阪神大震災(2)まえ (つづき)

地震で壊れたガラスなどを片付け終わって昼食を囲んでテレビをつけたとき一家は絶句した。
 「神戸が火事や!」
 そう、それは家が火事なのではなく神戸の町がまるで山火事のように燃えていた。ぼく達がいるのは豊中。神戸まで自動車で30分ぐらいの距離だ。僕経ちも大きな地震だと思っていたがそこにあるのは全く別の次元の「燃え滾る街」でした。僕達はどうすることも出来ずただ、呆然とテレビを見ていました。食事のてもとまりみんな冷めたお茶碗を片手にとんちんかんな方向にお箸を向けて、ただ呆然とブラウン間のなかの映像を眺めていました。
 覚めきったお茶碗に気が付いて「電話してみる。」と僕が立ち上がったのは一体何分あとだったのかいまも分かりません。
 それから、10分置きに尼崎に住む当時の彼女の家に電話を掛けつづけたのですがずっと話中でした。僕は「話中なら生きてるんだ!」と喜んでいました。回線がつながらない時「話中になる」ことなんて知らなかったから。
 痺れを切らしてさっきのレンタカーに乗って彼女が住む尼崎に向いました。もう、辺りは真っ暗で夕方の5時を過ぎていました。
 彼女のマンションの下にレンタカーを止めて車を降りるとガスが充満したにおいが経ちこめていました。タバコをすいたかったけど怖くてガマンしました。マンションの隣に合った木造2階建てはきっとこれがその残骸だろうという木材の山に成っていました。電気が無いので辺りは真っ暗です。しかし懐中電灯も無くライターをつけることもできず。壁伝いに僕はマンションの階段を上って行きました。
 「大丈夫か!」ドアを空けるなりそう叫ぶと中から「ふ〜ん」と力無く声が聞こえました。「とにかく今日は俺の家に泊まれ。したくしろ。」といって彼女を車に乗せ僕の家に連れて帰りました。少し走ったところでタバコすっても大丈夫だよというとズットすっていたと言う。爆発しないで何よりだと思った。一息ついてから彼女はさっき家の中でガスのせいだろう意識が朦朧としていたといった。危ないところだったのかもしれない。ただ、眠かっただけかも知れない。永遠の謎ができた。

つづき