内臓を守る第二のヘルメット
 2005年の晩秋、一人のSRX乗りが事故で亡くなった。私が会ったのは一度だけだったが、多くのSRXオーナーに愛されていた人だった。ここで改めて哀悼の意を表すると同時に、事故の際に胸部を守るボディプロテクターの話をしようと思う。
 ライダーがヘルメットを被るのは当たり前。中には半キャップで走る若者もいるが、頭部を守るヘルメットが不可欠なのは誰でも知っている。しかし、実際の事故では頭だけでなく、胸や腹を強打することで肺などの内蔵を損傷し、死亡するケースも多いという。特に自動車と衝突したときに、その可能性が高い。先のSRX乗りは、肺挫傷を被ったと聞いている。
 かく言う私も、信号無視で右折してきた車とぶつかったときにはバイクから前方へ投げ出され、トランクの上を飛び越えて道路に落ちた。衝突個所がもう少し車の前方であれば、胸からルーフに激突していたかもしれない。
 こうした事故からライダーを守るためにホンダは2輪用エアバッグを開発したが(第十八回参照)、まだ普及していない。一般のライダーが胸部を守るにはボディプロテクターが有効だ。事故で懲りた僕が購入したのは、ホンダのボディプロテクター付きベスト「TH-B94」だ。前面に肋骨のような形をしたシェル、背面には分割タイプのプロテクターが付く。キモになるのは胸部を守るポリプロピレン製のシェルで、中空構造になっているため厚みがある割には軽い。これが事故の際に胸部と内蔵を守ってくれる。
 2005年の初め頃からボディプロテクターを着て走るようになった。初めは多少の違和感があったが、すぐに慣れた。それどころか最近は、たまにボディプロテクターを忘れて走り出すと、まるでヘルメットを被っていないかのような不安を感じるようになった。正直に言って真夏の着用は辛いが、これからはボディプロテクターを第二のヘルメットとして、可能な限り着用していこうと思っている。
「TH-B94」(ホンダ)
人工の肋骨のようなポリプロピレン製のシェルが内蔵を守る「TH-B94」(ホンダ)。着けてみると、意外にもライディングの邪魔にはならない。ベストはメッシュ地なので通気性は良い。シェルの位置は体格に合わせてベルクロで調整できる。

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