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  フリーソフトの昔と今

アスキーネットやNIFTY−Serveなど、パソコン通信が全盛の時代から、フリーソフトというものは存在しました。当時はまだ、限られたネットワーク内のみでの配布でしたが、無料で使用できるソフトウェアの存在は、パソコン通信の利用者に大いなる称賛を持って迎え入れられました。

それもそのはず、当時はソフトウェアの供給量が絶対的に少なく、ソフトウェアを開発すれば"お金になる"のが当たり前の時代だったのですから。


さるも木から落ちる SHARP MZ-700版 (C)ハドソン Hudson Soft

有名な話では、大手ソフトウェア会社のハドソンが、雪深い北海道の山奥、当時はまだ兄弟で細々と営業していた時代。

「サルも木から落ちる」というゲームソフトを開発し、パソコン雑誌(当時はマイコン雑誌と呼ばれていました)に広告を掲載したところ、全国から注文が殺到し、毎回たくさんの現金書留をしょってやってくる郵便局の局員の人がサンタクロースに見えた(笑)という、伝説があるくらいです。
 ※NHK制作 「電子立国の自叙伝 第4回ビデオゲーム 巨富の攻防」 より

このように、「ソフトウェア=お金になる」時代には、開発したソフトウェアをただ(無料)で配布するということは、ナンセンスでばかげた行為と受け取られたのは、致しかたないところでしょう。

1990年代の半ば、パソコン通信からインターネットへと大きなパラダイムシフトが起こり、ソフトウェアの供給量の絶対数も増えてくると、シェアウェアによるソフトウェアの販売形態が人気を博してきました。

シェアウェアは、大手ソフトメーカーがパッケージソフトを莫大な資金力によりマーケティングや営業戦略を行い流通経路に乗せて販売するのに対し、個人が、インターネットという新しいメディアの伝達力を利用して、ほとんど費用をかけずに、自分のソフトウェアを宣伝、販売できるという理想的な形態でした。

Vectorなど、オンラインソフト流通サイトはここに目を付け、シェアウェア、フリーウェアを次々に掲載(登録制)、ダウンロードできるようにし、一気に大手ソフトウェアポータルサイトの座を確立していったのでした。

これにより、ソフトウェアの供給量は爆発的に増え、以前ではシェアウェアでないととても割にあわないと思われていたソフトウェアまで、フリーソフト化し、無料で配布されるようになっていったのです。つまり、ソフトウェアに対する全体的な価値の総量は目減りし、ソフトウェアは高機能なものを望まなければ、フリー(無料)で手に入る、という時代に突入したのでした。

そして現在、ありとあらゆるジャンルのソフトウェアがフリーソフトとして配布され、どうしてもパッケージソフトを買わなければならない、と思われるソフトウェアはほんの一握りになってきました。

今やOSから、オフィススーツ、高機能のグラフィックエディタやブラウザ、ゲームソフト、すべてフリー(無料)です。有料のソフトウェアを購入する場合、どうしてもそのメーカーのそのソフトウェアでなければ困る、といったケースに限られてしまうようになりました。

この先、この流れが元の流れに戻るということは、おそらく考えられないでしょう。

ソフトウェア業界は、パッケージソフトを販売する以外に、なにかしらの収益を得るシステムを獲得する必要に迫られ、また大手以外の弱小ソフトウェアメーカーは、吸収合併または会社(ブランド)ごとの売却といった方法でしか、生き残るすべはなくなってくるのかもしれません。(それを生き残りと呼ぶことができればですが…)

この手のパラダイムシフトは、なにもソフトウェア業界だけの話ではなく、出版業界、新聞、テレビ、その他多くの旧マスメディア、また中間搾取形態の仲介業でも起こっている話ですので、ここで取り扱うべき性質のものではないのかもしれません。

一つ言えることは、昔は作っただけでお金になったソフトウェアが、今はタダ(無料)で配ってもなかなか使ってもらえない、という事実が、私たちソフトウェア開発者の目の前に突き付けられているという現実です。

つまりこれからのフリーソフト開発者は、ただソフトを作るだけではなく、より高機能でユーザビリティに優れ、さらに積極的に宣伝していかないと、せっかく作ったソフトを使ってもらうことさえできないという、不遇な時代のまっただ中にいるといえるでしょう。



しかし同時に希望もあります。フリーソフトとはいえ、人気を博し、大きなシェアを獲得すれば、ビジネス展開ができる可能性が残されているのです。

それも、シェアウェア、パッケージソフト以上に、ビッグビジネスになる可能性が…。このサイトでは、そういったフリーソフトの可能性についても言及していきたいと思います。

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