バイクにエアバッグが付いた日
 およそ1年前、「バイクにエアバッグが付く日は来るのか?」(第十一回)と題して、二輪車の安全装備が遅れている点を指摘した。ところが今年の9月、ホンダは2006年に発売する「ゴールドウィング」に二輪車初のエアバッグを搭載すると発表した。今年の東京モーターショーで5年ぶりに関係者の話を直接聞けたので、ここで簡単に紹介しよう。
 エアバッグはゴールドウィングのダミータンク部に内蔵され、前面から衝突すると約0.060秒で展開する。転倒や側面衝突の場合は開かないという。車のエアバッグが主に体がハンドルに衝突するのを避けるのが目的なのに対して、ゴールドウィングのそれはライダーが前方に投げ出されて車やガードレールなどにぶつかるのを防ぐ役割を果たす。ライダーが投げ出されること自体を防げなくても、エアバッグがあれば速度を減殺し、傷害を軽減することはできる。
 ホンダは5年前のASVから研究開発を重ね、ようやく実用化にこぎ着けた。関係者によると、同社の米国向け自動車の助手席用エアバックのエアバックとインフレーターを流用できたそうだ。今のところ搭載できるのはゴールドウィングだけだが、「シルバーウイング」のような大型スクーターには搭載できる可能性があるそうだ。スーパースポーツへの装備は課題が多いというが、今後の発展に期待したい。
 ちなみに、ホンダは同じくモーターショーに無段変速機を搭載したスポーツバイク(つまりスクーターではない)を展示。近い将来の販売を目指すと発表した。過去2回、本コラムでバイクとATの可能性を論じたが(第四回と第十六回)、ホンダは意外に早く実現してくれるかもしれない。4輪車で世界的な規模を誇るメーカーならではの開発力のなせる技なのだろう。
2006年発売のゴールドウィングに搭載
ホンダが2006年に発売する「ゴールドウィング」に搭載する予定のエアバッグシステム。全方位衝突実験施設や二輪車衝突テスト専用ダミーの導入などによって、量産二輪車初のエアバッグを開発できたという。

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