのLEDランプと差し替えるだけでOK。今回選んだのはPIAAのホワイトタイプだ。
バルブが1本しか無いわけは
 ポジションランプを交換するためにカウルのパネルを外すとヘッドライトユニットの後端が見える。どんなバルブを使っているのか気になっていたので(なぜかマニュアルには書いていない)、左側のヘッドライトバルブを外してみる。一般的なH4バルブではなく、H7の55Wだった。ハイ/ローの切り替え式ではないから、これは予想通り。しかし、バルブは1本しかない。もう1本はどこだ? いくら眺めてみても、バルブをセットする場所は1つしかない。慌ててオーナーズマニュアルを見るが、バルブを取り付けているのは片側1カ所だけ。
 まさかと思って、バルブを外した状態でヘッドライトを点灯させてみる。ああっ、片側2つのプロジェクターが両方とも光らない! つまり、ガトリングビームは1本のバルブで2つのプロジェクターライトを光らせるシステムだったのだ。どんな仕組みなのかは分解しないと分からないが、恐らくミラーなどを使って2つのレンズに光を導いているのだろう。予想を遥かに超えた斬新な機構だ。バイクの装備でこれほど驚かされことはない。ちなみに、ガトリングビームはスタンレー電気の開発だ。
LEDはバッテリーにやさしい
 ガトリングビームは配光の面でも素晴らしいのだが、その話は次回に持ち越すことにして、本題に戻ろう。LEDポジションランプは、少し青みがかった白い光を放ち、ぐっと高級感が増した。LEDの光は指向性が強いが、このPIAAの製品は複数のレンズを使って多少広がりを持たせているようだ。それでも電球に比べると横から見ると暗くなるが、前方からの被視認性は問題ないレベル。
 ご存じのようにLEDは球切れの心配がなく、低消費電力なのが特徴。SRXのテール/ストップランプは振動対策としてLEDにしたが、R6の場合は消費電力が5Wから1W未満に減ることのメリットが大きい。新型は常時点灯式になってしまったため、イグニッションをオンにするとポジションランプが自動的に点灯する。エンジンがかかっていない状態でも光っているから、バッテリーの負担になってしまう。ポジションランプをLEDにすることで、多少なりともバッテリーをいたわることができるわけだ。
 同じ理由でライセンスライトもLED化しようと思ったが、ここは電球が横から照らす構造のため諦めた。指向性の高いLEDに交換するとナンバープレートに光がほとんど届かなくなってしまうからだ。その代わりというわけでもないが、ライセンスライトは電球に被せる色付きのゴムキャップを使って色を変えてみた。ゴムが融けないのかちょっと心配だったが、10分ほど点灯させて問題なかったので大丈夫だろう。たぶん…。色付きの電球を買うよりも安上がりで、オレンジや緑など様々な色に変えられるから、遊んでみるには悪くないだろう。
03R6のアイデンティティとも言うべき「ガトリングビーム」
'03R6のアイデンティティとも言うべき「ガトリングビーム」


ヘッドライトバルブをセットする場所は1カ所だけ
ヘッドライトバルブをセットする場所は1カ所だけ


左がノーマル、右はLEDのポジションライト
左がノーマル、右はLEDのポジションライト


薄青い光が小僧っぽいが許容範囲だろう
薄青い光が小僧っぽいが許容範囲だろう