交通事故のミステリー |
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交通事故鑑定人という職業をご存じだろうか。個人や裁判所の依頼を受けて、交通事故の状況を科学的に分析、再現する専門家のことだ。そうした交通事故鑑定人の草分けであり、権威でもある江守一郎氏が一般人向けに著した「一瞬の死角」と「交通事故のミステリー」は、ライダーもちろんのこと、バイクに乗らない人にもぜひ読んでほしい良書だ。
「一瞬の死角」は、高速道路での事故からひき逃げ事件まで、豊富な事例を挙げて様々な事故原因を分析。どこにでも事故の危険性が潜んでいることを教えてくれる。 バイクと車の右直事故や左折巻き込み事故など、二輪車の事例も数多く取り上げられていて、ライダーにとっては大変参考になる。著者の江守氏自身、事故解析のために限定解除までして免許を取ったほどで、ライダーへの気遣いが感じ取れる。例えば、高速道路でクレーン車の直前を走っていたバイクが、横から進路変更してきたトラックに巻き込まれた事故。この事例では、隣りの車線からは大型車の前方に死角ができ、見落とされる危険性があることを知ることになる。 「一瞬の死角」が交通安全啓蒙ためのテキストという体裁なのに対して、「交通事故のミステリー」は被害者や加害者など関係者の人間模様まで織り込んだ読み物に仕立てられている。こちらも、冒頭からバイクが車に追突された事例で、後の鑑定によって加害者のドライバーがウソをついていたことが暴露される。 もうひとつ、江守氏の著書ではないが、彼の鑑定事例をネタ元にしてコミック化されたのが「交通事故鑑定人 環倫理一郎」。コミックに登場する事例は、前述の2冊をベースにしているようだ。独自の登場人物を設定してストーリーを展開しているため教科書的な読み方はしにくいが、マンガを楽しみつつ事故の事例も知りたい人には良いだろう。 ◆ ◆ ◆
これらの書籍を読んだからといって事故に遭わないわけではないし、実際、僕がこんなことを書いてもいまひとつ説得力がないだろうが、事故の事例は知っていて損することはない。「こんなことで事故が起こるのか」という発見もある。繰り返しになるが、ご一読をお薦めする。 |
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