看板を背負って走ること
 都内の道ではバイク便をしばしば見かける。仕事柄、バイク便に配送を頼む機会も少なくない。そうして接しているバイク便のライダーを見ていてつくづく思うのが、「ソクハイのライダーは群を抜いてマナーが良い」ということだ。
 ほかのバイク便は細い道でもガンガンすり抜けしていくし、車の間を縫うようにジグザグ走行する者までいる。急いで荷物を届けるのが商売だから仕方ない面はあるが、あまり誉めれた運転ではない。ところが、ソクハイのバイク便を注意深く見ていると、すり抜け走行するライダーがとても少ないことに気付く。幅が広くて余裕のある幹線が渋滞している時は、さすがにすり抜けすることもあるが、基本的には車の列の後に着いて待っている。これはなかなかできないことだ。
 僕の勤務先のビルは前が一方通行で、そこにソクハイのライダーがバイクを停めることがよくある。ほんの数メートルで幹線に戻れるから、ちょっとだけ逆走して道に出たくなるのが普通だ。しかし、ソクハイのライダーはバイクを押してUターンし、幹線に出てからエンジンをかけて走り去った。彼らは請負件数で給料が決まるのが基本。先を急いでいるはずなのに、交通ルールを律儀に守るところが偉い。
 バイクを降りてからも、接客態度は礼儀正しい。あるバイク便のライダー達はビルの裏手にたむろしてタバコを吸っていたが、もちろんソクハイでそんな人は見たことがない。運転マナーにしろ、接客態度にしろ、よほど教育が行き届いているのだろう。ソクハイのライダーには、年配者が多く見られることも関係があるのかもしれない。
ソクハイは業界のパイオニア的存在
 猛烈な速度で走ったり、強引にすり抜けしているバイク便のライダーは、自分が背中に看板を背負っていることを忘れてはいけない。料金が安くて早く届けばいいというものではない。それでは事故を起こしたJR西日本と同じ。企業がどんな姿勢で社会と接しているのか、看板を背負ったライダーが教えてくれる。

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