● ニュルンベルクの開拓者 - Tips ●

 いろいろなゲームについて Tips や戦術論を書いてきたのですが、「カタン」のエキスパンションは初めてになります。いつも通り、プレイしていて気づいたことや、ボードやカードを解析して分かることなどを書いていきます。初めてプレイする方は、楽しみを奪う可能性がありますので読まない方がいいかもしれません
 この文章は4人プレイを前提に書いています。一応「カタン」をプレイしたことのある方を対象に書きます(そもそも、もとの「カタン」をやらずにこのゲームをやる方なんているのでしょうか?)。プレイ環境によって、いろいろと異なる点が出てくるかもしれません。ちなみに私のまわりでは、「ニュルンベルク」は通常のカタンと比べると交渉が少なくなっています。

1. カタンとの相違点

 「ニュルンベルクの開拓者」は「カタン」のエキスパンションなので、基本的な要素は変わらないのですが、建設できるものや、勝利点の取り方などに大きな違いがあります。相違点のうち大きく変化しているものを書きます。
● サイコロの代わりにカードを引く
 もとの「カタン」ではサイコロを2つ振って生産する場所を決めましたが、このゲームではカードで決めています。カードは全部で36枚あり、騎士のカード(7と同じ)が6枚、普通の数字のカードが生産力(カタンの戦術論を参照)の枚数分あります。
 このため、山札のはじめの方で出た数字は後で出にくくなるといったことが起こります。何が何枚出たかは、「カタン」に慣れたプレイヤーならフィーリングで覚えられるでしょう。
 カードの数字によってイベントがあります。このなかで特に重要なのは時間の進むカードです。時間の進むカード(3枚)が全部出た時点でカードを切り直すのですが、このイベントの書いてある数字が 11 と 12 になっているのです。
 このため、11 と 12 は従来の「カタン」よりも出やすくなっています。これにより生産力が若干変化します、変化した生産力を計算したのが下の表です。
数字 2 3 4 5 6 8 9 10 11 12
生産力 3 6 9 12 15 15 12 9 8 4
 生産力自体はそんなに変化しないのですが、11 と 12 はゲーム中に必ず出ることを覚えておいてください。ちなみに私の経験上、2回目の山札の中盤くらい(1375年あたり)でゲームが終了することが多いようです。切り直しまでに山札は期待値で 27.75 枚引かれます(生産力の値を 111 で割ったものが実際の確率になります)
● 都市がない
 このゲームでは都市を建設することができません(その代わりに同じコストで製作所が建設できるのですが)。そのため、材料の生産は開拓地のみになります。材料が爆発的に入手できる手段はないので注意してください。
● 道のはたらきが違う
 道(トールバー)は、もとのゲームとは違い、開拓地を建てるだけであれば1つの街道に1本で十分です。ただし、道の所有権は勝利点にも、収入にもつながるのでそこそこ重要です。
● 発展カードがない
 愛好家の方には残念なのですが、このゲームには発展カードは存在しません。このため、泥棒の制御は困難になります。また、勝利ポイントはすべてオープンになっていますし、突然材料が増えることもありません。いわゆる「不意打ち」は困難になりました。
● お金の概念がある(交易品がある)
 このゲームの中心となる1つ目の要素としてお金があります。お金を作ることなしにゲームに勝利するのはまず不可能です。これについては後述します。
● 名声ポイントがある
 これも重要な要素です。名声ポイントをためると議員になることができます。一番大きな議員には勝利点が4点与えられます。この4点はゲームを決定させるほど大きなものです。これについても後述します。
 ゲームの大きな変化はこんな感じです。これによってメカニズムも変わってきます。もとの「カタン」では、
材料を入手する→材料を用いて建設する(勝利点を得る)→材料が入手しやすくなる
といったものでしたが、このゲームでは上に書いたものの他に、
材料を用いて交易品を売る→お金を得る→名声を得る→議員になり大きな勝利点を得る
といった、新たな流れが増えました。序盤はやはり開拓地を建てるのですが、中盤以降のどのタイミングでお金を集め出すかが勝負の分かれ目になるでしょう。

2. 開拓地
 開拓地は、従来の「カタン」と変わりなく材料を生産します。建設するための条件が比較的緩くなっているので、開拓地を建てるだけならばそんなに難しくはないでしょう。
 このゲームで大事なことは、「生産手段は開拓地しかない」ことです。そのため、早めに開拓地を5件建てきってしまえば中盤以降有利に進められるのです。特に、このゲームでは泥棒が制御しにくいので、あらかじめ生産力を上げることが重要になってきます。
 このゲームはマップ全体を見ると分かるとおり、バランスよく材料が入手できる場所が少ないです。ゲームを通して開拓地は5つしか建設できません。また、重要な材料がとれないのではゲームになりません。材料を4種類以上安定して入手できるのが望ましいと思います。開拓地を建てる際に、どの材料が欲しいのかを考えるのは重要です。
 もう1つ注意点としては、マップがかなり広いため、中盤でもいい土地をとることができることです。開拓地は全部で 20個しか作られないので、生産力の高い順に計算すると I の(羊6, 羊2)の土地か、II の(羊4, 麦10)の土地がだいたい20軒目の候補になります。

3. 道とその所有権
 変化した要素として、道の扱いがあります。開拓地を建てるだけならば、建設したい交易路に1本あればいいのでそんなに苦労はしないでしょう(道の材料足りないときついですが)。
 問題なのは交易路の所有権です。所有権は、勝利点1点だけでなく、交易品を売る際の税金や、カードによる税金の支払いに影響します。普通に考えると、交易路上にもっとも開拓地を建てているプレイヤーが、一番その所有権を欲しがるはずです。
 所有権を奪う際には、2軒以上開拓地を建てているプレイヤーの動向に注意しましょう。税金がきつくなる分、必死で取り返してくるはずです。逆に、2軒以上開拓地を建てているプレイヤーが道の所有権を取られると大変なことになるのを覚えておきましょう。
 ちなみに、通行税のカード枚数ですが、交易品での収入がある I〜III は2枚ずつIV と V は4枚ずつあります。何枚出たかを覚えておくと、通行税の当てがある(取られるおそれがある)ことが分かります。IV と V には4枚もあるので、通行税を取られるプレイヤーは十分注意しましょう。
 道の数は15本と限られているので、実際に所有権をとれるのは普通は 1〜2 か所、多くても 3 か所が限度でしょう。また、道の建設できる場所にも限りがあるので、所有権が確定することもあります(主に III, IV, V で起こる)。相手に2本引かれると確定されるような形にはしない方がいいでしょう。

4. 製作所
 製作所は、従来の港のように交換のレートをよくしたり、交易品の収入を2倍にしたり、塔の建設を可能にしたりといった働きがあります。これにより、材料→お金→名声(勝利点)の変換の効率が飛躍的に上昇します。
 港の働きは従来通りなのですが、3:1港はお金3を好きな材料に変えられるため、かなり強力です。その他の港は、港としての効果はそこそこですが、その場所に組み合わさっている効果によってだいぶ価値が変わります。全体的に入手しにくい麦や羊の港は、あまり役に立たないでしょう。
 交易品の収入2倍は、中盤から終盤にかけて絶対に必要になります。もとの収入ではあまりにも効率が悪いからです。交易品のところでも述べますが、コンパス(Zirkel)と装飾品(Tand)は2倍にしておく価値は十分あります。
 塔の建設権があると、終盤の追い上げが多少やりやすくなります。そこまで必要というわけではないのですが、2か所目の港を取るくらいなら、建設権を取った方がいい場合が多いでしょう。コンパスと装飾品のところに隣接しているのも特徴です。
 これまでの話をまとめると、いちばん最初に製作所を建てるべき場所は 3:1港 です。3:1港はもちろん、コンパスが2倍になるのはかなり強力です(最初に製作所を建てたプレイヤーは、コンパスに必要な鉄が出やすいので)。さらに、塔の建設権まであります。どのような作戦で行くにせよ、迷わず建てるべきです。
 2番目では土港のところがそこそこ強力です。土がある程度生産されるならば建てるべきでしょう。それ以降は、鉄港や木港のところや、塔の建設権とコンパスか装飾品がとれるところがいいでしょう。

5. お金と交易品
 お金はゲームに勝利するためには必要不可欠です。お金を得る大きな手段として交易品を売ることがあります。
 ゲームを通していえることなのですが、所持金を0にしてはいけません。所持金が0の状態で税金を払うことになると、代わりに材料を払わなければならないからです。特に序盤から中盤にかけては、材料の損失が大きく出遅れる原因になります。交渉がすくなめになるこのゲームでは、一度出遅れてしまったら追いつくのがかなり困難です。所持金不足は致命傷になるのです(こういったゲームはけっこう多いような気がします)。
 このため序盤から中盤にかけては、お金が自分の材料を守る盾となります。いくら効率がいいからといって、所持金すべてを材料に交換するのは考え物です。序盤にお金がなくなりそうになったら、泣く泣く1倍で装飾品を作るか、交渉でお金を引っ張ってくるかして、増やさなければならないでしょう。
 ゲームが進んで交易品の収入が2倍になる頃から、お金のやりとりが多くなります。お金は4:1(3:1)交換ができるのでちょっとした建設にも役立ちますし、城壁や塔を建てるのにも必要になります。お金は税金以外では減らないので、手札のカードよりも安全な位置にあるといえるでしょう。ある程度のお金を持っておくと、安全に事を運ぶことができます(ただし4:1交換や、交易品を売るときの税金によって目減りします)。
 交易品は5種類ありますが、重要なのはコンパスと装飾品です。種類別の性質を以下に示します。
● 紙(Papier)
 必要な材料や換金の効率からいっても、実用的な物とは思えません。道の所有権や2倍かどうかにかかわらず、最悪の変換効率になっています。ほとんど作る意味はないでしょう。これを作るくらいなら交換に出します。
● 装飾品(Tand)
 紙とはうって変わって、あらゆる条件で最高の変換効率を誇る品物です。税金も1しか取られないので、序盤にお金がなくなったときに唯一つくることができる品物になります。強いて難をあげれば、羊が若干入手しにくいことでしょう。
● コンパス(Zirkel)
 これもなかなか効率がいいです。税金が2なので、道の所有権が欲しいところですが、I の道にはコンパスの材料がほとんど出ません。道の所有権にかかわらず2倍であれば問題のない品物でしょう。道の所有権があればコンパスと同じ効率で、鉄が羊よりも出やすいので強力です。
● 兜(Helm)
 兜はコンパスよりも若干効率が悪くなっています。コンパスを作って鉄を1枚残した方がいいでしょう。2倍で道の所有権がないときには、作ってしまってもいいでしょう(同じ税金を払ってよりお金を作れるので)。
● 鎧(Rüestung)
 4枚も材料が必要な交易品です、III の道を使う唯一の品物でもあります。税金が3とかなり高額なので、道の所有権がなければ作らないでしょう。2倍になっていれば、一気に12物お金を稼ぐことができます。終盤に見落としがちではありますが、ゲームを終了させることもできるでしょう。

6. 名声ポイント
 名声ポイントは、ニュルンベルク市内に塔や城壁を建てることでのみ得ることができます。名声ポイントを3点ためたプレイヤーは議会の議員になることができます。名声ポイントの高い順に勝利点が4点、3点、2点となります。これはかなり大きいです。
 ただし、名声ポイントを上げることは、勝利点を上げること以外には何の役にも立ちません(もちろん、相手にいい議員の地位を渡さないという働きはあります)。そのため、終盤で名声ポイントを3点をいち早く集めて、勝利点を4点得たプレイヤーが勝利するというパターンが多いようです。
 名声ポイントを上げるためにはお金が必要になります。特に、9点になったプレイヤーは名声ポイントを上げさえすれば勝利できるので、そのようなプレイヤーにお金を持たせるのは大変危険です。終盤はお金の動きに十分気をつけましょう。
 イベントカードの城壁建設は、かなり重要です。中盤でもお金が余ったら建設した方がいいでしょう。絶対にそれに見合った見返りがあるはずです。
 塔の扱いなのですが、同じお金を払って名声ポイントが2点も上がるので強力です。塔が建つか建たないかはボードを見れば分かりますから、名声ポイント3点目になるプレイヤーには塔を建てさせないように動くのが鉄則です。特に城壁建設のイベントの際には十分注意しましょう。

7. 交易路の特徴
 このゲームには、I から V までの5種類の交易路があります。それぞれの交易路ごとに出やすい材料などの特徴があります。ここでは、交易路ごとの特徴や気づいた点などを述べます。
● I(ベニス)
 この道の特徴は、土がいちばん出やすいことと、鉄が出やすいこと、いちばん長いことなどがあげられます。 開拓地の候補として有力なのは、(木5, 土6, 羊2 or 木12)や、(木3, 鉄6, 土5)などです。いい場所にはたいてい土の生産源が関わってきます。
 ただし、2 と 12 の土地を横切っているので長い割にはあまり混雑しません。道の所有権争いは比較的に起こりにくいです。6の土地が3か所ともあるので、6 がよく出ているときはこの交易路上に開拓地を建てているプレイヤーに材料が入っていることになります。
 この交易路の所有権を持っていると、装飾品の売却先につながっているので、少ないものの安定した収入が見込めます(お金を払う側も1枚ならあまりためらいません)。
● II(フランクフルト)
 私は、この道を田舎道と呼んでいます。手に入る材料が麦や羊しかなく(いや、12の木はあるのですが)、数字もあまり良くないからです。
 実はこの道でいちばん生産力の高いところは、(羊6, 羊9)の地点なのです。安定して麦と羊が獲られる(羊4, 麦10, 羊3)よりも生産力が高くなっています。
 この道は生産の面で行くと、3軒目以降でどうしても麦や羊が欲しいときに建てるのがいいようです。このゲームは、中盤以降で交渉があまり行われないため、バランスよく材料が入手できることは意外と大切になります。
 それよりも大きいのは、交易路の所有権でしょう。この交易路は、有力な交易品であるコンパスの売却先です。所有権さえあれば、いちばん効率の良い交易品になるからです。ただし、この交易路上ではコンパスの材料がほとんどないし、所有権を取ろうとするとさらに土まで必要になる(成功させるには材料が全部必要)のが難点です。
 収入の面では、他人にお金を2払うのはけっこう嫌なのでそんなに期待できないのですが、羊があまり出ない状況ではそこそこいいでしょう。でも、どちらかといえば自分で利用して初めて価値がある道といえます。
● III(プラハ)
 ここは、生産の面ではもっとも恵まれた道です。どの材料もいい数字が1か所ずつはあります。こんな場所は他にはありません。
 開拓地を建てる候補はたくさんありますが、(木8 or 鉄5, 土9, 土10)や(羊3, 羊9, 麦8)、(麦4, 木8, 木11)があげられます。最初の場所は、マップ上もっとも生産力の高い場所ですし、2番目はマップ上であまり出ない羊と麦がいい数字で手に入る場所です。3つ目も木と麦の安定した生産源になります。
 ここで言えることは、「3か所以上を1人で取らせてはいけない」ということです。生産力が高く、バランスがいい場所を独占することは、このゲームを進める上でかなり有利だからです。
 所有権ですが、ここに関してはそこまで使えるわけではありません。ただし、自分で所有していれば鎧を作る際にかなり効率がいいというのを忘れないでください。お金を1度に大量に入手できるのはどの時点でもかなり強力です。ただ開拓地の所有者が多いため、結果的に所有権の競争になることが多いようです。
● IV
 私は4号線と呼んでいます。III の交易路と平行するので、そこそこいい土地があります。木がいちばん手に入りやすいほかに、いい鉄の生産地が奥の方にあるのが特徴です。
 開拓地を建てる候補は(木8, 土10, 木11)くらいですが、奥の(土10, 鉄5 or 鉄9)や、手前の(麦8, 木11, 麦3)も後で建てるのにはなかなかいい場所です。目的に合わせてどうぞ。
 ここの所有権ですが、参入するのにいい土地が少ないため競争が起こりにくいといった特徴があります。最初に2本引いてしまえば、まず取られることはありません。ただし、誰も参入せずに収入もないといったことがよく起こります。後で鉄を取りに行くために参入する場合は、通行税のカードの枚数が多いことを念頭に入れてください。
● V
 ここは、5号線と呼んでいます。森の中に消えていく怪しげな道です。この道は、鉄がいちばん手に入りやすく、木も手に入りやすい(それ以外の物がない)といった特徴があります。
 開拓地を建てる候補は(木11, 鉄9, 鉄8)や(鉄8, 鉄4, 鉄3)といったところでしょうか。木が目当てで参入されることもあります。
 ここの所有権ですが、通行税のカードの枚数が多く、なおかつ2人以上の開拓地がある場合が多いので、どうしても競争が激しくなります。交易路の長さもそんなに長くないので、下手をすれば確定するまで引かれることもあります。

8. 基本戦術
 「ニュルンベルクの開拓者」にも、通常の「カタン」と同じような基本戦術はあると思います。「カタン」の場合は手に入る材料と建設する物で分けました(戦術論を参照)。「ニュルンベルク」の場合は、どの交易路を中心にするかによって変わってくると思います(前述の通り、交易路によってとれる材料が異なるので)。
● 目標の整理
 基本戦術を述べる前に、このゲームの勝利条件である勝利点13点を稼ぐ方法について考えましょう。勝利点を稼ぐ最大の手段は、最高の議員になることです。13点もの勝利点を議員にならずにとることは不可能なので、議員になることを前提に考えます。
 私の経験上、議員で4点を取って終了という形が多いので、議員以外で9点を取る方法を考えるのが妥当だと思います(もちろん3点の議員でも勝てないことはないと思います)。必要なのは、開拓地と製作所、交易路の所有権の合計で9点になることです。
 開拓地は、生産力を上げる意味でもできるだけ5軒を使い切るのがいいでしょう(4軒でも何とかなるのですが)。そうなると、街道と製作所で合計4点を取らなければなりません。組み合わせはいろいろですが、3か所の交易路の所有権を取るのはかなり困難なので、交易路で2点、製作所で2点になるのが普通でしょう。
 さて、話をまとめます。このゲームの目標を、開拓地5つと製作所2つ、交易路の所有権2つを取って、最高の議員を取る(いち早く名声ポイントを3点集める)ことに設定します。そうすれば、どの時点で何をすればいいかというのがわかりやすくなるでしょう。
 目標を達成するためには、普通の「カタン」とは違い、すべての材料を駆使しなければいけません。いらない材料は基本的にはないのです。このため、5種類の材料をバランスよく供給できる形にすることが大事になります。実際には麦か羊のどちらかがなくとも何とかなるのですが、この場合には港を駆使するなどの工夫が必要です。これをふまえて、基本戦術を紹介していきます。
● プラハ戦術
 もとの「カタン」でいう開拓地戦術に近い形です。プラハ(III)の道には生産力の高い土地がたくさんあるので、重点的に開拓地を建て、生産力を一気に高めようとする作戦です。
 この作戦のメリットは、プラハのいい土地を2か所確保すればかなりバランスのとれた、高い生産力が見込めることです。難点としては、競争が激しいことでしょうか。3人で争う形になったら、生産力のメリットが分散されることになるので、そんなにありがたくはありません。また、中盤以降の交易品の税金を他のプレイヤーに払わなければならないことも上げられます。
 プラハのいい土地が1か所(おそらく中央の木と麦がとれるところが)あいている場合、そこを取ったプレイヤーがプラハ戦術をするプレイヤーになります。初期配置で3人がプラハの道に作った場合は、端の土と鉄のところを取ったプレイヤーが一応、プラハ作戦をするプレイヤーになります(この場合は、生産力が高いわけではないのですが)。
 プラハの主導権を握るプレイヤーはタイミングを見計らって、道の所有権を取る必要があります。税金で大量にお金を払うことになると途中で息切れするからです。プラハ戦術のプレイヤーは生産力が高くなる代償に、交易品から効率よくお金を得ることが困難になるからです。
 安定した生産力が得られたら、足りない材料を取りつつ製作所を作ればいいはずです。製作所のタイミングは他のプレイヤーと比べて遅くなることが多いので、都合のいい港か、装飾品が2倍になるところがとれれば十分でしょう。塔の建設権もあれば役に立ちます。
 もう1つの交易路の権利は、4号線か5号線になるかと思います。ライバルの少ない4号線でいければ楽でしょうが、こればかりは状況によって変わります。いずれにせよ、交易路で大量出費だけは避けたいところです。
 名声ポイントの取り方なのですが、お金を作るのが困難ですから終盤に一気に行きたいところです。塔の建設はこういった場合に役に立ちます。お金を独り占めできる唯一の手段は鎧を作ることです。作るのはかなり難しいのですが、できてしまえば勝利にかなり近づけるでしょう。
 全体的な感じとしては、序盤は開拓地でスタートダッシュをかけ、そのまま早いうちに開拓地を建てきります。中盤以降はお金がなくならないように気をつけつつ製作所を作っていき、最後は一気に議員ポイントを取るといった感じです。
● ベニス戦術
 もとの「カタン」ではどの作戦にも当てはまらないのですが、ベニスの道の特徴を生かした作戦も考えられます。所有権の競争が激しくならないことと、装飾品の売却でお金をちょっとずつ稼げることを利用した作戦です。
 この作戦は序盤がちょっと大変です。初期配置のときに、場合によっては木と土と鉄しかないということが起こるからです。相手に多少リードを許してもいいから、交渉で早めに麦と羊をとるようにしましょう(2番手のプレイヤーは材料が固まりやすいです。生産力を落としてもいいからフランクフルトの道に初期配置をするのがいいのでしょうか?)。
 3つ目の開拓地は、足りない材料を補えるできるだけいい土地に作ります。後でちゃんと収入があるのですから、序盤に税金を取られることを恐れてはいけません。バランスが良くなるように他のところに参入しましょう。
 3つ目の開拓地ができてしまえば、後はそんなに大変ではなくなります。道の所有権を適当なタイミングで取った後は、材料に合わせて建設すればいいだけです。この戦術を行うと、早いタイミングで製作所を建てることもできるでしょう。
 製作所は、あいていれば土港がおすすめです。この作戦の中盤以降に必要なものがすべてそろうからです。もう1つの交易路は、材料の関係上開拓地を建てるフランクフルトか、競争の激しくない4号線を奪うかどちらかになりそうです。
 装飾品が2倍になったら、早いうちに装飾品でお金を稼いでしまいましょう。イベントで城壁建設をねらい打ちします。また、お金を4:1で好きな材料にするのも手です。これで2軒目の製作所を建てることが簡単になるでしょう。土の2:1港と交易路の所有権がうまくとれれば、中盤から終盤にかけてかなりスムーズに進むことができるはずです。
 名声ポイントの取り方は、イベントでこつこつ稼ぎつつ、最後にちょっと城壁を作る形になるのではないのでしょうか? 土が豊富にとれるので、名声ポイント自体はかなり取りやすいはずです。
 全体的な感じとしては、序盤は交渉で3軒目の開拓地をバランスのいい場所に建てて、そこから早めに製作所を作るようにのばしていきます。中盤以降は装飾品でお金を稼ぎつつ、こつこつと城壁を作りゴールを目指します。速度的にはどの段階でも真ん中くらいになるでしょう。
● フランクフルト(製作所)戦術
 材料的には、もとの都市戦術と似ているのですが、やっていることはかなり異なります。初期配置で5号線の鉄が2つ入手できるところを取ったプレイヤーがやることになるでしょう。
 初期配置の戻り巡で麦を入手できるようにします。こうしないとこの作戦にはなりません(後述する「5号線戦術」の崩れた形になるでしょう)。この戦術の第一目標は、いち早く3:1港に製作所を作ることです。材料が製作所を作るようにとったので成功するでしょうが、危険そうな場合は必要なものを交渉で入手することも考えます。
 万が一、他のプレイヤーに作られてしまった場合はこの戦術は破綻し、「5号線戦術」や「プラハ戦術」の崩れたものになってしまいます。また、3:1港を取ったプレイヤーはバランスよく材料が入っているはずなので、かなり危険な存在になります。
 3:1港が取れた後の行動は2つに分かれます。1つは(3:1港とセットの)コンパスのみを作ることを考えて、フランクフルトの所有権を取ることです(これがフランクフルト戦術です)。もう1つは、ある程度相手にお金を渡してもいいから、バランスよく土を入手して、2つ目の製作所を作り、コンパスや装飾品を2倍で売って平凡に進める方法です(これは、単なる製作所戦術になります)。
 どちらの方法をとるにしても、土が足りないという問題が出てくるでしょう。これがこの戦術の弱点です。フランクフルト戦術の場合は、3:1港でむりやり土を作ってしまい、後から土を取ることを考える(取らないでそのまま進む)でしょう。これは、終盤に息切れを起こす危険性があります。
 一方、単なる製作所戦術の場合は条件が緩やかなので、交渉で1つくらい土を持ってこられればあっさりと土の生産地をとることができるでしょう(生産力自体はそんなに高くないのですが)。
 中盤以降は、3:1港をフルに活用して、2倍で売却したお金を必要な材料に替えることを考えます。これによって、お金を作ることさえできれば、かなりのスピードになるでしょう。名声ポイントは、お金を持って城壁建設のイベントを待つのがいいでしょう。
 ゲームを通して、道を建設しにくいので所持金不足には十分注意してください。フランクフルト作戦の場合は、フランクフルトの所有権をどこまで持つかが重要になります。とにかく入手しにくい材料をたくさん使うので、実行するのは大変だと思います。製作所戦術の場合は、プラハ戦術と同じような感じですが、5号線の出費が大きくなるので注意してください。逆に中盤で5号線の所有権を取れば、勝利に大きく近づくでしょう。
● 5号線(4号線)戦術
 最後に紹介するのは、通行税のイベントが多い5号線(4号線)で収入を得る戦術です。プラハ戦術とベニス戦術の中間になるでしょう。
 具体的な方法などは、2つの作戦と同じなので、そちらを参照してください(序盤はベニス戦術、中盤以降はプラハ戦術に近い形になります)。両方の戦術の悪いほうを取ったように思えますが、そうでもありません。ベニスやフランクフルトの所有権がとれれば、両方の戦術の長所を合わせたすばらしいものになります(生産力があって、収入も多いからです)。
 私の経験では、5号線のほうが道の争いが激しくなるので5号線戦術としました。もちろん、より材料のいい4号線でもできます。収入は他のプレイヤーが参入してくるかどうかにかかってきます。参入されなければ、今度は道の所有権を守るのが楽になります。

9. 交渉
 このゲームでは、中盤以降は交易品を売ったお金で必要な材料が入手できるので交渉はあまり起こらなくなります。しかし序盤の交渉は重要です。
 初期配置を見て、麦や羊が入手できるプレイヤーは誰かを判断します。麦や羊を持っているプレイヤーは交渉の主導権を握ることになります。特に、中盤以降今ひとつ使い道のない麦を持つプレイヤーは、序盤のうちにうまく場をコントロールしてやりましょう。逆に麦や羊がないプレイヤーは、出来るだけ早く交渉で持ってくる必要があります。
 あとは、競り合っているプレイヤーとだけは交渉しないことくらいでしょう。先に欲しい土地を取られたのでは意味がありません。交渉をうまく使って出遅れないようにだけはしましょう

10. おまけ
 基本的にどうでもいいことなのですが、知っておくとちょっとだけ役に立つようなことを紹介します。
 マップをよく見ていただくと分かるのですが、数字が意外と偏っています。特に注意したいのは6の土地が全部ベニスの道に隣接していることです。このため、6(または5)がよく出るときは、ベニス戦術のプレイヤーが有利になっています。逆に8〜10がよく出ている場合はプラハ戦術のプレイヤーが有利になっています。
 もう1つですが、実はカードの数字とイベントには関連性があります。たとえば、4〜6が通行税、9〜10は城壁建設、11と12は時間が進むといったようになっています。8はイベントなしが多いようです。このため、何が出ているかとどんなイベントが起こっているかは関係があるのです。
 「通行税がよく出ているから、プラハに開拓地を建てている人が有利だ」とか、「あまりイベントが起こっていないから、もう8は出ない」という感じになります。どの数字が出ているかを覚えるときの参考にしてはいかがでしょうか。ただし、「プラハの通行税は何回出たか?」とかの質問はしないようにしましょう。

 これで、だいたい書きたいことは書いたような気がします。もとの「カタン」ほど多くはプレイしていないので、意見が変わるかもしれません。「カタン」のバリアントのはずなのにこれだけ長くなってしまうのは、別物のようなバリアントだからでしょう。最後までおつきあいいただきありがとうございました。

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