今回も制作時期恒例のゲームのらくがきです。といっても、ルールブックがすでに完成してしまったので、デザイナーズノートのみお送りしましょう。今回も長めに書いています。
プレイ人数は 2〜4人、プレイ時間は 20分程度です。
こちらを見ている方限定で、デザイナーズノートを。
今回の制作の大本は明らかにこちらになるでしょう。2012年4月1日のブログからの抜粋です。4月1日はエイプリルフールではあるのですが。
やはりここのところの流行は、デッキビルドでしょうか。こちらでも応援しているTRAINSがデッキビルド鉄道ゲームですが、創作ゲームでもデッキビルドの流れは着実に来ていますね。
こちらでやるとすれば、おそらくカード枚数が膨らみすぎない形でになるかと思っていたりとか。「アセンション」とかそのあたりの線がいいですね。カード枚数が多いゲームは、それだけ作るのも大変なので、120枚とかそのあたりで押さえたいところです。
テーマとしては、鉄道ゲームだとそのままなので、別ジャンルでになるでしょうか。まちづくりのシリーズは素材が結構そろっていてやりやすいのですが、うまくデッキビルドに当てはまるかというとちょっと微妙なところはあったりします。じっくり考えれば出てくるのかもしれませんが。
2012年春の OKAZU brand の新作「TRAINS」のテストプレイに参加していて、デッキビルドを作りたくなってきました。そんな中で、カード 500枚越えは、さすがにコストが大変なことになってしまうのでできるとしたらこんな感じというものを書いた覚えがあります。これが本当に作られるとは当時は思っていなかったのですが。
まず、創作ゲームで自分で作る上でカードの種類数はそのままコストに跳ね返ってくるため、現実的な線としてカード 120枚というのが出てきました。これまでに多人数プレイ対応のデッキビルドでこの枚数のものはなかったということもあります。
これまでの創作ゲームでは、ランダムに決められた数種類のカードを購入するというのと、手札5枚という要素が共通していたかと思います。このあたりは「ドミニオン」の基本的な要素でもあるのですが。
この方式で作ると、カードは1種類あたり10枚、初期手札は 10枚×人数分で、120枚の範囲では 4人プレイで 8種類しかカードが入りません。これではさすがにゲームにするのは難しいので、別のアプローチをとることにします。
このページでも何回か話題にあげた「アセンション」という作品があります。こちらもデッキ構築型ではあるのですが、中央の場からランダムにカードが補充されそれを購入するという要素があります。このアプローチは、「シティー ビジョン」でも採用したのですが、本来のデッキビルドでも取り入れることにしました。
こちらのアプローチだと、場に出てくるカードがランダムになるため運の要素は強くなりますが、同種のカードをそれほど多く作る必要がないという利点もあります。カード 120枚の目標達成に採用しています。
さらに、場のカードが偏ったときの救済策を入れる必要がありました。「アセンション」だと、重装歩兵と秘術士がいるのですが、コスト帯を救済できるものにして 2種類準備することにしました。このカードは枚数を減らすために、使うたびに元の場所に戻る要素を入れています。また、ゲーム終了時に減点にすることで持ち続けることのリスクを出しています。
あとは、手札の枚数は 5枚でなくてもデッキビルドはできるのではないかということで、減らせるだけ枚数を減らしました。2枚だとデッキビルドっぽくならないので、3枚まで枚数を減らしています。これで、初期のカードが 6枚×4人と 40% 削減することができます。
これだけだと、カードが 3枚の「アセンション」になってしまうので、独自の味付けをすることにします。まずは、元の要素をばっさり切り捨てて、資金でカードを購入する要素だけを残しました。
そうなると、ゲームの終了条件を作る必要があり、勝利点カードとしてのランドマークを作ることにしました。最終的に高いコストのカードを購入するのを目的にしないと、カード枚数が膨らむので、コストが 6〜7 のカードに割り振り、こちらの種類を増やすことでゲームのバリエーションを広げることにしました。
ランドマークはスタートから見えているので、ランダムな場のカードの相対的な価値に影響を及ぼします。また、単純な勝利点のみのカードにしました。
資金1のカード4枚と資金2のカード2枚からスタートし、2ターン目の資金のばらつき(4-4 と 3-5)を出し、最終的には 6〜7 の資金を出すことを目指すことになります。資金0のカードが入ると極端に重くなるのですべてのカードに資金をつけることにしました。
このゲームはまちづくりシリーズとして作るつもりだったので、住宅地、商業地、工業地の3種類はやはり登場します。これまでの作品は 3種類ともに対照形としていたのですが、カードの効果をつけないと単調になるので種類に合わせた性格付けをすることにしました。このあたりはルールブックのヒントにも書かれています。
住宅地は、住民が集まることからカードを引く効果を入れています。商業地は住民が買い物をして経済を発展させることから、手札を捨てて、新たな手札や資金を獲得する効果を入れています。工業地は産業の効率化を図ることから、デッキの圧縮する効果を入れています。
特殊施設は、今回あまり特徴はありませんが、それぞれの建物に合わせてやや強力な効果を入れています。エコ建物は、得点が 2点と高い設定でその分効果かを弱めています。
また、住宅地、商業地、工業地をつかっているので、セットを集めるとボーナスが入ったり、それぞれの種類を集めるといいことがあったりします。デッキ構築型では明確な競争になりにくいのですが、それぞれの種類ごとの枚数トップにボーナス得点が入ることで、ちょっとした競争を入れています。
11月の秋のゲームマーケットが終わった直後にお披露目したのですが、最初は全体的な処理が重い印象がありました。なので、処理の簡易化をいくつか入れています。
捨て札を参照するカードは完全になくしました。また、カードを選ぶ場合はほとんどは手札からカードを選ぶことにしています。中央の公共事業はカードを購入しない限りは動かないようになっています。
購入したカードすべてに効果が書いてあると、テキストの処理が重いため、低コストのカードの効果をきれいに省略しました。これでも、手札が 3枚である以上、半分以上のカードには資金以外の効果が書いてあるのですが。
カードの得点も基本は1点、エコ建物は 2点、ランドマークは種類によってとシンプルにしました。プレイ中に捨て札を参照できなくして、このあたりのチェックで時間をかけないようにしています。
このあたりの簡易化と、カード枚数の少なさで、強力なカードが早く回ってくることと、ランドマーク購入の条件に届くまでに時間がかからないことから、ゲーム全体の展開が早くなっています。
デッキ圧縮は、初期の頃は完全にゲームから除外としていたのですが、カードに得点がついていることもあり、リスクがあまりにも大きいため、手札に入らないゾーンとして保護区を作りました。これ自体は他のゲームにもある要素ですが、スピード感がこのゲームにもマッチするような気がします。
「改築」タイプのカードも考えていたのですが、これも処理が重くなるのですぐに切り捨てました。
手札から保護区に送り込むカードは、展開の速さの調整に苦労しました。最初は手札からカードを消費することで圧縮させていましたが、これだと遅すぎるのと、使用したカードを保護区に送り込むと一度に 2枚送り込めると相当強いので、中間の速度で、カードを1枚引いて、1枚保護区に送り込むようにしています。
また、購入したカードをすぐに保護区に送り込むことができるようにしました。ランドマークは資金1で効果がないカードですが、この効果で保護区に送り込めばデッキを薄めることもありません。
先に述べた救済策のカードがこの2枚です。使い捨てで資金2とかいろいろと考えたのですが、ランドマーク以外のカードを獲得できる効果に落ち着きました。3コストの工事現場は5コストまでの制限あり、4コストの建設予定地はコストの制限もなく、公共事業を1枚補充してから選べるおまけつきです。
このカード自身に資金1しかないので、次の手が遅れることと、最後まで持っていると1点減点されること、カードを引いてきたときに公共事業にほしいものがあるとは限らないというリスクがあります。ただ、序盤で入手するのに時間がかかる 5〜6コストのカードを手軽に狙えるというメリットもあります。
今回は、カードゲームということで、「シティー プラン」にもあったコンボが組めるようにしました。
「シティー プラン」でおなじみの「コストを下げる」効果をクローズアップしました。今回は、支払いではなくコスト自体が下がるのでいろいろなことができるようになっています。
ランドマークも含めたすべてのカードのコストを 5まで下げる交通局は今回も健在です。高コストのカードを複数枚買えるようになります。さらに、このゲームにはカードの購入枚数に制限がないので、低コストのカードが安くなると、少ない資金で何枚も買えるようになります。
他のカードの効果をコピーするテレビ塔や、単体では地味なもののすべてのカードを特殊施設と複合施設に変化し、種類の制限をはずすモノレールなど、コンボ向きの建物もあります。
ゲームが短いのでコンボを狙っているうちにゲームが終わるかもしれませんが、いったん決まれば一気にひっくり返すだけの効果が出る場合もあります。
というわけで、デザイナーズノートをお送りしました。他のデッキビルドよりも運の要素は強いと思いますが、プレイ時間も短く手軽に楽しめるところを狙ったつもりです。カード120枚は持ち運びにも便利です。