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今回はゲームマーケット前の作業期間ということで特集記事です。Essen参加記念ということで、今回は OKAZU brand 特集をお送りします。
まず最初に、OKAZU brand とその周辺状況の簡単な紹介でも。
OKAZU brand は創作ゲームのブランドです。2007年に立ち上げられ、ゲームマーケットで作品を出展しています。鉄道ゲームを中心に、いろいろなジャンルをこなすデザイナーだと思っています。テストプレイに参加していることもあり、多作という印象があります。
このサークルを紹介する上で外すことができないのは、横浜ラボの存在です。こちらでは「横浜ゲーム会」でいろいろとレポートしていますが、OKAZU brand や Hammer Works の創作ゲームのテストプレイは主にここで行われています。ゲームの観点から、舞台設定の観点、撮影などいろいろな環境がそろっています。
それでは、作品を簡単に紹介していきましょう。
OKAZU brand は最初は、Hammer Works内の別ブランドとして出展していました。そんななかの最初の作品は、「サクリファイス」です。エリアマジョリティーの多人数アブストラクトゲームで、高い得点にコマを置くためには低い得点のコマを犠牲にしなければいけないというゲームです。
この作品は、仙台某所でプレイされていた作品でした。作者とはその頃からのつながりがあります。5人専用のゲームでしたが、人数を変えてもプレイできるようになっています。
攻めどころと守りどころが悩ましく、下手に妨害すると、第三者が得をするという不思議な感じのゲームです。この手のアブストラクトは、デザイナーの持ちジャンルの1つだと思っていたりとか。
バッティング系のカードゲームですが、せこく得点を稼ごうとするプレイヤーは損をするようにデザインされて、そのようなタイトルがつけられています。
数字カードを同時公開し、合計数の少ないプレイヤーに、数字と出したカードの枚数に応じた得点が入るというものです。プレイ感覚としては「シット!」あたりに近いでしょうか。大量得点のチャンスもあります。手軽でかつ、ジレンマが味わえるカードゲームです。
2008年から2011年春までは、Hammer Worksと合同で大型ブースで出展していました。
アクションパズルゲームです。同名の作品が出てしまいましたが、こちらの方が早くに完成しています。その名の通り「メイクンブレイク」を木製のダイスでやってしまおうというものです。
このゲームのポイントは、木製ダイスので触りのよさもありますが、出目の 2、3、6は方向が決まっていることにあります。通常のダイスしか使いませんが、この差は意外と大きかったりします。コンポーネントにこだわるのも OKAZU brand の方向性のひとつだと思ったりとか。
もうひとつの作品は、2人用アブストラクトの「10カウント」です。カードを1枚選びそこに数字の分だけコマを取り、取ったコマの色と個数に応じて得点を競います。カードの数字の小さい方が先に動けるというのがポイントです。シンプルだけと、悩ましいという感じのゲームに仕上がっています。
コマ55個と、カード10枚というシンプルなコンポーネントでもゲームができるという例ですね。55の数字もうまくできていて、2人で絶対に同数にならなかったりします。
お次は、握り合いのコマ配置ゲームの「ナナホシ」です。個数が少ないほど先にコマがおけて計算しやすいですが、得点計算の時にトップに入るとボーナス特典がもらえるため適度に散らす必要が出てきます。
配置したコマが無効になるアリますや、ボーナスがもらえるマスなどうまく到着地点を読みつつ得点を積み重ねていきます。大量にコマを使えばいいというものでもなく、同じところにコマを過剰においても意味がありません。コマを使い切ると終わりですが、コマを大量に残しても、最後に自動的に配置されるだけになってしまいあまりおいしくありません。
その次は、Asmodeeからの発売も決定した「ひも電」です。これは、ゲームマーケット向けの材料の買い出しをしているときに、これは使えそうだというアイデアから形を変えてできあがった作品と聞いています。
他に似たようなものがないゲームですが、鉄道ゲームですね。陣取りの要素もあります。自分の起点となる駅から他の駅へと路線をつなげていき得点を稼ぐゲームです。路線をつなげるのにはタイトルの通り「ひも」を使います。
実際にプレイしていくと、中心となる駅には路線が集まっていきます。本当に町を作っているようなそんな感じがします。回りで見ていても何となくどんなゲームかが分かるのもいいところですね。本質は陣取りのゲームなので、うまく他の路線に乗り入れられるような場所を確保して、攻め込んでいくというのも必要になります。
1本だけ入っている長いひもはチャンスにもなりますが、温存しすぎても活用できなくなるのがポイントです。
この年の作品は、500円ゲームズもあり特に盛りだくさんだったような気がします。1つめは、再販も予定されている「EKIDEN」です。年始の風物詩、とある駅伝をモチーフにしたゲームです。「世界の七不思議」より前の作品で、ドラフトゲームの流れをちょうど先取りした感じになりました。
ドラフトの要領で選手を獲得し他のプレイヤーの動向を見ながらそれぞれの区間に選手を登用し、トップを目指すというものです。コースには上り坂、下り坂が設定されており、選手も得意なコースがあったりします。能力の高い選手、安定感のある選手など様々です。
ドラフトで能力の高い選手だけを集めたのでは勝てないというのがよくできています。能力値勝負ではあるのですが、規定の順位以内に入ったときのアップ値と、規定の順位以下の時のダウン値があり、能力の高い選手ほどダウン値が高めに設定されており、強い選手とぶつかると大ブレーキの危険性も出てきます。
ドラフトの戦略性もありますが、実際の選手登用もかなり重要です。能力が高い選手が集まらなくても、うまく登用すれば優勝のチャンスがあるのです。
お次は、2人用のカードゲームです。源氏と平氏に別れて要員を強化し得点を稼ぐゲームです。アブストラクト色が強いゲームですね。獲得した要員のポイントによって行動順が決まったり、規定の要員を集めると得点になったりと考える要所は随所にあります。基本的に戦力は同じなので、どこで攻めてどこで力を抜くかもポイントになってきます。
三種の神器も得点源ですが2人で 3個を取り合うので当然非対称になります。合戦ボーナスも得点源になりますが、あとになればなるほど得点が高くなるのもポイントですね。派手なぶつかり合いというよりはじりじりと追い詰めていって得点を稼ぐタイプのゲームだと思います。
500円ゲームズとして出展した作品で、競りゲームです。フルコースの料理を獲得していくのですが、無理矢理獲得できる権利を各プレイヤー1回ずつ持っているのが特徴です。フルコースの種類ごとに得点が分かれており合計得点を競います。
得点の高い料理は人気が集まるということで、いかに妥協して、いかに狙ったものを獲得するかがポイントになります。料理のイラストと、ランクごとの落差もなかなかよくできています。目で見てもおいしいゲームですね。
500円ゲームズの作品で、食物連鎖を題材にしたトリックテイキングゲームです。草食動物、ライオン、ハイエナ、ゾウのカードをうまく出して食物連鎖を保ちつつ得点を稼いでいきます。
基本はマストフォローのトリックテイキングですが、トリックを取ると獲得したカードの動物が住み着きます。動物は種類トップでボーナスが入ります。ただ、トリックを取ればいいというものでもなく、食物連鎖を保つのが重要になります。
草食動物を獲得すると草が減ります。草は単体で得点になりますが、草がないと草食動物は住み着きません。また、肉食動物は得点が高いですが、草食動物を食べる必要があります。食べられた草食動物は得点になりません。また食料がないと肉食動物は住み着きません。ゾウは単体で得点になり、肉食動物に食べられませんが草を大量に消費します。
あまりにもトリックを取りすぎても、えさとなる草や草食動物がいなくなり、結果として生態系が維持できず得点が大きく下がります。かといって草原だけでは勝てません。ギリギリのところをうまくつくのがポイントになります。
2011年からはゲームマーケットが春と秋の年2回開催になります。その前までは秋にテーブルゲームフェスティバルがありましたが、こちらはテストプレイの場で新作は出ていませんでした。
最初に紹介するのは 2009年の「ひも電」の続編で、輸送をテーマとした「ひも電 -輸送編-」です。ひもを路線に見立てて都市を結ぶのは共通ですが、今回の目的は必要な駅にものを運ぶことにあります。
アクションポイント制で、他の路線をオーバークロスしたり、ものを1駅運んだりするとアクションポイントを消費します。5種類のものをできるだけバランスよく運ぶことが目的になります。またミッションとなるものを運ぶと他の色の代わりになったりボーナス得点が入ったりします。
他の輸送ゲームだと、うまく遠回りをして距離を稼ぐという戦略があったりしますが、このゲームはものを運ぶのにアクションポイントがかかるのと、遠回りをしても得点は変わらないので、効率よい路線敷設が重要になります。
自分の本拠を配置することができ、早い者勝ちで1色の終着駅とすることができます。人数によっては普通の駅にしかならないこともあり、タイミングは重要です。また、山岳に置かれている緑の終着駅はゲーム中1つしか存在せず、ここを獲得するかオールマイティーで補うか、4色にまとめるかが戦略の分かれ目になります。
コミュニケーション系のゲームです。カードに書かれたお題のものや動物を人に見立てて、もっともお題に合ったものはどれか、他のプレイヤーとうまく合わせていくゲームです。
ジャンルはランダムで選ばれるのですが、とんでもない組み合わせになったり、無茶な感じになったりと、なかなか意見を合わせるのは難しかったりします。想像力をフルに働かせてという感じですね。
こちらもコミュニケーション系のゲームです。ある値段がお題になり、ランダムに配られた商品カードをつかって、その値段相当の商品をでっちあげてプレゼンするというゲームです。1000円の「弁当」とか、300円の「雑誌」という無難なお題になることもありますし、10円の「家」とか、5000万円の「スリッパ」とかといった無茶振りまでさまざまです。
商品はその言葉が入っていればOKというのがこのゲームのポイントで、10円の「家」だったら「モノポリーの家コマ(プラスチック製)」とかということもできたりします。とっさの判断が問われるゲームですね。
2011年秋のゲームマーケットから OKAZU brandは単独で出展しています。といっても合同出展でも独立出展でも作品の制作は完全独立なのであまり変わらないのですが。この回の作品は、小箱のカードゲーム2作品と「ひも電」の再販ですが、急に作品数が増えた印象があります。
「TRICK OF THE RAILS」は18xxシリーズといった鉄道ゲームをモチーフにしたトリックテイキングゲームです。株式ラウンドと運営ラウンドに分かれており、トリックで出したカードとその結果によって変わってきます。基本はマストフォローのトリックテイキングです。
株式ラウンドでは出したカードが株券として手元に残ります。ただし、トリックの勝者はストックの株券と交換します。カードはその会社の路線と共通のため、株式ラウンドでカードが出ると、得点が伸びなくなってしまいます。
運営ラウンドは、会社の路線を延ばしていくラウンドです。トリックの勝者は列車を配置したり、追加の駅を配置したりする権利が与えられます。トリックに使われたカードはその会社の路線になります。
最終的に、全トリックが終了した時点で会社ごとの収益が計算され、持っている株式で収益に応じた得点が入ります。株式が発行されすぎると路線が敷設されずに得点が伸びませんし、短距離しか走れない列車は費用は安いもの収益が出ず、長距離を走れる列車はそれだけ費用がかかってしまいます。バランスよく運営するのがポイントになるでしょう。
この作品はこの年に開催された、「Ninty. & ソンタナオリジナルゲームコンテスト」のグランプリ作品です。
タイを舞台に、9日間のツアーを2つ組みます。ツアーには4つの種類があり、それぞれの種類でもっともポイントが高いツアーにボーナス特典が与えられます。魅力的なツアーは日数がかかり、自由度が下がってしまいます。また、9日をオーバーするツアーは組めないという制約があります。
カードを出して補充するだけなのですが、この制約がとても悩ましくさせています。さらに、手札に残ったカードについても得点の対象となり、余ったカードはペナルティーになります。
カードのデザインもテーマにうまく合っており、特にタイ料理がとてもおいしそうな写真になっています。プレイ時間はそれほど長くありませんが、作者らしい悩ましいカードゲームに仕上がっています。
この年の新作は1つ、秋のゲームマーケットより前からテストプレイをしていた、デッキビルド鉄道ゲームの「TRAINS」です。500枚を超えるカードと、2つのマップがついており、カードプレイで路線を延ばしたり、都市を発展させたり、カードの購入したりしていきます。
このゲームのポイントは「廃棄物」の存在です。基本的に得点につながる路線敷設や駅拡張、ビルの購入を行うと、廃棄物もデッキに入ります。このカードは除去しない限りは何の効果もありません。ルール上、デッキに圧縮がききにくい作りになっており、いかにうまくデッキを構築していくかがポイントになります。
また、ボード上での路線敷設のタイミングや、拡張された駅への乗り入れなどのインタラクションもこのゲームの特徴ですね。先に路線敷設をすると、他のプレイヤーが乗り入れるためには余計なコストがかかりますが、発展した駅に乗り入れできれば、そのまま得点も獲得することができます。
登場するカードの組み合わせとマップによる2段階のバリエーションがとれるのもこのゲームの特徴ですね。
2012年秋の作品も、テストプレイに参加したので簡単に紹介を。10種競技をテーマにしたデカスロンです。
プレイヤーは走、跳、投の3種類のカードが配られ、これをうまく使って競技にあったカードを出していき、上位を目指していきます。ただ、カード補充は順位が低い方が有利なので、いかに効率よく力を投入するかがポイントになってきます。
競技の実施順はあらかじめ決まっていますが、上位2名に入る得点はそのときにならないと分かりません。先を見据えてカード補充をするか、さっぱりあきらめて強いカードを入手するかが悩ましいところです。
OKAZU brand特集ということで、これを書いている時点までの作品を一通り紹介しました。鉄道ゲーム、アブストラクト、トリックテイキングの作品が多い印象がありますが、振り返ってみると、競り、コミュニケーションなどいろいろなジャンルの作品を作っていますね。
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