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● フォワード トゥ イースタン ワールド ●

- デザイナーズノート -

●制作のきっかけ

 今回は、来年春のゲームマーケットも見据えて、負担の少ない作品を作ろうということで、テストプレイが比較的やりやすいダイスゲームにしました。ダイスゲーム自体も久しぶりですね。

●アイデア出しの段階

 今回は、いろいろなタイプのダイスゲームのアイデアを出してみましたが、要素として残ったのが、メダルゲームのダブルアップと、成否がダイス判定で決まるという部分がベースになりました。

●テーマの決定

 要素から、単なるギャンブルゲームだと単調になるのと、経済ゲームはしばらく作っていなかったので、そのあたりを盛り込むことに。分かりやすく、安く買って高く売るというところがベースになっていますが、交易品を購入し、売却するというところからスタートし、単純に数字をつけるだけではなく、マップを作ろうということで、大航海時代がテーマになりました。

 交易品の種類と構成枚数は初期段階で固めており、マップは 3種類あったものを 1種類に統合し、場所ごとに高く売れる交易品を作ったりしました。

●マップ作り

 マップは大航海時代をテーマにしたのですが、最終的に残ったのがアフリカ経由の東アジアルートになりました。このルートの交易はシルクロードもあり、交易路の移り変わりの時期でもあるので、陸路と海路をどちらも残して、途中で合流するという感じに。都市の選択は色々と調べながら、テストプレイメンバーにも意見を聞きながらという感じでした。今回のテーマだと、メンバーの方が背景に詳しいところもあります。

 マップ上のポイントは色々と作りました。序盤は、アフリカルートを通るか、地中海を通るかの選択。地中海ルートはシルクロードを通るか、ホルムズに出て航路に合流するかの選択。アフリカルートは、インドに向かうところで、ラサを経由するルートに合流するか、東南アジアに抜けるかという感じです。最終地点は極東に設定しました。

 都市の選択は、メンバーの意見を参考に少し変更を加えましたが、8割方は下調べのままになりました。シルクロードルートの都市選択に相当苦労したのと、ゲーム上のステップ数の兼ね合いで、どこまで東に進めるかの調整が難しかったです。

●調整段階

 調整段階では、期待値によりすぎるのと、交易品の種類での差が出にくいこと、自由に売却できすぎること、交易品を1回でも喪失すると逆転が難しいというあたりを修正しました。交易品の購入価格の調整は、時代間のメリハリをつけるためです。あとは、最終到達地点のルールも少し変更し、交易品の売却タイミングはより重要になりました。

 売却価格は、1回大きく見直しましたが、8ステップとそのボーナスが相当高く設定しているのと、保持しにくいステンドグラスの売却価格が高く設定されています。期待値的には、補正も含めて、8ステップまで到達するのはそれなりに難しいのですが、交易パワー上昇の効果と、移動失敗後の再チャレンジもあるので、思ったよりも到達する感じです。このあたりは、多少は射幸心をあおるバランスにしたかったので、想定通りではあります。

 調整で大きめの要素は、交易品を喪失したときの「護衛」です。1ミスまでは救済できるように、相当強力な効果をつけています。

●調整の副産物

 今回は、調整の結果、思わぬ動きが見られたりして、展開が面白くなりました。

 束ねられる毛織物2枚組をわざと交換に出すというのも副産物として出てきたテクニックです。2枚組はワインよりちょっと低いくらいの効率の悪さなので、状況によっては手放すことも出てきます。このテクニックから、枚数調整ができるルールを追加しています。ちなみに、3枚組になるとステンドグラス並みの効率が出ます。

 リーダーが次の場所を選択、売却しなかったプレイヤーがリーダーになることと、交易パワーの差とボトルワインの有無で状況が変わってくることから、思わぬ戦略をとる可能性も出てきます。時代2以降で、移動成功に必要な出目が10くらいのときに、意図的に難しい方を選んで、失敗を誘うという戦略も出てきました。

 ステップ8の都市に到達後は、同ステップの都市に移動できるようになりますが、難度の低い琉球から抜けるのが、相当難しく設定しています。時代3 のダイス5個の期待値からすると、ステップ8 の琉球に到達することもそれなりに難しいのですが、ごくごくまれに時代2で到達してしまう場合もあります。

●タイトル

 今回のタイトルですが、東に向かうというのが比較的早い段階で決まったので、eastward を使おうとしていました。少し長くてもいいので、韻を少し意識して色々と調べたら、forward が出ましたが、語幹が同じなので、発音の似た言葉を探して East World が見つかり、もろもろの事情で一般的な形にして eastern world で落ち着きました。

 前回は和菓子がテーマ、前々回は言語依存があるテーマ(桁取りは日本語と英語で異なります)なので、日本語タイトルにしていますが、特別な事情がない限り、英単語 2〜3語でタイトルを作っているので、韻を意識した長めのタイトルは初めての試みでした。


- テクニックなど -

 マニュアルで入れられなかったTIPSも、こちらに書くことにします。

 市場フェイズでは、交易品のバランスは非常に重要です。枚数の少ないステンドグラス、鉄製品を買い占めると、他のプレイヤーに行き渡らなくなり、結果としてボーナス交易品になりにくくなります。

 毛織物は、可能な限り 3枚セットを狙いましょう。2枚セットですら、ワインよりも少し効率が悪い程度で、3枚で初めて本領を発揮します。ボーナス交易品になりにくいのもポイントです。

 特に終盤は、勝負となる鉄製品かステンドグラスは少なくとも1枚は購入しておいたほうがいいでしょう。ワインは安全策になりますが、高いステップでの売却額の伸びが悪いので、持ちすぎに要注意です。

 交易品の「食い合わせ」には注意が必要です。ステンドグラスや大量の毛織物を守るためのワインは相性がいいです。ステンドグラスには代用は利きませんが、鉄製品や麦を守るために、複数枚の毛織物を使うのも手としてあります。麦は中途半端な印象はありますが、移動に成功したときに、リーダーをとっていると1枚余計に売れることや、他に麦を持っているプレイヤーがいないと、確実に売れ、結果的に1ステップ得することもあります。ステップ3からボーナス交易品になるのも特徴です。

 交易フェイズは、海路、陸路でステップ4を境にボーナス交易品が入れ替わり、最初のリーダーに選択権があります。リーダーをとることは大事ですが、基本的に 1ステップに1枚しか売れないので、売却タイミングには要注意です。在庫をだぶつかせて、予測ダイスで低い目が出ると目も当てられません。

 確定ルートがいくつかあることにも注意が必要です。ステップ3でサライに進むと、ステップ7まで陸路が確定します。逆にステップ4でホルムズに行くと、ステップ7まで海路コースに移行します。レアなルートとしてステップ5のゴアからステップ6のラサに抜けるルートがあります。数少ない毛織物のボーナスが最初に登場する都市で、時代2で 3枚21で売却できる可能性があります。

 ステップ8とステップ9の売却額は相当高く設定しています。まれに、時代2でステップ8まで届いたり、ステンドグラスがステップ7のボーナス交易品で売れたりすることもありますが、時代3はステップ8以上が狙えるのでここで逆転することも可能です。資金は非公開ですが、どのくらいうまくいったかで、どこまで攻めるかを判断することになります。


 今回は、ゲームマーケット前に、デザイナーズノートを投稿しました。