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Cell_雀 不定期コラム 第四弾!
 
Cell_雀のやれない会社、いらない会社 前編
 
 
 
 
 
SEという仕事柄、いろんな会社を訪れる機会が多いです。
 そしてその度に思うのが、
 「世の中には、ほんっとに…いろんな会社があるんだなあ…」
ということです。


ドキドキCクラブ © GEN MUTO

 先日、訪問した二つの対照的な客先をご紹介します。

「Cell_雀のやれない会社」

 企業向けの電子機械を販売代理している某商社に、とあるシステムのデモンストレーションをするために営業と二人で出かけたときのことです。社長さんが忙しい方で、たまたま空いたスケジュールの合間をぬってのデモンストレーションということで、私も朝から緊張していました。
 
 客先に着き受付カウンターの扉を開けたとき、ムワッとした熱気にも似た濃い空気が、私たちを出迎えてくれました。鳴り響く電話のベル、まくし立てるような応対、忙しく飛び交う社員たち…。もうじき昼休みだというのに、まるで蜂の巣をつついたような大騒ぎです。
 担当者と思われる中年の男性に、営業が取次ぎを願うと、奥から大仁田厚そっくりの大男がのっしのっしと歩いてきました。
 「紹介します。うちの社長です」
 眼光鋭い大男は、こちらが差し出した名刺を無造作に受け取ると、さも時間が惜しいといった感じで、
 「じゃ、さっそく見せて! すぐやれるの?」
矢継ぎ早にしゃべります。
 「では、すぐにデモ環境を用意しますので…」
 社長の席に置かれたデスクトップPCにデモ環境を用意しながら、
 「このPC…ほとんど使ってないみたいだな…」
ふと周りを見渡すと、社員たちのPCもほとんどが使用していないか、電源すら入っていません。
 「PC使わなくても別に困らないんだなあ…」
そんなふうに思いました。
 そのとき壁に貼られた、その会社の一日のタイムテーブルに目がとまりました。
 「なんだこの会社…休憩時間が六回もあるぞ!?」
 そう、その会社では、一時間のうち五十分働いたら十分休憩、これを朝から晩まで、ずーっと繰り返しているのです。(学校か…ココは…)
 「たしかに、これだけハードに働いてたら、小まめに休憩とらないとブッ倒れるわな…」
 そう勝手に納得し、デモ環境をすっかり整えた私は、営業と共にどこかに行方をくらました社長の姿を追っかけました。すると、オフィスの反対側で忙しそうに帳簿をめくる社長の姿が…。
 
 とりあえずジーッとしながら、社長の用事が終わるのを待っていた私たちと、一人の若い女子事務員の目が合った瞬間のことです。
 「! しゃっちょおおおーーー!!」女子事務員のドスのきいた怒号が炸裂します!
 「うおおっ! ちょっとまっとれやあああーーー!!」むこうで大仁田厚が怒鳴り返します。
 目をパチクリさせている私たちに、
 「おお! すぐできる!? すぐに始めて!!」
のっしのっしと歩いてきた大仁田…いや、社長さんが言います。
 「ええ…、では早速、システムの概要説明を…」
 普段以上に緊張しながら、社長さんにシステムの大枠を説明し始めたときでした。
 「社長、○○産業の××さんからお電話です!」
 間髪いれずに受話器を取った社長は、それから延々と十分以上も話し続けました。
 「はい! はい! はい! わーかりましたああ! 失礼します!!」
やっとこせ、話の終わった社長に、説明の続きを始めます。が…、三十秒も経たないうちに…、
 「社長! 先月の△△△の件ですが、まだ入金されてません!」
 資料を片手に持った、営業と思しき男性が割り込んできます。
 「あほんだらああ!! お前が行ってきっちり確認してこんかいいい!!」またもや中断です。
 それからもずーっとこの調子で、電話はしょっちゅうかかるわ、社長はしょっちゅう席を外すわ…、一分と続けてデモをすることができないのです。
 まともな説明などとっくにあきらめた私は、とりあえず思いっきり大雑把にシステムの概要部分だけ、なんとか話し終えると、後頭部に軽い眩暈をおぼえたのでした。
 「ふーーーん。 ウチで使いこなせるだろか? とりあえず考えとくワ」
 多分機能の半分も理解していないであろう社長は、それだけ短く言うと、後を担当者に任せて慌しく事務所を後にしたのでした。
 
 デモ環境のアンインストールと機材の後片づけをしている私たちの前で、先ほど怒号を張り上げた女子事務員が昼食を取り始めました。
 そして多分…この日初めて、起動させたと思われるPCでおもむろにメールチェックをし、そのままソリティアをやり始めました。
 暖かい日が続くとはいえ十二月になったばかりのオフィスで、彼女はスパゲティをパクつきながら、
 「あっつううーー!!」
 そう言って上着を脱ぎだしたのです! タンクトップ一枚の格好になった彼女は、スパゲティをむさぼりながら延々とソリティアを続けていました…。

 客先を後にした営業と私は、駐車場に向かって木枯らし舞う十二月の街角をトボトボ歩いていました。

 「あの会社ではCell_雀はやれない…いや、そもそもPCをさわってる時間が無い…」
 私は先ほどまでの狂ったような喧騒を思い出しながら…、ふとそんなことを考えていたのでした…。

 次回は、「Cell_雀のいらない会社」編です!
  

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