けんちゃんのお喋り

21世紀型の管理部門のあり方について

21世紀型の管理部門のあり方として最重視すべきは『リスクマネージメント』だと思います。ここから21世紀型の管理部門のあるべき姿は各セクションからの提案に対するリスク情報とヘッジ技術の発信基地としての役割を担う姿だと思います。

1990年代から頻発したいわゆる一流上場企業の不祥事は経営上、故意に隠匿したと思われるものも存在しますが大部分が管理部門のチェックが正確に行われていたならば防げたものでしょう。

時代は変わり、社内の不祥事その他の事象をいかに『正確に早く』ディスクローズするかがこれからの企業のあるべき姿となりました。たとえば『自動車のリコール事件』『乳業の食中毒事件』などは、かつて『隠匿すること』が企業を救った時代を象徴する出来事と思います。あの事件は21世紀型の企業像を端的にあらわしていて『ディスクロージャーの時代』に背くことの危険性を世に知らしめました。乳業の食中毒事件後多数の食品メーカーが『異物混入』を発表し、それに対しての世の中は『勇気ある企業』との評価をしていたように思われます。20世紀型企業、あるいは世の中を語れるほどの経験を持つわけではありませんが、直感的にそう感じます。しかし不祥事自体が無いに越したことはありません。不祥事のディスクローズから一歩進んで21世紀型の管理部門のあるべき姿を『リスク情報とヘッジ技術の発信基地』としました。リスク情報を社内に発信することで不祥事の発生自体を極小化することのほうがよりこれからの企業像として理想的だと思います。万が一外部に発表する必要があるような自体が起こった場合も極小化の活動の中からいち早く捕捉することができると思います。

ここで『リスク情報とヘッジ技術の発信基地』としての役割を果たすには何が必要かという点をもう少し具体的に考えます。

まず、大切なことは如何にして会社のリスク情報を捕捉するが問題となります。会社は人と人とが集まった組織です。ひとは自らの失敗は語ろうとしないものです。できることなら自分一人の手の内で処理したいと考えるのが普通ですし一人で処理でき且処理すべき問題が大部分です。その中に潜む企業リスクを収集するには専門の担当者が常にチェックし『チェックされることが当たり前』の状態を作ること、事務処理レベルや個人の不正摘発ではなく『会社全体のリスクを生じるか否か』を基本に行い、チェックされることによる個人の不利益を極力少なくすることが情報収集のためには有効だと考えます。

次に収集した情報の利用方法です。先に例示した自動車や乳業のような大問題を発見した場合は即時に事象をレポートすべきですがそのような大問題がない場合のほうが圧倒的に多いと思われます。大問題がない通常の一例を挙げてみます。

契約において見積書の発行は通常、営業部で行われますが見積書においてある特約をしたとします。それは会社の交通事故による損害賠償による会社の損失負担を大きく変えるリスクを持っているものだとします。しかし『見積書』は営業部で完結し賠償金が多額になるリスクを負っていることを会社として認識する機会はなかなかありません。後日、仮にその契約において重大事故があった場合、会社は契約の相手方と事故の相手方に対して『従業員の個人的な』ものとはいえずその賠償金を支払い、会社に損害を与えたとして積極的な従業員を失うことになります。しかし事前にリスクを認識し対応していれば防げた損害です。管理部門としてこのリスクに対し『追加で保険をかけるか、リスクを承知で実行するか、またはこの特約を中止するか』を稟審するよう提案していれば上記のいずれも失わずに済んだと思います。

この例の『追加で保険をかけるかリスクを承知で実行するかまたはこの貸渡を中止するか』の提案こそが『リスク情報とヘッジ技術の発信』です。既に行った取引を後処理する管理部門から前もって捕捉し最善の策を提案する管理部門へ変貌した姿が21世紀の管理部門だと思います。さらにこの発信活動が『コンサルティングの場』になってゆけば、各セクションからの提案を関係する各部署へ連絡しテーブルを用意することで先の例のようなリスクを回避しかつ会社の各種規制が業務の障害となることも押さえられると思います。

1998年ごろから行政も護送船団と呼ばれるものからルール監視型へ変貌しつつあります。企業リスクのマネージメントは企業自身が行うべき時代が21世紀だと思います。これからの管理部門が担うべき役割はやはり『リスク情報とヘッジ技術の発信』、受身ではなく発信してこそ存在価値がでる時代だと思います。