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Hammer Worksの頒布作品として、トリックテイキングゲームを作っていないこともあり、どこかのタイミングでトリックテイキングゲームを作ってみようということを考えていました。頒布していない作品としては、「Xミッション」(X-Missions)というものを2001年に作っていましたが、ゲームマーケットに参加する前の時代だったので。
トリックテイキングのお約束として、マストフォローがありますが、ルール的には堅牢なものではなく、手札を使い切るゲームでは検証は可能ですが、出し間違えのリボークはゲームを破綻させることもあるため、リボークのないものを作りたかったというのはあります。
アイデアは色々と出しましたが、スートなしであればリボークは発生しえないので、その線で考えることに。どのようにカードを獲得するか、プラス点のみにするとトリックがとれない手札だと極端に弱くなるので、マイナスを入れようなどと考えたりしていました。
通常のトリックテイキングゲームだと、最も強いカードを出したプレイヤーがトリックに出されたすべてのカードを取りますが、1スートだと、強いカードがそのまま強くなるので、工夫を入れることに。プレイの指針がないと分かりにくいので、プレイするカードと得点を一元化して、場のカードを獲得することに。
獲得のルールはいくつかバリエーションを考えましたが、シンプルに、「小さい数字から処理し、より小さいカードをすべて獲得する」ことにしました。あれこれ例外を考えたりもしていましたが、結局はこのシンプルなものとほぼ等価になったので。
最初はゼロサムで作っていましたが、マイナスカードを取り過ぎると逆転が難しいということが分かったので、プラスサムのゲームに組み替えました。さらに、大きなプラス、大きなマイナスがゲームを大きくコントロールするので、+5点のカードと-5点のカードを外し、ゲーム的に動きの小さい-1点のカードを外し、今の得点構成になりました。
ルールブックには明記していませんが、どのカードにどの得点を割り振るかは、数字を並べて視覚的に整理したあとで計算してという感じになりました。ゲームの都合上、小さな数字と大きな数字は固まりやすいので、1点のカードになるように調整、あとは適度に分散し、適度に数字が固まるような振り方を試行錯誤した結果が、素数の倍数を使った割り振りです。
+2点は7の倍数、+3点は11の倍数、-2点は9の倍数、-3点は13の倍数で組んでいます。この組み方だと 1〜6と46〜48は1点になり、プラスとマイナスがぶつかることもなく、21の+2点、22の+3点や、26の-3点、27の-2点、28の+2点など、20番台、30番台に並ぶことが分かり、今の形になっています。
プラスマイナスの得点から、甘いものと辛いもの、甘いものと苦いもの、甘いものと酸っぱいもののどちらかのイメージがあったので、お茶請けにしました。種類自体はすぐに思いつきました。そして、最後のトリックのカードも得点化したかったので、「お茶」の要素を入れました。
Winner Takes All でもいいのですが、5人以上だとゲームに対する影響が大きいので、下から2枚と、それ以外すべての2つに分けて、「煎茶」と「玉露」にしました。直感的に分かりやすく、上から2番目と、下から2番目に配置するようにしています。プラスサムなので、基本的にはプラス点になりやすいのですが、マイナス点のカードを貯めておくとここで失点させることもできます。
カード構成が48枚に決めていたので、当然 5人の時には端数が出ます。あとは、3人だと公開情報が多すぎるので少しばらつきを入れたかったこともあり、山札の要素を入れています。処理の都合上、最初に1枚多くカードを公開し、端数分はトリック終了後、新たな場札が出るときに山札から1枚追加されることにしました。
5人の場合は、序盤の選択肢が増え、3人の場合は思わぬ追加カードが出てきます。2人用のサポートはしませんでしたが、不確定要素もある 3人もお勧めです。この手のゲームで 3人でプレイできるのは珍しいので。
そんなこんなでテストプレイをしていて、合計35点を、4人で 8点、9点、9点、9点と分ける結果になりました。簡単に大きな数字を獲得したプレイヤーにしようとしましたが、カードを取ることにリスクがあるので、獲得した枚数がを第1条件、それでも同じ場合は、獲得した中で「最も数字の大きなカード」を持っているプレイヤーとしました。数字の大きなカードを獲得したということは、不利なリードプレイヤーをやっているということになるので。
プラスマイナスの得点から、お茶請けをテーマにすることまでは決まっていましたが、タイトルは文字数と言葉の感じから選びました。派手さはない作品で、短時間で手軽に楽しめ、ルール自体は簡単なことから、みんなでゲームとゲームの合間に、お茶請けのように楽しんでもらいたいとの意図でつけています。日本語タイトルなので、今回はタイトルの英語訳はつけませんでした。原語依存性はないゲームではあるのですが。
今回は、パッケージイラストは作らず「ほんのきもちです」のような、風呂敷包みのシンプルなパッケージにしようとしていたのですが、カタログ原稿作成の時に、急遽パッケージイラストを描き下ろしていただいたので、縦横費だけ調整し、採用することにしました。
ここでは、調整がまとまらなかったものの、バリエーションルールとして入れられそうなものを、まとめました。
通常ルールだと、場札の+1の数は、元のカードを確実に獲得できるカードになりますが、このルールを加えることで、獲得権を失うことがあります。また、最大の数の判定にも影響を与えます。このルールを入れた場合、先にカードを出すことがより不利になります。
「場札の獲得」のルールに、次の2つのルールを加えます。
(例) 4人でプレイしており、場札に「3」「21」「22」「45」が出ている状態でトリックが始まり、「7」「8」「23」「24」が出されました。 このとき、「7」「8」は連番のため、「7」は無効となり、「8」を出したプレイヤーが「3」を獲得します。 また、「23」「24」は連番のため、「23」は無効となり、「24」を出したプレイヤーが「21」と「22」を獲得します。 「最大の数」は「24」ですが、連番が含まれているため、「23」を「最大の数」として扱います。これにより「23」を出したプレイヤーが「45」を獲得し、次の最初のプレイヤーになります。
マニュアルで入れられなかったTIPSも、こちらに書くことにします。
「最も大きな数」は、残りのカードを取らされ、さらに不利な先行動になることに、注意が必要です。とはいえ、大きなカードが多い場合はマイナスを回避できないこともあり、適度なタイミングで処分する必要が出てきます。
「小さい数字のカード」はマイナスを回避するのに使いましょう。小さい数字のカードを持っていない場合など、回避する自信がない場合は、リスク回避のためマイナスカードを重ねて出さない等の工夫が必要になってきます。
基本ルールでは、7の倍数、11の倍数の +1のカードは高得点カードを確実に獲得できるカードになります。8,12,15,22,23,29,34,36,43 が該当します。逆に、9の倍数、13の倍数+1のカードは、マイナスをとらないタイミングで処分するといいでしょう。10,14,19,27,28,37,40,46 が該当します。
このゲームのカウンティングのしどころは、マイナスカードの出方になるかと思います。13の倍数は3枚、9の倍数は5枚しかないので、どのくらい出たか、どの数字が出たかで安全圏が変わってきます。マイナスカードの出方が悪い場合は、小さな数字のカードは温存したほうがいいです。
ゲームマーケット後の公開になりましたが、デザイナーズノートをまとめてみました。感想などありましたら、お知らせください。