さくらがさいてる−来年も見なきゃ−  
   
黒煙をあげ過ぎ去るトラック 力なく立ちすくみ、
クラクションを無意味に鳴らし渋滞する自家用車 焦点無く見下ろしていた
咳き込みながら歩く僕 眼下に見える幹線路、黒煙は今も続いてる
   
何処へ行くわけでもなく これで楽になれる。
何処から来たでもなく すべての苦しみから開放されて
息苦しいこの街をとぼとぼとと歩いてる やっと自由が訪れる
  悲しんでくれる人がいる
両側のマンションは排ガスで壁がねずみ色 その人の為にがんばった
ベランダに洗濯を干す人さえいなくなった道路脇 それでもここが潮時だろう
きっと中には人の暮らしがあるのだろうけど ありがとう、そしてさようなら
そこまでして生きるより そう呟いた
いっそそこから飛び降りてしまえば  
もっと楽になれるのに 最後に辺りを見ておこう
  最後のこの世の思い出に
僕もきっと楽になれるだろうな 道路の向こうに公園が見えた
気がついたらとぼとぼと  
煤けた、狭い、薄暗い 一面がピンク色
そのマンションの階段を 真っ盛りのサクラの森
屋上まで上り詰め、柵を乗り越え、 花吹雪が天を舞い
さっきの道路を眺めてた 一面を鮮やかに染め抜いている
   
  不意に顔がほころんだ
  「バカだな〜来年もこれ見なきゃ」
  やさしい心が僕に呟く
  もう一度柵を乗り越えて
  力強く階段を降りた
   
  2002.3.3
  けんちゃんの詩集