ライダーズウォッチ
レース観戦の気分を盛り上げるフライバッククロノグラフ
---AIRSPEED FLYBACK BIGDATE ---
 過日、古本屋で「赤いペガサス」の文庫版を買い込みました。言わずと知れた村上もとか氏の名作コミックです。1970年代のF1レースを舞台にした物語で、30年ぶりに読むと懐かしいのと同時に、僕のモータスポーツ好きの発端はここにあったのだなあと感じます。学生の頃は、テレビで放映されるF1やF2、耐久レース、鈴鹿8耐などをワクワクしながら観ていたものです。特に80年代後半のグループCカーは格好良かったなあ。
 ところが、どういうわけか「サーキットにレースを見に行く」という発想がありませんでした。テレビの中で繰り広げられるレースは、赤いペガサスの舞台と同様、どこか遠い世界のものという感覚がありました。そんな僕も、今は結構サーキットへ足を運ぶようになりました。ツインリンクもてぎでWGPが開かれるようになってからは、ほとんど毎年観戦していますし、息子にせがまれてSuper GT(旧JGTC)のレースを見に行ったり、友人が出る草レースで応援したりもします。
 最近、レース観戦の際に身に付けている腕時計が、レビュー・トーメンの「AIRSPEED FLYBACK BIGDATE」です。このダイヤルを見てください。無反射ブラック塗装の文字盤に配された3つのインダイヤルと赤いクロノグラフ針。針はすべて根元が塗装された、お約束の航空計器タイプ。そして、12時位置にはデジタル表示を思わせるビッグデイト表示があります。ジェット機の計器やレーシングカーのインパネを想起させるダイヤルを見ていると、自分がパイロットやレーサーになった気分になります。
 おまけに、AIRSPEED FLYBACK BIGDATEは内部のメカニズム面でもユニーク。名前にある「フライバック」とは機械式のパイロットウォッチに特有の機能で、クロノグラフのリセットボタンを計測中に押すと、3本のクロノグラフ針が一瞬にしてリセットされ、すぐに計測を再開する機構のことです。
 レース観戦中にラップタイムを計る時、普通のクロノグラフではストップボタンを押すと計時が中断するので1周おきにしか計れませんが、フライバック機能を使うと毎ラップ計測できます。実際にはタイムの読み取りには慣れが必要で正確性にはやや欠けますが、レース観戦には十分です。
 ちなみに、腕時計に興味のない人にはどうでもいいことですが、AIRSPEED FLYBACK BIGDATEはJaquet S.A.のJ8151という珍しいムーブメントを採用しています。Valjoux 7750をベースにフライバック機能とビッグデイトを追加したセミコンプリケーションムーブメントです。エンジンのようにたくさんのギヤやレバーが組み込まれた複雑な機械が内蔵されていると思うと、時刻を確認するたびにニヤリとするわけです。
AIRSPEED FLYBACK BIGDATE
AIRSPEED FLYBACK BIGDATEのダイヤルが何に似ているかと言えば、それはもちろん高度計。デジタル表示と指針表示を組み合わせたところなんかはそっくり。さすがは航空計器を生産するREVUE THOMMENの製品だ。カタログにはなぜかフランスの戦闘機、MIRAGE 2000とパイロットの写真が載っている。ムーブメントなどの詳しい情報は「ライダーズタイムピース」で書きます。


新しくなった富士スピードウェイにて
これは富士スピードウェイでの一コマ。強烈な陽射しの下でも、特殊な両面無反射コートのおかげで視認性は抜群だ。フライバック機能でラップタイムを計測すれば、気分はレース解説者。


分厚いケースとブレスのせいで重量は相当なもの
実はこの腕時計、バイクに乗る際に着けたのは一度だけ。複雑な機械式ムーブメントを収めたケースが分厚いため、ライディングには向かない。あくまでもレース観戦用スペシャルということで。




REVUE THOMMEN(スイス)
AIRSPEED FLYBACK BIGDATE(Ref.16085.6134)
自動巻き、ステンレスケース/裏スケルトン、ステンレスブレスレット、サファイアクリスタル(両面無反射コーティング)、クロノグラフ(フライバック機構付き)、日付表示(ビッグデイト表示)、10気圧防水、標準価格42万円(2004年)

---「ライダーズウォッチ」のシリーズはほかとは異なる語り口にしています---
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