2000年1月9日 広すぎる階段と開かないドア
 ビルトインガレージの設計については,さまざまな課題を残したまま1999年のも終わろうとしていた。年末の時点での懸案は以下の通りだ。
1.室内からガレージへの出入り口と階段を設置する
2.天井に金網を張って,パーツなどをぶら下げられるようにする
3.床を耐油性のある塗料で塗装する
このうち,最大の問題はやはり出入り口をどうするかだ。
広すぎる階段
 問題を抱えたまま迎えた2000年。年明け早々に打ち合わせをすることにした。今回は,初めて設計の担当者が同席することになった。これまでは営業担当としか話したことがなかったので,設計者と直接打ち合わせた方が話が早くてよい。
 設計担当のM氏が持ってきた設計図には,新たに玄関からガレージに入るドアと,ガレージ内で床面まで降りる階段が付いていた。図面を見てもらえば分かるように,階段の幅は67.5cm,長さは約1.8mである。出入り口の幅は65cmとなる。
 一見すると「これで解決,めでたしめでたし」となりそうだが,さにあらず。階段の幅がこれだけ広いと,残されたガレージ内の横幅は1.8mしかなくなる。これでは,バイクを2台置くのもギリギリで,出し入れさえ楽ではないことが予想される。横幅は1cmでも広い方がよい。

図面に寸法を書き込みながら検討した
 さらに,階段の長さも納得できない。蹴上げ(1段の高さ)が20cmと低めなため,階段は全部で5段となり,それだけ全長が長くなる。踏み代も28cmとゆったりめだ。これを,蹴上げは25cmにして全4段で済ませ,さらに踏み代を25cmに詰めれば20cmは短くできるはず。
 ガレージ内のスペースは少しも無駄にしたくない。そのことは,これまでの打ち合わせでさんざん伝えてきたのに,どうして設計者はこちらの意図を汲んで工夫しようとしないのだろう? なかなか解決しない出入り口問題に,イライラして不信感が募る。

ドアが開けない
 階段の長さはともかく,幅については設計側にも言い分があった。それは,ドアの幅との兼ね合いである。幅65cmのドアはガレージ側へ開くから,全開できるようにするためには,階段の幅も65cm以上なければならない。なぜなら,それよりも狭いとドアが階段の手すりに当たってしまい,途中までしか開かないからだ。
 手すりの存在はまったく念頭になかった。しかし,言われてみれば,階段なのだから手すりがないと危険な面はある。基本的には私しか利用しないガレージだが,子供が遊んでいて落ちたりすると困る。
 では,どうしたらよいか。まず考えたのが,ドアの幅を狭めることだ。しかし,60cm幅の階段に合わせるとなると,ドアの幅は50数cmしかなくなり,人の出入りはやや苦しくなる。それは我慢したとしても,そんな幅のドアは規格品の中にはないという。ならば,ドアの幅はそのままで,全開できなくてもよいと割り切ればどうか。しかし,これもちょっとした実験をした結果,ドアと壁との隙間が狭く,出入りするのは困難なことが分かった。
 ドアは玄関側に開くようにすればよい? だが,ガレージは屋外扱いとなるため「室内から屋外側へ開くドア」しか付けられない。要するに,玄関や勝手口と同じなのだ。ガレージ以上に狭い玄関のスペースを食ってしまう問題もある。
 その次に考えたのが引き戸に変更する手だ。引き戸ならばドアを開けるためのスペースは必要ない。ところが,使用できる引き戸が普通の窓に使うような引き違い戸になってしまう。玄関の中に,唐突に引き違いのサッシがあったら非常に格好悪い。さらに,ガレージ側から鍵をかけられないという機能上の欠点もあるため,この案はボツに。

2つのアイデア
 延々と話し合ったが,うまい解決法がなかなか出てこない。2時間近く話してから,設計のM氏が出したアイデアが,折り戸を使う方法だ。折り戸とは,風呂場の出入り口に使うような,真ん中から折れるタイプのドアのことだ。
 これなら,開いた時に必要なスペースは普通のドアの半分程度で済む。その分,階段の幅は詰められる。ただし,屋外出入り口に使える折り戸があるかどうかは,すぐには分からないという。需要があまりないため,メーカーが生産していない可能性が高いそうだ。というわけで,この案は調査することで保留となった。
 もう1つのアイデアは,特注の極端に狭い幅のドアを作ってしまうことだ。当然,開口部は55cm程度になり,出入りはしにくくなるが,階段は60cmまで狭められる。特注とすることで,規格品には存在しない幅にも対応できる。結局,この2つの案で検討し,次回の打ち合わせで結論を出すことになった。
 どうして,小さなドアと階段を付けるという単純なことに苦労するのか。もどかしい気持ちが募る。木造の注文住宅ならまた事情は違うのかもしれないが,さまざまなパーツが規格化されたプレハブ住宅では,施主の注文に対して柔軟に対応することが簡単ではないということを思い知らされた。
prev  return  next