大型2輪教習日記 第6回
卒検には魔物が棲むのか?
信じられないミスで茫然自失

 11月15日(日)にすべての教習が終わったので,次の週末に卒業検定を受けるつもりだったが,あまり間が空くのも良くないと思い直し,19日(木)の卒検を申し込んだ。卒検の前夜,車がいなくなった公園の駐車場でスラロームや一本橋のリハーサルをする。1時間近く練習して,まずまずの感触を得られた。これなら明日はなんとかなりそうな気がする。

11月19日 卒業検定
不吉な受験番号
 卒検は朝の8時20分集合。朝に弱い私には辛い時間だ。教習所に着くと,検定のコースと受験番号が張り出されている。私の番号は13番。いきなり不吉な予感…。コースは外周外回りから出発する第1コースだ。検定は人数が多いので4人ずつに分かれて行う。それぞれのグループに検定員が付くのだ。
 13番の私が走るのは一番最後だ。寒さと緊張の中,30分以上待ち続けていると,どんどん体が硬くなっていく感じがする。どうでもいいから早く終わらせてくれ〜,と思いながら,ひたすら順番待ちをする。他人の走りを見ると調子が狂いそうなので,できるだけ見ないようにする。
 いよいよ順番が回ってきた。卒検ではまず最初に準備走行がある。大型2輪ではコースを半周してから,スタート地点に戻り,そこから検定が始まる。準備走行は採点の対象にならないから,たとえ途中で転倒しても大丈夫だ。もっとも,検定の前に転んだら,ショックでまともに走れないだろうが。
 スタートしてまずは法規走行だ。外周や内コースの交差点などを走る。ここは無難にこなして外周の途中から波状路に入る。ところが,こういう入り方は教習中にしたことがない(教習中は検定コースを走れない)ので,危うく行き過ぎそうになる。ただし,コースを間違えても減点にはならない。正しい手順で正規のコースに復帰出れば問題はない。

ゴール直前で茫然自失
 波状路からは課題走行が続く。坂道発進,スラロームと続いて一本橋だ。一本橋は落ちれば即検定中止なので,とにかく落ちないように少し早めに通りすぎる。でも,少し速すぎたか? まさか8秒を切っていることはないと思うが大丈夫だろうか。ここまで減点はほとんどないはずだから,2秒足りなくても10点減点で合格のはずだ。などと余計なことを考えているうちに,検定員が遠くで手を挙げている。急制動を始めろという指示だ。
 点数の計算などをしながら慌ててスタートしたら,無意識のうちにポンポンと3速までシフトアップしてしまい,メーターを見るとまだ30km/hしか出ていない。まずい,これでは速度不足だ。焦ってスロットルを捻り,ナナハンのエンジンが唸りを上げる。メーターの針はみるみるうちに上がり,45km/hを越えてもまだ上昇しようとする。やばい,今度はスピードオーバーだ! スロットルを戻した時には,もう制動開始のパイロンに差しかかる時だった。フルブレーキング! ギョワ〜〜〜という音を出しながらリアタイヤはロックし,240kgのナナハンは滑っていく。フロントまでほとんどロックしかけながら,止まったところは…。フロントタイヤが半分,制動限界線を越えていた。
 一瞬,何が起きたか分からないほど茫然とした。今まで一度だって失敗したことがない急制動で止まれないなんて。もちろん一発で検定中止だ。身体中から力が抜けていく。こんなところでミスするなんて信じられない。急制動が終わったら,あとは100m走って発着点に戻るだけだったのに…。
 バイクから降りても,しばらく動けないほどショックだった。急制動の前まではたいしたミスはなかったはずなので,余計に衝撃が大きかった。検定員がやって来て,「最後まで加速していたら止まれないよ」という。その通りだ。検定員は検定終了後にアドバイスをするが,合否は決して言わない。でも,検定中止なので結果は明らかだ。「ほかには何かありましたか」と聞くと,「一本橋が少し早かったな。それくらいです」とのお答え。やはり,急制動の失敗さえなければ合格できたような雰囲気だ。
 その後の30分はさらに辛かった。合格発表まで待たされるのだが,落ちているのが分かっているのに待たされるのはやるせない気持ちになる。私を含めて16人中5人が不合格だった。今すぐもう一度卒検を受けさせてもらえれば受かりそうな気がするが,世の中そんなに甘くはない。2時間の練習が待っているのだ。

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