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● 東京横断鉄道ゲーム会 ●

 2009年1月31〜2月1日にかけて、東京横断鉄道ゲーム会を行いました。壮大なテストプレイも兼ねてということで、プレイ内容は控えめに、企画の起こりなども含めたレポートをお送りしましょう。


- 企画ができるまで -

 この企画はもともと、「アメリカ横断鉄道ゲーム会」(アメ横杯)が発端です。アメリカを舞台にした鉄道ゲームで、大会形式のゲーム選手権をやろうというものです。2007年に構想が立ち、第1回が、2008年の第2回では無事に7つのタイトルをこなすことができています。

 このときにプレイされたゲームは「トランスアメリカ」「乗車券」「ユニオンパシフィック」「蒸気の時代」「レイルバロン」「エンパイアビルダー」「1830」とどれも鉄道ゲームの名作といえる作品でした。

 そして、第1回のアメ横杯のあたりから、鉄道ゲーム熱が上がり、18XX系の東京版「18TK」のテストプレイや、それに触発されて「東京乗車券」を作成したりということもありました。2007年のTGFでその2作品と「トランスTK」がお披露目され、「18TK」と「東京乗車券」は2008年のゲームマーケットで頒布されました。

 ゲームマーケットが終わり、次の作成というときに、「エンパイアビルダー」は面白いけどプレイ時間があまりにもかかるということで、時間短縮を兼ねて東京版ができないかと試行錯誤した結果「東京鉄道網」ができました。

 そしてその頃、構想のあった「ユニオンパシフィック」の首都圏版となる「JNR(仮)」のテストプレイもおこなわれています。このあたりは 2008年の春から夏にかけてという感じですね。

 2008年の秋から、これも構想段階だった「蒸気の時代」の首都圏マップのテストプレイがおこなわれました。

 「レイルバロン」は「東京男爵」があったのですが、春から夏にかけてプレイした「ぷちばろん関西」に影響を受けて、こんなかんじならもっとプレイ時間を短くできる、と思い長い間頓挫していたレイルバロンの東京版となる「地下鉄漫遊記(仮)」を作りました。

 せっかくここまで来たら、2007年TGFの時の「トランスTK」についてもコンポーネントを作ってしまおうということになり、結果 7つのタイトルの東京版ががすべて出そろいました。

 ここまで出そろったら、東京版でアメ横杯をやろうということになり、「東横杯」開催の運びとなったわけです。こんなに早く実現するとは思っても見ませんでした。


- 1日目 -

●トランスTK (トランスアメリカの首都圏版)

 第1チェックポイントは、アメ横杯の伝統にのっとり、このゲームです。

 トランスアメリカとのルール的な違いはありません。マップは東京23区、東京都下、千葉、埼玉、神奈川の 5エリアです。基本的に難所は少なめなのですが、エリアを分ける川の存在と、とくに東京から千葉に向かう道の3本の川がポイントになってきます。

 トランスアメリカとくらべて、マイナスポイントが若干派手につくようになっています。明暗を分けやすいのは、埼玉の東西ブロックや、千葉の南北ブロックのあたりですね。この攻略タイミングが大事になってきます。

 この作品はそれほどプレイ回数は多くないので、プレイ中に新たな攻略ポイントが見つかったりもしました。確かにトランスアメリカではあまりやりませんが「トランスTK」では有効そうな作戦ですね。

 元が手軽なゲームなので、分かりやすい地名でさらに取っつきやすくなるのではと思っています。

 ちなみに、この作品のデザインは私ではありません。TGFの時のデータを借りてマップを再現し、さらにテストプレイで若干の都市の入れ替えをおこなったという感じです。

 プレイの方は、最初は大量失点が見られましたが、2ゲーム目からは攻略ポイントが分かったり攻め方を変えたりして、それほどおおきな差にはならなかったようです。まさかの4ラウンド目突入で若干時間が長引きました。

●JNR(仮) (ユニオンパシフィックの首都圏版)

 お次も、アメ横杯と同じ順番で「JNR(仮)」をプレイしました。私の作品ではありませんが、すでにTGFでお披露目されているので、ゲーム紹介をしましょう。

 ユニオンパシフィックとルール的な差分はあまりありませんが、登場する鉄道会社が、実在する鉄道会社になっています。原作は会社自体は架空の会社でしたからそのあたりが大きな違いです。そして、Union Pacificに相当するのが、日本国有鉄道(JNR)です。なので、マップ上にも国鉄(JR)の路線は書かれていません。

 都市と都市の間は1社しか入れないという制約はあります。また、特定の都市を特定の本数自社の路線で囲むと駅ビルが建ちます。これにより会社の価値を上げることができます。これが新要素ですね。

 初期の配置や、配置条件、都市の置き方が本当にそれらしくなっています。それでいて路線が延びるとこんなのがあったらいいなというのもできたりします。このあたりがこのゲームの面白さですね。

 今回はJNRの選択ルールを入れた状態でプレイしています。このルールを入れると、山札が常に回転するためゲームが若干早くなりますが、山札を引くリスクが下がるため、山札を引く選択肢が増えるのと、交換対象のカードが非公開のため秘密情報が多くなり、票読みがしにくくなります。

 まさかの5人中3人が京成でバッティングだったり、中盤の比較的早い時期に第2、第3の決算が立て続けに出たりと比較的事故の多い展開でした。決算立て続けは、JNRの株公開ができなかったものの、手をつけていた東武が独占のままの状態になり、その分の損失を埋めるに十分ではありました。

 最後の決算ももっと後になるかと思ったら比較的早いタイミングで出て、山札の半分くらいが残る早い展開でした。会社を育てるタイミング、会社の選択、株式公開のタイミングと悩ましいのがこのゲームですね。

●東京鉄道網 (エンパイアビルダーの首都圏版)

 お次は、第1回のアメ横杯でまさかの試合数減少の元となった「エンパイアビルダー」の首都圏版です。これは、私の作品です。

 ゲーム自体はアメ横杯が初めてで、面白かったのですが、プレイ時間があまりにもかかるため、うまく時間短縮をできないかといろいろと詰め込んだのがきっかけではあります。

 クレヨンで路線を引く、乗客を目的地に運んでお金を稼ぐ、列車をパワーアップさせるというのは従来通りではあるのですが、時間短縮のための工夫を随所に入れています。

 列車のスピードアップ、収入の増加、目標金額の低下といった数値的なものから、フェイズの順番を整理して、手番の間に考慮時間を取れるようにしたり、時間がかかる初期の路線を既成の路線から選ぶようにしたり、イベントカードをなくしたり、バランスを取るためにチケットを導入したりといろいろな面から調整をしています。

 その結果、6時間の標準プレイ時間が、半分の3時間まで短縮できました。

 首都圏マップならではというところでは、2つの大都市、新宿と東京がかなり近い場所にあることでしょう。最短路は地下鉄扱いのためコストがかかるようになっています。都心の都市数が多いのと、マップの都合で千葉県が大きく取り上げられていることも特徴のひとつです。

 運ぶものは、産物ではなく乗客でまとめました。ごく普通のお客さんから、スポーツファン、ギャンブラーなどその都市に何があるかが分かっていると攻略のヒントになるようなものも入れています。短距離中心のものから長距離でお金を稼ぐものまでいろいろとあります。

 今回は、比較的早い展開になりました。高収入の狙いやすい外国人観光客が珍しく登場せず、埼玉から東京湾方面への流れが読みやすい海好きもそれほどでなかったものの、マップ端から中央に向かいやすい、動物好きが猛威をふるいました。ここまで回数が運ばれたのは過去になかったかもしれません。

 ゲームを決めたのは、マップの端から端へ運ぶ房総住民と静岡県民の大量収入でした。比較的早い段階でコンボが完成していたのと、それに対抗できる前にゲームが終わったというのはあります。プレイ時間も2時間で明らかにいつもよりも早く終わった感じがしました。

 原作ではコーヒーなどの高額商品で起こりうる運ぶものがなくなるというのが、今回、静岡県民で発生しました。その手の乗客は種類が多く、なかなかバッティングすることはない(逆に中程度の収入が期待できる海好きとかがなくなることはある)のですが、今回は珍しいですね。

●蒸気の時代 首都圏マップ

 1日目の4戦目は「蒸気の時代」の首都圏マップです。こちらの原作は私ではありませんが、ボードのデザインで協力しています。構想は長かったと思われるのですが、実際にお披露目されたのはつい最近で、今回の7作品の中では一番遅いテストプレイ開始です。

 蒸気の時代といえば、マップごとの特別要素がありますが、この首都圏マップも山手線の扱いで2つの特別ルールがあります。縮尺を考えると山手線の都市の扱いが難しいのですが、うまく解決していると思いました。

 東京、埼玉、千葉を舞台にしており、山手線もあるので、比較的リンク数が稼ぎやすく、他のマップよりも経営は若干楽かもしれません。が、元が元だけに序盤がシビアなのには代わりありません。

 これから公開の作品なので、簡単な紹介ということで、ここからはゲームの流れを。

 今回は、荷物が全然かみ合っておらず、最初のターンで全員が悩むという形になりました。結果的に、中央線、千葉、埼玉、神奈川、東京都下と分かれたのですが、そこからの伸び方で領土の広さが決まったような感じでした。

 結果からいうと、広い領土を取れた2人がそのまま上位に、千葉の方が思ったほど伸びずに停滞したという形になりました。最終ラウンドで荷物が枯れて収入が落ちたことを考えると、おそらく Urbanization の数で変わったという感じだったかと思います。中盤の資金の回り方が違っていて、Turn Orderが生きない珍しい形になりました。

 蒸気の時代は、プレイヤー間のバランスを求められるというゲームではあるので、そのあたりはシビアですね。1人の路線の方向が大きく運命を分けるということもあります。

●東京乗車券 (乗車券の首都圏版)

 この時点で、時間にかなり余裕があったので 5ゲーム目もプレイすることになりました。プレイ時間の短い「東京乗車券」が選ばれました。

 自分の作品ですでに2008年のゲームマーケットで公開しています。再版希望の話もそれなりに多く聞いており、どうにかしたいところではあります。ボードを作るのにかなり苦労した作品ですね。

 コンセプトはできるだけ追加ルールを入れないというところにあります。山手線近辺に無色の路線を固めて競争を激しくし、その他の路線は色つきにしています。アメリカ版では縦横のラインで性格分けをしていますが、東京の場合首都圏から放射線状に延びる路線と、それを結ぶ路線という構成の違いはあります。

 苦労したのは、立体交差ができないことだったりします。埼玉方面の西武の路線がないのは駅の兼ね合いと立体交差の兼ね合いだったりします。地下鉄も基本的に削りました(1本だけ残っています)。できるだけ所要時間と合わせようとはしましたが、そうでない部分も一部あります。

 チケットは、バランス取りをした結果短距離チケットの5〜12点だけを残すことにしました。バリエーションが少ないのもありますが、長距離チケットはもともと長さが稼ぎにくいマップというのもあります。

 自分でもプレイするのが若干ひさしぶりでしたが、3枚のチケットがどれもかみ合わないと、シビアな感じになりますね。距離は短いので達成自体は難しくはないのですが、どうやってつなげていくなどが悩ましいです。

 序盤にチケットの関係で早めに攻めざるを得ない展開になり、なおかつ欲しい色が全然来ず機関車を自力で2枚引きました。路線点もそれなりにしか行かず、最長路線も取れなかったのですが、1回だけ追加で引いたチケット2枚がぎりぎりで間に合い 18点を加算。それなりに引いていた長距離路線で 3点差での決着でした。

 大量チケットでも、最長路線でも、徹底した長距離路線でもないどっちつかずの感じではあったのですが、それでも展開次第でどうにかなる、というのが分かりました。


 1日目は何と5ゲームもこなしての終了でした。翌日の18TKを最後までこなしたいというのと時間に余裕が欲しいというので、2日目も早い時間のスタートになっています。


- 2日目 -

●地下鉄漫遊記(仮) (レイルバロンの東京都心版)

 6ゲーム目は、これだけ次のゲームマーケットあわせでもない、ちょっと将来の作品です。この枠には「東京男爵」があるのですが、やはりプレイ時間の短縮と、自前で東京の地下鉄をメインにしたものが作りたいと思って、うっかり完成させてしまった作品です。これも自分の作品ですね。

 東京都21区が舞台で、登場する路線は地下鉄の13路線とJR山手線近辺を走る列車と、私鉄各社、そして、都電です。ルール自体は「レイルバロン」と「ぷちばろん関西」から一部のアイデアを派生させています。「ぷちばろん関西」はプレイして楽しかったですし、時間短縮の工夫が随所にあり、なるほどと思った作品でもあります。

 目的地をめざし進んでいき、路線を購入し、使用料や運賃の収入で目標金額を稼ぐという感じですが、「レイルバロン」では、一旦走り出すと止めにくかったものを、もっといろいろなところで逆転の要素を入れるようにしています。

 その結果、路線を購入する序盤と、路線売り切れ後の中盤、そして最終ゴールの終盤という3つの段階に分かれたような感じになっています。ゴール条件は今回のテストプレイでルールを追加しています。

 5人だと路線数の兼ね合いで若干手狭な感じになりますが、今回もそんな感じでした。買い物ができるプレイヤーとそうでないプレイヤーに別れることが多いですね。

 序盤の路線どりも大事ですが、中盤以降に逆転のチャンスがあり、賞金獲得をかけたチャレンジが今回は頻発しました。成功すれば大量の賞金が入りますが、失敗すると相手に資金が行ったうえで、賞金はもらえないというものです。序盤で一番路線がよかったプレイヤーがチャレンジの流れに乗れず、一気に逆転が発生しました。

 そして、目標金額を達成するとゴールできるようになるのですが、今回はゴールチャレンジのルールを入れています。うっかりゴールチャレンジ中のプレイヤーを捕まえると、資金が足りなくてもゴールする権利を獲得することができるという逆転ルールです。ただし、少なくとも1ターンの遅れが出るので、逆転は難しいといえば難しいのですが。

 今回は、最後の目的地の兼ね合いで、思わぬ延長戦があったので、勝負がもつれました。しかもゴール目的地が遠く、ゴールチャレンジをとらえたあと、先着でゴールという珍しいものが見られました。

 ゴールしたプレイヤーが問答無用で優勝のため、総資産が最下位でしたが、ルール上立派な優勝ということでうっかりとした幕切れになりました。今回は、4人がゴール条件を満たし、うち3人がほぼ1ターンの差という感じの接戦でした。

 プレイ時間は予想よりかかって2時間を超えました。前のバージョンより長引くとは思っていたのですが、思わぬ紛れがありましたからね。ゴールチャレンジのルールは採用の方向で行こうと思っています。

●18TK (18XX系の首都圏版)

 最終戦は、18TKです。こちらは私の作品ではありませんが、2008年のゲームマーケットに出店されたものです。

 マップは東京近郊で、大手私鉄と(ゲーム終盤で)国鉄が登場します。マップ上の面白いところは山手線のCタイルの争いですね。最終的に灰色の段階までアップしますが、その権利を得られるのは6箇所中3箇所しかありません。全体的にトークンスペースが少なく、場所の取り合いはかなり激しいですね。

 なじみのある地名、なじみのある会社というのが東横杯のテーマではありますが、原点とも言える作品ですし、テストプレイにもかなり関わったので、思い入れはありますね。

 今回は、追加要素も若干加えてのテストプレイなので詳細については省略しましょう。

 展開はというと、緑タイルの時代が今までのゲームにないくらい長引きました。どのくらい長引いたかというと、もう少し長引いていたら緑タイルのまま銀行の資金切れで終わったくらいでした。ゲームを動かすきっかけとなったのは、京急の株価が350円で行き着いてしまったということにあります。

 京急自体が3列車1両しかない状態で 110円の収益しかなかったのと、株の値上がりがなく積極的に60%の株を持っている理由がなかったので、4E列車を買って時代を動かしたあとで、株を売れるだけ売って社長を降りました。

 中盤で 1750円の現金が入ること自体も珍しいですが、タイミングの関係で後期マイナーが買えず、地下鉄を設立させる流れになりました。国鉄の5%株が売れないのも影響があったといえばあったところでしょうか。

 終盤は、3ラウンドで終わってしまいました。5番手スタートで小規模会社が全く買えなかったのと、東武を早めに話さなければならなかったこと、小規模会社がないため手が遅れたことなどが大きく影響していたかと思います。ゲームを動かそうにも、余計な列車を買う資金が全然なかったというのはあります。

 終盤の醍醐味ですが、今回はラウンド数がなく、後期マイナーも取れなかったため実現できなかったものの、5E列車で 300のチャンスはありました。今回は終盤が思いっきり短かったせいもあり、路線の整備が遅れ、6Eで270、5Eで290という逆転現象が発生しました。

 こちらは、中盤でおそらく2〜3ラウンドくらい停滞してしまったので、時間にして 7時間の長時間ゲームになりました。事前に1ゲーム多く進めておいて正解でした。


 終了後「クリカド」をプレイしました。アクション、バランス系のゲームですが、これもなかなか楽しかったですね。

 というわけで、創作ゲームで東京の鉄道の7本勝負というかなりの条件でしたが、たっぷりと楽しむことができたと思います。今年のゲームマーケットではこのうちのいくつかの作品が世に出ることでしょう。本当に、こんなに早く実現するとは思っていなかったですね。


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