2週連続のゲームのらくがきです。今回は「東京鉄道網」をお送りします。こちらは市販ゲームのリメイクということで、ルールの方は書かずに、変更点とデザイナーズノートみたいなものを中心にお送りしましょう。
プレイ人数は3〜5人、プレイ時間は3時間(通常版)/1時間(快速版)程度だと思います。
制作のきっかけは、アメリカ横断鉄道ゲーム会の公式種目で「エンパイアビルダー」を初めてプレイしたときからでした。初プレイでは、ルールは単純でおもしろかったものの、プレイ時間がなんと7時間かかり、種目数が減ってしまいました。
原作は1980年の作品ということで、ゲームの要素を崩さずに、どのくらいプレイ時間が短縮できるかというのと、プレイ時間がかかる原因となったメキシコの地名についても、わかりやすいところでやってみたらどうなるかを見てみたかったというのはありますね。
海外を中心に、いろいろなサイトを見て回って、時間短縮の工夫などをされているところがありました。原作は、移動→建設の順になっており、かつ、カード補充は移動中に荷物を運んですぐのタイミングなので、どうしても待ち時間ができてしまいます。ほかのプレイヤーの手番にはすることはないので、考える時間をそちらに移そうとしました。
参考にしたサイトでも、カードの補充はターン終了時というのはありましたが、さらにルールを緩くして、建設→移動の順にしました。これにより、ターンの途中で急に計画が変わったというのもなくなり、基本的に空き時間に行動を考えることができるようになりました。
あとは、特別な処理が多く、ゲームを長引かせる方向にしかいかない「イベントカード」を完全撤廃しました。ルールの分量も減りますし、カードも減らすことができるので、制作が楽になるというのもあります。
移動距離は、若干ですが割り増しにしてあります。原作は9マス/12マスを、12マス/15マスにしてあります。あとは、全体的に収入額を上げて、目標金額も原作の 250 から、試行錯誤の結果 150 に下げました。ゲームとして成り立つ範囲はありますが、50下がると 30分くらい短縮できますね。
さらに、最初のテストプレイで、ものすごく時間がかかっていた初期路線の配置は、簡易化して、決まった路線をプレイと逆順で購入することにしました。
ここまでの工夫で、6時間かかっていたものが、最初のテストプレイでも 4.5時間、最終的には 3時間とかなり短くなりました。
この作品はTGFに出展する予定もあり、さすがに 3時間でも長すぎるだろうということで、思い切って要素を削った快速版を用意しました。こちらは路線は実際のものを参考にすでに引いてある状態で、乗客を運ぶという要素を取り出しています。こちらは、思ったよりも早い印象がありますが、プレイ時間としては1時間ほどです。
マップ自体は実際の地図を元に作ればよかったのですが、地域の絞り込みとどの都市を入れるかは、いろいろな方に意見を聞きました。ゲーム化する上で、成田は入れておきたいと思ったので、必然的に房総半島が結構入ることになりました。大都市の選定の都合で茨城を入れたり、西は高尾のあたりまででうまく収まった感はあります。
都市の選定はかなり難航しましたが、大都市の選定はあっさりと決まりました。新宿と東京は1マス差の大都市で、直接結ぶのにはコストがかかるというのを表現しました。山らしい山がなく、都心は地下鉄のためコストがかかるという扱いにしています。
中小都市は、都心はどの都市を入れるか悩みました。千葉県はかなり広くとったのですが、行ったことのない場所も多く、どの都市を入れるべきかはいろいろと相談して決めました。
原作は、その都市の名産品を運ぶという設定ですが、東京マップで名産品というのはあまりそぐわないということで、いろいろな目的の乗客を運んだらいいのではと思い、そのような作り方をしました。
原作では、出現地点が明らかで、適当な場所に運ぶのですが、こちらは、目的地がある程度固まっていて、どこに出現させるかという逆の考え方が必要になってくるのです。
客の種類は、悩みはしたものの、18個くらいまでスムーズに出てきてあとはそれらしいものを入れるようにしました。乗客カードは、90枚、270通りで、近すぎてもよくないし、固まりすぎてもよくないというので、割り振りにはだいぶ苦労しました。このゲームの場合、データを変えるとカードを作り直しになるので、調整が大変でした。
収入額は、最初は単純に距離で決めていたのですが、マップ端で勝利条件に関係ない部分は高くした方がいいとか、川や都市を抜けるときのコストの反映、乗客なしの都市へのボーナスなど、いろいろな要素を入れています。特に前者のマップは時は高めにしており、短距離で思わぬ収入が出るようになっています。
淡々とプレイするだけで、手詰まりになると厳しいこと、基本ボーナスはあるものの、ちょこちょことお客を運ぶより、長距離をこなした方がよくなりやすいこと、基本的に資本主義のゲームなので、いち早く発展させると有利なこと、原作で紛れる要素となっていたイベントカードがなくなったことがあるため、いろいろと要素を追加しています。
1つは、乗客を運んだときにもらえるチケットです。手札がどうしようもないときの救済策として1枚使えばカードを捨てることができるようにしていますが、それだけでは機能が少ないので集めると現金になるようにしました。短距離はいろいろな意味で手札が回りやすくなっています。
原作では、短距離の仕事は路線を引くと赤字になってしまい中盤以降こなす意味がなくなってしまいがちでしたが、チケットがあるので、こなす意味が出てきています。
もう1つは、購入価格の変化です。原作では、いち早く速い列車を購入すると、それだけ有利なのですが、こちらでは、購入後、徐々に値下がりし、最終的には半額まで下がるようになっています。これにより、購入のタイミングも大事になってきますし、出遅れてもある程度リカバリーがきくようになりました。
あとは、郊外を中心に長距離客を多めに作っていることもあります。あたりのカード自体は多くありませんが、1回で 40〜70億円と、終了条件に一気に近づけるようにしています。
最後に、乗客の種類についての裏話的なことを。
・外国人観光客
このゲームを作るにあたって、最初に思いついた長距離輸送の要素です。成田から都心方面に向かうという非常にわかりやすく、かつ、成田からしか出現しないというのがそれらしいですね。外国人観光客の多く訪れそうな場所を選んだので、とりあえず乗せておいて都心方面をうろうろするという戦略もあったりします。
・地域住民系
これも、マップ端からの長距離輸送を意識して作りました。茨城県民、房総住民、栃木県民、奥多摩住民、山梨県民、静岡県民と6方向のマップ端から出現します。行き先が読みにくいというのはありますが、おおよそ長距離になるように、マップの逆方向に向かうようにはしています。
地域によって中距離よりものもから、長距離までありますが、房総住民は一番距離が長く、収入もかなりの額になります。思い切って路線を引くまでに費用も時間もかかるのは難点ではありますが。
・参拝客
神社仏閣への参拝客は重要な役割を果たしていました。浅草寺、川崎大師、成田山など、有名な神社仏閣を中心に行き先を選んでいます。出現地点が多摩地区と千葉のため、距離も稼ぎやすかったりします。
・ハイカー
ウォーキングが楽しめる観光地や公園を中心に選んでいます。高尾山、井の頭公園、上野公園、新宿御苑などがあります。都心と千葉から出現し、中距離客が多いです。
・スポーツファン
野球、サッカー、格闘技を意識しています。野球場、サッカースタジアム、体育館がある場所を選んでいます。神宮球場、千葉マリンスタジアム、味の素スタジアムなどがあります。最寄り駅から若干遠いところもあるかもしれません。出現地点は、都心と多摩地区で西よりになっています。
地図の都合上、東京ドームが入れられなかったのが心残りですね。
・動物好き
個数が出るかどうか不安だったのですが、地域が散らばりやすいということで、動物園+水族館を意識しています。上野動物園、東武動物公園、多摩動物公園、江ノ島水族館などが含まれています。バランス調整の都合で、出現地点がマップ端によってしまい、長距離客が多くなっています。
最寄り駅が遠くなってしまっているところもありますし、あまりにも遠くて入れられなかったところもあったりします。
・海好き
こちらはわかりやすく、海に面している都市を選んでいます。マップを見れば明らかなので、都市はあえて列挙しません。中距離客を意識して、出現地点は海から距離のある埼玉の都市を選びました。使い勝手がよく、ゲームの要になることもあるでしょう。
・旅行客
旅行客は、旅行しに行く客ということで、ターミナル駅、空港を目的地にしています。東京、新宿、大宮などの新幹線や、成田、羽田などの空港などがあります。長距離私鉄の始発駅も含んでいます。中距離客が多いです。
・ギャンブラー
競馬場、競輪場、オートレースを意識しています。東京競馬場、中山競馬場などがあります。個数の関係で、場外馬券売り場も含まれます。目的地は武蔵野線のあたりが多いですが、出現地点も、目的地も散っているので、短中距離客が多くなっています。
・工場労働者
大きな工場のある都市を中心に選びました。川崎、蘇我、木更津など海沿いが多めです。航空機の整備場も含んでいます。出現地点が都心に偏っており、都心から郊外への長距離客が中心です。
・オフィスワーカー
オフィス街をイメージしていますが、実際にはいろいろなところに割り振られており、その他という感じもします。出現地点が散らばっていますが、カードの枚数も多めなので、押さえておくと数をこなしやすくなります。
・観光客
観光客ということで、一般的な観光地を中心に割り振っています。お台場、浅草、横浜、舞浜などがあります。都心の方は買い物客と重なるところが多く短距離から中距離が中心ですが、長距離がこっそり混ざっていたりします。
・買い物客
買い物ができそうなところということで、大きなデパートがある場所、中心都市などが選ばれています。その性質上、出現地点も目的地もばらけており、短距離客がほとんどです。
・帰宅客
住宅地に帰る客なので、住宅地と思われる都市を選んでいます。出現地点は都心に偏っておりますが、短距離から中距離の素直な路線が多いです。枚数が多いので、交通の要所の帰宅客は数をこなすのに有効です。
・普通客
いわゆる、その他のお客さんです。ネタ切れになったというのもありますが、バランス調整のよりどころとして使っていたりもします。出現地点も目的地もばらけていて、読みにくい感はありますが、枚数は多めです。
というわけで、デザイナーズノートと裏話をお送りしました。乗客の話は攻略記事的なものを書かない限りは、ここだけの話になりそうですね。